表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第1幕 夏休みの終わりに
12/59

12. サークル



   ・前回のあらすじです。

   『和泉いずみが、師匠ししょうのブロッケンによびとめられる』






 【学舎(がくしゃ)】のグラウンドにおりると、ブロッケン女史(じょし)があるいてきた。赤毛(あかげ)の、若い【魔術(まじゅつ)研究者(けんきゅうしゃ)】だ。和泉(いずみ)がまだ中等部で劣等生だったころに、『師弟関係』をむすんだ間柄(あいだがら)である。指導はスパルタだったけれど。


「ひっこし、ですか?」

 ()――ブロッケンのかかえている木箱(きばこ)を和泉はのぞいた。ブロッケンは首をふる。両耳(りょうみみ)のピアスが、鋭い陽光(ようこう)にちらついた。

「ううん。(ふる)い器材をもらえることになったのよ。で、いま自分の部屋にはこんでるとこなんだけど、かったるくって」

「で、オレに持ってけと?」

「うん」にっこり。ブロッケンはうなずいた。

 黄色いレンズのむこうで、和泉(いずみ)はこっそり半眼(はんがん)になる。

「オレにもつごうがあるんで……。今日は、むりです」

「えー。つまんなーい」

「てつだってくれたらお(ちゃ)くらい出すわよ」


 ぶう()れるブロッケンのうしろから、ひょい、と黒い(かみ)をゆらして、ノワール。もとは黒猫(くろねこ)の、妖艶(ようえん)女性(じょせい)のさそいに、和泉は心がゆらぎかける。が、


「すみません。やっぱ、だめです」

「あらら、ごしゅーしょーさま。じゃあいいわよ。()び止めてわるかったわね」

 しっ、しっ。と、ブロッケンは手をふった。まともにかったるそうな『師』の背中(せなか)に、和泉(いずみ)はすこし、気がひける。

 ぴっと人差し指を立てて、彼は【居住区(きょじゅうく)】のほうを(しめ)した。じぶんの部屋のある方角(ほうがく)

「オレはむりですけど、クロをかすのならOKです。呼びましょうか?」

「クロくんか。いーじゃない」

「あのあまえんぼうの『(からす)』くんよね」


 ブロッケンは了承(りょうしょう)。ノワールはにがい(かお)だった。が、主人(しゅじん)の決定にはくちをはさまない。

 両手(りょうて)親指(おやゆび)と人差し指をあわせ、和泉は『(えん)』をつくる。

 【従者(じゅうしゃ)】を呼ぶ魔術(まじゅつ)だ。契約したあいてにのみ有効で、召致(しょうち)できる範囲(はんい)は、術者の技量(ぎりょう)により異なる。和泉(いずみ)場合(ばあい)は、半径(いち)キロメートル以内(いない)。【魔術師(まじゅつし)】としては、まずまずの距離(きょり)といえる。


 ぽっかりと、指のあいだから()える芝生(しばふ)到着点(とうちゃくてん)として、和泉は、【使(つか)()】を召喚(しょうかん)した。

「――(かせ)をひく、緋色の(つむぎ)

 ぼうっ。

 指でつくったわっかが、草地に転写(てんしゃ)される。簡易(かんい)の【魔法陣(サークル)】が、芝生の地面(じめん)()きついた。

 ブルーの光のかこいに、すうっと、人影(ひとかげ)があらわれる。黒髪黒目(くろかみくろめ)少年(しょうねん)、クロだ。


 (おお)きなサークルのまんなかで、クロは(はら)をうえにむけてぐうぐうねむっていた。どうやら昼寝(ひるね)していたらしい。まだ午前だが……。


()こすのかわいそうじゃない?」

「いいんです。オレもちょうど、かわいそうな寝起(ねお)きをさせられたところですから」

 (おも)い出して、和泉(いずみ)(ひたい)青筋(あおすじ)をうかべた。

 ノワールがしゃがみこんで、少年のほっぺをつっつく。

「おーい、クロ。おきなさいよー」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ