5話 「なにい── !」
六月十三日
「もしもし 村上! そう、そうか、間違いないか? 分った」
深く肯きデスクからゆっくりと立ち上がると
「みんな! 聞いてくれ!」
捜査本部にいる捜査員全員に聞こえるように呼びかけた。
一瞬、捜査本部の部屋に静寂が訪れた。
「今、科捜研から連絡があった。香坂の車、後部トランク内の毛布から採取し
た毛髪は被害者、榊のDNA型と一致した。これで物証が揃った。みんな
ご苦労さん!」
語気を強め、皆の労をねぎらう気持が言葉に籠もった。
捜査本部内の捜査員から、安堵感、開放感、達成感などの混じり合った声が
渦巻いた。
主任が椅子に座ると同時に気魂しい音を発てて、デスクの電話が跳ねた。
「村上――赤坂署? そうだ。香坂はメルクスの役員だが? 三森の名刺が
名刺入れに、なにい―! 死体で発見! 六本木東京ミッドタウンのホテル
で 十時三十五分ホテルの従業員が発見! わかった」主任は、受話器を戻
すと「香坂の死体が六本木のホテルで発見された!」
三森の耳元で息を殺して一気に告げた。
「―― え!?」三森は思わず大きな声で叫んだ。
「本当ですか……?」確かめずにはいられなかった。
「冗談を言っている場合じゃないのは、お前の方がわかっているはずだ!」
「……」三森は言葉を失った。
「現場は東京ミッドタウンだ! 急行してくれ! 五十嵐を連れて行け!
所轄の赤坂署には話を通しておく」
三森は捜査本部を飛び出した。
その後を慌てて追いかける五十嵐の跫音がドアの向こうに消えた。




