窓 ノ 外 側
窓の先が表す世界のすべては、いつだってわたしの外側のことです。だから、いま赤々と映し出されている夕方の空も、もれなくわたしと無関係の存在です。
それは至極当然で、誰にとっても当たり前のことなのですが、しかしどうしたってこの世界は、わたしの一部にほかならないから不思議です。
もう窓の外では、家の二階を超える高さまで、斜陽が浸水してしまっていました。あらゆる情景が夕の成す色に満ち満ちていて、本日の情緒も茜色の世界征服です。きっと陽だまりなんかは泥濘になって、足を絡めて世界の外へと引きずり込んでしまうのです。
わたしが窓を開けると、暮れなずむ街が火傷をしない程度に、でもしたたかにわたしと重なって一体になりました。すこしの知覚は痛みでした。
空の赤と、あの標識の赤が等しく一致したとき、世界は空に呑まれてしまうらしい。
そんな妄想に囚われて、わたしは今日もガラス越しに終わる青を眺めます。