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5話  元凶


 SVは定期的に経営指導と謳って店に打ち合わせに来る。

 本部が設置したPOSシステムを店舗事務所のパソコンで種々の確認を行う。

 日々の売り上げ推移・客数・欠品商品の有無・週間売り上げの推移・新商品の

発注量などの情報を確認した上で、その週の主に日配品の発注数について

チエックし、必ず発注数の増加を言い渡す。

 

 フランチャイジーが渋っているとSVが、自ら発注数を増量する。

 店主は発注数が多すぎて、廃棄が出ることがわかるので、発注数の減少を

申し入れるが、SVは聞き入れない。

 毎週同じ事が繰り返される。この経営指導に従わないと

「次の契約更新は考えさせて貰う」と恫喝まがいの台詞が飛び出す始末だ。



 本部の店舗指導は、経営指導よりも発注量指導に力点が置かれている。

 フランチャイジーにとっては、死活問題である。

 SVの言い訳は、チャンスロスの防止の一点張りである。

 廃棄ロスはフランチャイジーが全額負担する契約である。

 本部はフランチャイジーが商品を発注した時点で利益が確定する。

 フランチャイジーは廃棄ロスの全額を負担しその金額が売上から消える。

 SVは発注量の少ない店舗に対し発注数拡大の厳しい指導を行う。

 更に大量発注により、納品各メーカーから本部へのキックバックが増える。

 それらの全てが各SVの成績に直結する仕組みである。



 Qカードを不法な手段で搾取する。

 その手段とは、おおよそ次の様だ。

 A店からB店へQカードの店間振替伝票(A店起案・検収印押印)を切る。

 B店にQカードを持ち込む。B店の検収印押印伝票は、SVが持ち帰る。

 B店の棚卸(三ヶ月に一回)の前にB店在庫Qカード(A店からの振替分)を

スーパーバイザー(SV)は、廃棄処理する。

 廃棄伝票はB店の検収印を押印し本部経理に回す。

 検収印は、いずれの場合もオーナー不在時にSVが押印する。

 廃棄処分したQカードは、SVが店から持ち帰り金券ショップ等で換金する。

 

 換金した半額は部長の個人口座に、残りの半額は、本部の経理担当役員の個人

口座に振込む。

 B店から振替られたQカード金額分は、棚卸ロスとなる。

 そのロス金額は、フランチャイジーの負担だ。

 そのまま本部への借金となる。

 伝票は三枚複写、振替元店舗、振替先店舗、本部経理、とそれぞれの控えが残る

はずだが、B店の振替伝票は、SVが持ち帰るので店には残らない。

 SVとしての経験を積むと、この一連の仕事を任される。

 棚卸ロス金額は本部指定の棚卸し業者と事前に打ち合わせの上、SVは適切な

ロス金額を指示する。

 Qカードのほか万引き、レジ精算ミス・納品時検収ミス等を含む金額が棚卸し

ロスの上乗せになる。



 当初は、こうしてフランチャイジーから搾取した裏金は、部長個人の口座に

振り込まれた後、本部直営店で特に日販金額の低い店への補填に廻していた。

 次第にその性格を失い、担当役員、部長が私的に流用するようになった。

 エリアグループ内で仲間の飲み会、遊行費、転勤者への餞別、裏ボーナス等と

その使途は、多岐に亘る事になって行った。

 裏金は使途が拡大し幾ら有っても足りなくなった。



 その裏金の流れを裏帳簿に記すのは、エリアマネージャー(AMG)の役目だ。

 これら一連の流れは、SV・AMG・部長及び経理担当役員は周知している。



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