16.ぬれぎぬ
・前回のあらすじです。
『和泉が【自衛団】のおとこに、事件の解決をまかされる』
「みつけたぞ!」
和泉は少女に駆け寄った。長い黒髪の魔女がふりかえる。『二十代』と言ってもとおる佳人の顔には、数日前まで大きなやけどがあったが、ぶじに完治したらしい。白磁のような肌にもどった彼女の頬に、和泉はこっそり安堵した。
彼女がけがを負ったのに、彼には『責任』があったのだ。
――それはそれとして。
「ウォーリック!」
彼女のほそい手首を和泉はつかんだ。強い陽光をさえぎるために、かざしていたらしい。
ウォーリックは、紫の光沢を帯びた瞳で和泉を見た。
和泉の鼻が、ひくっと動く。なにやらあまいかおりがする。その正体は、ウォーリックが片手にかかえている紙袋だった。たこやきサイズのカステラが、なかにぎっしりつまっている。
「いきなりなんなのですか。和泉教授」
「それはじぶんの胸に手をあてて、よく考えなさい」
教員らしくえらそばってみせてから、和泉は「だはーっ!」と、肩からちからをぬいた。
「てか、なにやってんだよウォーリック。ストレスでも、たまってたのか? あっちこっち爆破してまわってるって聞いたぞ。やめてくれよ。町の人たちをおびやかすなんて、きみの本意じゃないだろ。史貴学長にまで、めいわくかけてさ」
「……? なにをかんちがいしているのか、わかりませんが」
「いや、いいって。いいわけは、また今度に【学院】で聞く。学長には、オレがいくらか弁解してみるけどさ。とにかく、今日は家に帰って、ゆっくりやすんで、あしたにそなえな。あ、わすれてたかもだから言っとくけど、あしたからだからな。学校」
「……。……」
ウォーリックはじぶんの手をひるがえし、和泉の手首をからめあげた。教授の腕を、彼自身の背中に押しつけるようにして、ねじりあげる。
「いでででででえ! おまえ、なにすんだよっ、おまえええ!」
「おまえに『おまえ』と言われるすじあいは……いえ、もういいです」
もう何度目になるかわからない注意をしようとして、ウォーリックはやめた。あきらめた。
和泉の腕をねじったまま、彼女はツイと、民家の屋根にあごをむける。




