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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第1幕 夏休みの終わりに
2/59

2.届かない



   〇前回のあらすじです

   『ひったくりのおとこ何者なにものかに爆撃ばくげきされる』






 こえがする。

 (あかね)の声。


   ――和泉(いずみ)ー。ひまだからあそびにきてあげたよー。


 暗い空間くうかん

 部屋へやにあるはずのものがなにもない。無限(むげん)につづく暗闇(くらやみ)

 そのなかに、(あか)法衣(ほうえ)をまとった彼女かのじょのすがたが浮かんでいた。

 十一(じゅういち)()歳くらいの、おさない顔立(かおだ)ち。すこしだけ成長(せいちょう)しているが、とても今年で十七(じゅうなな)歳をむかえたとはおもえない小柄(こがら)な身体。

(茜。来てくれたのか)

 和泉(いずみ)はだらしなくわらった。十八(じゅうはち)歳の青年(せいねん)である。一対(いっつい)の黒い義眼をはめ、()防護(ぼうご)ように黄色いサングラスをかけている。(かみ)はみじかく白く、その色は生来のものではなかった。

 彼女の(ぞう)の浮かぶ暗闇くらやみに、彼もまたいた。薄着(うすぎ)すがたで。


 黒い半袖(はんそで)のシャツにアイボリーのハーフパンツ。そしてはだし。それはるときの格好で――サングラスは(のぞ)くが――彼女かのじょのまえ……(いな)人前ひとまえに出られるような服装ふくそうではなかった。

 少女しょうじょの肩までのびた金髪(きんぱつ)がゆれる。最後にえたグリーンの両目(りょうめ)は、かなし気に――。あるいはむッとしたようにかげっていた。

 和泉(いずみ)は手をのばす。

 届かない。

 彼女は(とお)ざかっていく。

 (あし)にちからを入れる。

 動かない。

 ぬまにでもはまったかのように。

 足元あしもとの自分の影(暗闇くらやみに『(かげ)』があるというのも不思議なはなしだが)からぬけだそうと、和泉は必死にあがいた。

 あがいて。あがいて。あがいて――。


「……。(ゆめ)か」

 ――和泉いずみを覚ました。



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