13.赤法衣(あかほうえ)の少女(しょうじょ)
・前回のあらすじです。
『和泉が【使い魔】の少年――クロを、師匠に貸す』
〇
爆音がする。
町の一画である。
商店街の舗装路に、ちいさな振動がつたわった。
朝の十時をすぎたこの時刻、店はのきなみ開いている。露店で買った、ホット・ドッグをほおばりつつ、【赤い法衣】の少女が、もうもうと空に立ちのぼるけむりを、ながめている。
「ばくはつ?」
「だれかが、魔法の練習でもしているんでしょうかね」
少女のとなりにいた女性が、『南の通り』を見あげつつ言う。
「んなかわいいもんじゃねえよ」
野球帽をかぶった露店の主人が、赤法衣の少女と、その使い魔の女性に手をやった。
「やっこさん、あれで『正義のヒーロー』気どりなんだから、かなわねえやな」
「どーゆうこと?」少女がきいた。
「『悪人退治』だとよ」
「ううん?」
「なんでも、『わたくしは、その資格を得たんですの』。とか」
「それで悪人退治かあ」
赤い法衣の少女はそういって、ホット・ドッグを完食した。女性がハンカチをわたすと、くちもとについていたケチャップをぬぐう。
「そういや、この時期って人をおそう事件ふえるよね」
――だだだだだっ!
足音が、商店街のむこうから接近してくる。
「あけてくださーい!」
「自衛団でーす!」
「まーたあの【学院】のおじょーさまだよ」
「学院長せんせもたよりねえよなあ。これだから【表】の出身は――っと。これは【賢者】さま……。本日もおひがらがよく」
通りすぎざまに制帽をさげてあいさつしていく【自衛団】の面々。
少女――魔術師最強の称号、【賢者】の名を冠する彼女もまた、彼らに会釈でかえした。
【自衛団】――大陸の各地域で構成される、強靭な【魔術師】たちで結成された、治安維持集団だ。
「たよんないって……」青のユニフォームをはためかせて、団員たちは、遠くの街区にたなびく黒煙をめざして走っていった。「お姉ちゃんが? どうしたの?」
「私の耳には入っていませんね」
問われて、女性は肩をすくめた。露店の主人が、ばつがわるそうに帽子のつばを動かす。
「ありゃ、しらない?」
ぴくりと少女の眉がはねた。それはこのちいさな魔女が、不機嫌なときにするひそめかただと、となりの女性は知っていた。
店主がつづける。
「それが、自衛団の連中、【学院】の院長せんせに助力をもとめたそうなんだが……」
野球帽の男のはなしを、少女はだまって聞いていた。
(『第1幕:なつやすみの終わりに』了)
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