15. エール
・前回のあらすじです。
『魔女の【ウォーリック】が、爆発犯をみつける』
〇
和泉は恐々としていた。魔術で飛んできてみれば、【トリス】には黒煙があがっている。
半壊した時計台、民家、商社のはいったビルディング。雑貨をあつかう商店――。
「どうなってんだ!」
たまらずさけんで、和泉はメイン・ストリートにおりる。
「あれ?」近くの民家(爆破ずみ)で、がれきの撤去作業にあたっていた、青いユニフォームの男が、【黒い法衣】をみて声をかける。「あんた、ひょっとして【学院】の先生?」
問われて、和泉はふりかえった。丸い顔に、まっかな顎鬚をはやした中年男性がいる。ずんぐりした大きな手が、がれきをつんだ一輪車のハンドルを、片方だけささえていた。
徽章のついた青い長衣は、ここ、【パンゲア大陸】において、各領地で結成されている【自衛団】の、共通した制服だった。
「若いんだねー」男は制帽をクイとあげてあいさつする。「ボクあ『喜多味 雄一』っていうんだ。ここの自衛団の、副団長」
男――喜多味につられて、和泉はぺこぺこ名乗った。
「どうも。オレは『和泉』っていいます。【学院】で、教授やってます」
喜多味は両手で、手押し車をささえなおして笑う。
「ははは。きてくれてたすかるよ。さっそくだけど、あれ、なんとかしてもらえるかな?」
喜多味はいかついアゴで、空を示した。広場のほうにのぼる黒煙。一瞬、火事をなんとかするのかと和泉はあせったが、この自衛団の男が対処してほしいのは、「爆撃犯のことだろう」と思いなおす。
「そのつもりで来ました。じゃあ、いそぎますんで」
「がんばってな~」
喜多味は若い魔術師にエールを送った。気ぬけした声援に、和泉はすこし、さみしさを感じる。あまり期待されるのもプレッシャーだが、最初からあきらめられるというのもなさけない。
(まあ、いいや)
気楽にかまえなおして、和泉は民家のすきまにはいる。
(どーせウォーリックの聞かん坊があばれてるだけだろーし。彼女さえみつけりゃあ、解決したも同然だ)
勝手口のならぶ小路を走って、広場までの距離をカットする。【トリス】には何度かきているので、勝手知ったるものだった。
(おっ、いた)
建物の影で、小暗くなった道のさき――。
トリスのなかではちいさい部類にはいる住宅街の広場に、紙袋を持ったひとりの魔女が、立っていた。




