22.ブリーシンガメン
・前回のあらすじです。
『【カリオストロ家】と【ウォーリック家】の因縁が明かされる』
「ごらんになって~」
カリオストロは、ちいさな身体には不似合いな、ブリリアン・カットされた金剛石が中央にはまった『首飾り』をかかげていた。
「あれは……」
青い輝きをはなつ石に、和泉はぞっとする。【魔術】のちからを宿した、【魔鉱石】という鉱物が、この世界には存在する。――が、あの宝石は、その類のものではない。ただの宝石だ。だが、紺碧の色をはなつダイヤモンドは、「妖力」とでもいうべき、なにか不吉なオーラを、透明度の高い全身からただよわせていた。
「ブルー・ダイヤ」
ウォーリックが、その正体を、うめき声にのせる。
「……じゃあ、あれは」
長身の身体をこわばらせて、黒髪の魔女は、首飾りの名をもあえいだ。
「ブリーシンガメン。……災厄の、首飾り!」
和泉の背中を、しゃれっ気の失せた冷や汗がつたう。
【ブリーシンガメン】。『北欧神話』における、愛と美の女神・フレイアの持つアクセサリー。欺瞞の男神が、小人につくらせた宝のひとつ。
もちろん、カリオストロの持っているのは、その名をかりただけの、人間がつくった【マジック・アイテム】だ。【学院】もふくめて、【裏】の多くの学術機関が、研究・開発にちからをそそいでいる、魔力の増幅器。【
表】の世界でも有名な、不幸をもたらすといわれる霊石『ブルーダイヤ』を触媒とすることで、実現がかなったのだろう。
和泉はわれにかえった。カリオストロが持つ、高価にすぎる首飾り。それがあまりにも、目のまえの少女の持ちものとして、つりあわなくて。
「まてよ、【ブリーシンガメン】って、かなりの数の宝石使ってるんだろ? そんな……十五、六才の歳で手にいれられるようなもんじゃ――」
この疑問には、カリオストロ本人が答えてくれた。とくいになって。
「わたくしの四人のおにいちゃまがっ、わたくしの誕生日にっ、わたくしのためにとっ、オークションで競りおとしてくれたのですわ!」
「あまやかしすぎだろ」
「クラリスは五人きょうだいのすえっ子長女。しかも、待望の女の子だったみたいで……お兄さまがたからもお父上からも、それはそれは蝶よ花よとかわいがられていまして」
ウォーリックはもうすっかり疲弊した調子でうめいた。こころなしか、顔がげっそりやつれている。反対に、カリオストロはげんきになっていく。どんどん、げんきになっていく。
――首飾りをゆらして。




