25.不幸(ふこう)
・前回のあらすじです。
『カリオストロの魔法によって、広場が荒れ地になる』
「ブリーシンガメンか。こんなバカみたいなちからをぽんぽん使えるようになるなんて……。危険だな」
「ええ。ですが、あの首飾りのほんとうの恐ろしさは、こんなものではありません」
「マジか」
和泉は屋根のうえで身がまえた。
持ち主である【魔術師】に、膨大な魔力をあたえるアクセサリー、【ブリーシンガメン】。しかし和泉たちが目にしたのは、まだその恐怖の一端でしかないと、ウォーリックは言う。
(これ以上にめんどうな能力を、あのネックレスが発揮できるっていうなら……。ウォーリックだってどうなるか、わかったもんじゃないぞ)
いま、カリオストロにねらわれているのはウォーリックだ。いくら『ひばりの技法』が使える彼女でも、【増幅器】を持った魔術師があいてでは分がわるい。
だが、ねらわれている当人たるウォーリック自身はすずしいものだ。
すっ。
ウォーリックの指先が動く。
地上で泣いているカリオストロを、民家の切り妻屋根から差し示す。
「クラリスを、よく見ていてください」
「えっ?」
和泉はカリオストロの身を案じた。
(まさか、怪物にでもなっちまうのか!?)
そして変化は、あまりにも唐突におとずれた。
ぼこん。
「きゃああああ――!」
足もと。
「――ああああ!! ああああああ………………」
カリオストロの足もとに、あっというまにひびがはいり、そのちいさな身体を地下へとぽかりとあいた『穴』にのみこんだのだ!
「つまり……、」
和泉は、あっさりと広場から地面のしたへと退場した少女を、意味もなく建物のうえからのぞきこんだ。ウォーリックに眼で問う。
ウォーリックはどこふく風……というより、薄情な横顔のまま。
「そう、ブリーシンガメンは、『術者の不幸』を糧に、魔力を強化させる【マジック・アイテム】。だからわたくしも、オークションにでているのは知っていましたが、『だれが買うのかしら?』と思って、手をだすことはしなかった」
「教えてやれよ。もっとまえに」
「いやですわ」
きっぱり。ウォーリックは和泉をみつめかえした。
広場のクレーターにできた、ひとつの大きなおとしあな。そのはるかしたのほうから、「たすけて―。たすけてー」と聞こえてくる。
「もう安全かな?」
「まったく、毎日毎日、めいわくよねえ」
「へいわがほしい」
あっちこっちのストリートからぼやきながら、のろのろと人がもどってくる。
(まあ、つめたい下水道で、すこし頭をひやすのもよさそうだ)
和泉はしばらく、カリオストロをたすけに行くべきかまよった。が、そのままにしておくことにした。
それがだめだった。
・以上で、『鉄と真鍮でできた指環《3》 ~災厄の首飾り~』の、今年(2022年)の投稿は終わりです。
読んでいただき、ありがとうございました。




