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鉄と真鍮でできた指環 《3》 ~災厄の首飾り~  作者: とり
 第1幕 夏休みの終わりに
11/59

11.パシリ



   ・前回のあらすじです。

   『もんだいの生徒をつかまえに、和泉いずみが、【学院がくいん】から飛びたつ』






   〇



 女性が【学舎(がくしゃ)】の校庭をあるいていく。二十歳(はたち)の【魔術師(まじゅつし)】である。まっかなセミロングの(かみ)に、まっかな()(みみ)には銀のピアスをつけている。服は【学院(がくいん)】の教員(きょういん)ぎらいされる傾向けいこうのつよい――ノー・スリーブに、皮のミニスカート、ベルトだらけのショート・ブーツといった、はでなもの。彼女の手には、実験(よう)の器具をつめた(はこ)があった。


「なーんーでっ、私がこんな、パシリみたいなことしなきゃなんないのよ」

「言っててもしょーがないでしょ、リョーコ。あんたの上司(じょうし)の命令なんだから」

「あいつを上司と(おも)ったことなんて、いっぺんもないわね」

 (ゆび)で、「1」のかたちをつくろうとして、彼女――リョーコ・(エー)・ブロッケンはグラついた。重心(じゅうしん)のずれた荷物がかたむいたのだ。


 ささえなおす主人(しゅじん)をながめて、まえを(ある)いていた(おんな)――ノワールは、(まな)()たる『城』をあおいだ。黒いイブニング・ドレスに、黒い長髪(ちょうはつ)美女(びじょ)である。いまは人間の外見だが、一日(いちにち)のおよそ半分(はんぶん)を、彼女は『(ねこ)』のすがたですごしている。

「いいじゃない。学校であまった備品、ただでくれるっていうんだから。ひいきにされてんのよあんた。学院長(がくいんちょう)先生に」

「はっ。くれるってんならてめーが持ってこいっていいたいわね」

「……。なにさまなんだか」


 ノワールの黒髪を、八月(はちがつ)もすえの風がさらう。(ひょう)めいた金色の(ひとみ)と、あでやかな美貌(びぼう)が、午前からうつろう強い日ざしのもとに輝いていた。

 ブロッケンの【使(つか)()】であるノワールだが、主人とはちがって、手にはなにも持っていない。本来(ほんらい)なら、荷物持ちなどの雑用(ざつよう)こそ使い魔の仕事なのだが。

 ブロッケンは、(はこ)芝生(しばふ)におろした。

 ――がちゃっ。

 木箱(きばこ)のなかで、枝突(えだつ)きフラスコやリービッヒ管、ビーカーなどの調合(ちょうごう)器具がぶっつかる。


「つかれたー。あんたもちょっとは持ちなさいよ、ノワール」

「いやーよ。(おも)いもの持つと、(あせ)かくもん」

「じゃあ和泉(いずみ)くんよんできてよ。はこばせるから」

 ブロッケンはその()にへたりこんだ。しりもちついたそのさまは、市場(いちば)(おや)に「おかし買って!」とだだをこねる子どものよう。

 ノワールは両手(りょうて)を金色の()のうえにやって、ぬけるような青空(あおぞら)()た。

 ひゅーん。と、こちらに飛んでくる『影』がひとつ。


「あら、リョーコ、やったわよ。あっちからきてくれたみたい。彼ったら、まるで正義のヒーローだわね」

「ん?」うながされて、ブロッケンも空を()あげた。「マジだわ。おーい、和泉くーん」

 和泉(いずみ)のほうも、地上(ちじょう)にいるふたりに気づく。手をふって、あいさつをする。

「ちょっとりてきてよー」

 地べたに(すわ)りこんだまま、ブロッケンは手をふりかえした。白髪(はくはつ)青年(せいねん)は、逡巡(しゅんじゅん)したようだが、結局(けっきょく)は地上にきてくれた。

「どうしたんですか? 師匠(ししょう)

 すとん。

 ハイカット・シューズのかかとで、和泉(いずみ)芝生(しばふ)に着地した。どことなく身がまえている、この黒衣(こくい)の青年に、ブロッケンは立ちあがってちかづいていく。



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