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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第2幕 災厄(さいやく)の首飾り
15/59

15. エール



   ・前回のあらすじです。

   『魔女まじょの【ウォーリック】が、爆発犯ばくげきはんをみつける』






   〇


 和泉(いずみ)恐々(きょうきょう)としていた。魔術(まじゅつ)で飛んできてみれば、【トリス】には黒煙があがっている。

 半壊(はんかい)した時計台、民家(みんか)商社(しょうしゃ)のはいったビルディング。雑貨をあつかう商店(しょうてん)――。

「どうなってんだ!」

 たまらずさけんで、和泉はメイン・ストリートにおりる。

「あれ?」近くの民家(爆破(ばくは)ずみ)で、がれきの撤去作業(てっきょさぎょう)にあたっていた、(あお)いユニフォームの(おとこ)が、【黒い法衣(ほうえ)】をみて声をかける。「あんた、ひょっとして【学院(がくいん)】の先生?」


 問われて、和泉(いずみ)はふりかえった。丸い(かお)に、まっかな顎鬚(あごひげ)をはやした中年男性(ちゅうねんだんせい)がいる。ずんぐりした(おお)きな手が、がれきをつんだ一輪車(いちりんしゃ)のハンドルを、片方(かたほう)だけささえていた。

 徽章(きしょう)のついた青い長衣(ちょうい)は、ここ、【パンゲア大陸】において、各領地(りょうち)で結成されている【自衛団(じえいだん)】の、共通(きょうつう)した制服だった。


「若いんだねー」男は制帽(せいぼう)をクイとあげてあいさつする。「ボクあ『喜多味(きたみ) 雄一(ゆういち)』っていうんだ。ここの自衛団の、副団長(ふくだんちょう)

 男――喜多味につられて、和泉はぺこぺこ名乗(なの)った。

「どうも。オレは『和泉(いずみ)』っていいます。【学院】で、教授(きょうじゅ)やってます」

 喜多味は両手(りょうて)で、手押(てお)(ぐるま)をささえなおして笑う。

「ははは。きてくれてたすかるよ。さっそくだけど、あれ、なんとかしてもらえるかな?」

 喜多味はいかついアゴで、空を(しめ)した。広場(ひろば)のほうにのぼる黒煙。一瞬(いっしゅん)、火事をなんとかするのかと和泉はあせったが、この自衛団(じえいだん)の男が対処(たいしょ)してほしいのは、「爆撃犯(ばくげきはん)のことだろう」と(おも)いなおす。


「そのつもりで来ました。じゃあ、いそぎますんで」

「がんばってな~」

 喜多味(きたみ)は若い魔術師にエールを(おく)った。気ぬけした声援に、和泉(いずみ)はすこし、さみしさを感じる。あまり期待されるのもプレッシャーだが、最初(さいしょ)からあきらめられるというのもなさけない。


(まあ、いいや)

 気楽にかまえなおして、和泉は民家(みんか)のすきまにはいる。

(どーせウォーリックの聞かん坊があばれてるだけだろーし。彼女(かのじょ)さえみつけりゃあ、解決したも同然だ)

 勝手口(かってぐち)のならぶ小路(こみち)(はし)って、広場までの距離(きょり)をカットする。【トリス】には何度(なんど)かきているので、勝手知ったるものだった。

(おっ、いた)

 建物(たてもの)の影で、小暗(おぐら)くなった(みち)のさき――。

 トリスのなかではちいさい部類(ぶるい)にはいる住宅街(じゅうたくがい)の広場に、紙袋(かみぶくろ)を持ったひとりの魔女(まじょ)が、立っていた。





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