10.プロフィール
・前回のあらすじです。
『和泉が、葵のたのみをうける』
わたされた紙を和泉は読んだ。ふたつ折りになったままの、したの部分。
『要注意人物』のプロフィール――あるいは『特徴』――が記された文字列。
「えっと……」
『語尾に《ですわ》がつく』
『死ぬほどタカビー』
『可憐な見た目』
『「おほほほほ!」と高笑いをする』
「――こ、これって、」
和泉は、紙を両手でつかんだ。ぶるぶる全身をふるわせる。該当する人物に、的中の予感がしたのだ。
(やっぱり、ウォーリックのことじゃないか!)
ウォーリック。――メイ・ウォーリック!!
【ゾンビ・パウダー事件】で、和泉と組んだ少女である。彼女は【貴族】の出身で(弱小貴族らしいが)、【魔術】の腕もたち、うつくしく、吐くほどタカビーで、語尾にしょっちゅう「ですわ」がついていた。高笑いをしたところはまだみていないが、したくなったらするんだろう。
しかし、すぐれた魔法の技術とは裏腹に、なぜか彼女は、【学院】の高等部でくすぶっている。三年生で、今年は大学部への進学試験を受ける予定だが、『飛び級』しようと思えばいつだってできる、優秀な魔女である。
「知ってる子?」
葵がブルーの瞳を和泉にむける。
「はい。ちょっとだけ、ですけど」
「そう?」
「根はいいやつですから、きっと話せばわかってくれますよ。これ、かりてっていいですか?」
「ええ。さしあげるわ」
葵はシロに手をやって、和泉にゆずるよう合図した。和泉は、手配書をさらに折りたたみ、四つ折りにして、ロングパンツのポケットにつめる。
「モンタージュ、確認しとかなくていいの? 和泉」
「知ってる顔だし、わざわざ見る必要もないよ」
シロの指摘にそうかえして、和泉は、廊下の窓にすすんだ。シロが横から「じゃ、気をつけて」と声をかける。和泉はうなずいて、呪文を唱えた。
「上昇を呼ぶ、シルフの唄」
あけたガラス窓から、外に躍り出る。解放した【飛行の魔法】が、和泉を空へとはこんだ。【トリス】をめざす。




