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1話  Nシステム

  

 六月九日 


 捜査本部の人海戦術による犯行現場までのルートの徹底した捜索の結果、

井の頭公園自然文化園脇の吉祥寺通りにNシステム。

更に井の頭公園駐車場管理棟屋根に監視カメラ。

もう一カ所三鷹の森ジブリ美術館斜め前コンビニの防犯カメラを確認した。

 早速、犯行当日(四月二十二日)の二十二時五十三分から

(四月二十三日)午前一時までの通過車両の解析を急いだ。


 公園駐車場・管理棟の屋根に設置されていたカメラ画像は、不鮮明で車の

ナンバーは読めなかった。

 また、コンビニの防犯カメラは車道全体をカバーしておらず、車の映像は

確認出来なかった。先にこの二カ所の解析が終わった。収穫は無い。

 残るは、Nシステムに期待が懸かった。

 結果が出たのは明け方だった。

(四月二十二日)二十三時十八分に、井の頭公園自然文化園脇の吉祥寺通り

に設置されているNシステムに、香坂の運転するベンツを発見した。


「とうとう見つけたぞ!」五十嵐が吼えた。

「主任やりました。流石のNシステムです。自然文化園脇のNシステムが

香坂を捕らえていました。時間は二十三時十八分です。顔もばっちり映って

いますよ」

 五十嵐が嬉しそうに主任に報告した。

 それを見ていた三森が無精髭の伸びた顔で

「確かに香坂が運転しているベンツが映っているが、犯行に結びつける事が

出来ない。助手席に寝ている榊が映っていれば決め手になるが、後部座席に

も誰もいない。『居酒屋からの帰り道です』で終わりだ」

「で、でも、この時間にこの場所にいることが怪しくないですか?」

 五十嵐が思わず吃った。

「気持ちは分るが、問い詰めても、するりと逃げられるのが落ちだ」

 主任がデスクから立ち上がると

「香坂の車押収できないか?」

 三森の耳元で囁いた。

「礼状取るんですか?」

 三森が訊き返した。

「いや! 無しでやるんだ」

「そりゃ……」

 三森は、口を大きく開けたまま主任を凝視すると

「三森上手くやってくれ」

 主任は踵を返した。

「しょがねえ! 五十嵐行くぞー」

 三森が自棄になって署を飛び出した。


  北青山の香坂の家に着いたのは早朝七時前であった。

「早朝から申し訳ありません」

 パジャマ姿の香坂が無精髭を生やし玄関先に現われた。

「又、君たちか? こんなに早くからなんだ!」

 不機嫌そのものである。

「会社に押しかけるのも迷惑と思いましたので早朝に参りました」

 三森が深く頭を垂れたが香坂は、我慢出来ず大きな声で

「何しに来たのか訊いている!」

 いきなりの怒鳴り声に五十嵐がいきり立った。

「なんだ! 刑事が暴力に訴えるのか?」

 香坂の眼に憎悪が走った。

 三森が五十嵐の襟首を掴み後ろに追いやった。

「申し訳ありません。血の気が多くて。実は捜査本部ではさまざまな状況

証拠が香坂さんに不利に働いておりまして疑いを掛ける捜査員が多数います。

これらを払拭するにはどうしたら良いのか? ここにいる五十嵐とも話した

んですが、出来れば香坂さんの車をお借りして調べたいことがあります。

その調査は容疑者リストから香坂さんを外すためにやる調査になります。

少し不便になりますが、車を貸していただけませんか?」

 三森は頭を下げ丁寧に話すと

「犯行に車を使ったと捜査本部では判断しているのか?」

 三森の眼を覗き込むように尋ねた。

「おっしゃる通りです。車に問題が無ければ捜査本部の嫌疑が晴れます」

「まあ、そういうことなら、車を調査してくれ。なるべく早く返してくれ」

「ありがとうございます」

 車の鍵を取りに一旦家の中に入り再度現れると

「ああこれ、車の鍵、早く返してくれ!」

 鍵を投げてよこした。

 香坂の浅黒い顔が不機嫌色に変わり、その顔をぶら下げ玄関扉の奥に

消えた。



「三森さん、申し訳ありません」 五十嵐が香坂に対する無礼を詫びた。

「えー、お前、一人芝居したんじゃなかったのか? 出来過ぎだとは

思ったが……」

「ああー、そうでした……?」五十嵐は、なんだか良く解らない展開で困惑していると

「ワッハハハー」

 三森が底抜けに楽しそうに笑った。

「五十嵐、ベンツ運転したことあるか?」

「いいえ……」

「まあ良いか。慎重にな。ぶつけるなよ」

「ぶつけたら修理費高く付きそうですね」

「そんな事を言ってない。ぶつけたら、大事な物証が台無しになる。

分ったか?」

「そうですね」

 五十嵐は首を竦め一つ一つ勉強不足だと痛感していた。















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