表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/110

17話  再捜査・薬師寺


 五月十七日


 五十嵐が榊の上司・田澤に営業報告書の十九日を確認して貰った所、その日

は廣瀬という研修中の新人が榊に同行していたとがわかった。

 今日は五時帰社の予定という事だ。

「五時か……その前に薬師寺の所に行くか?」

「そうしましょう。店は既に閉店したんですが、自宅はまだ店の近くの筈です」

 


 三森刑事と五十嵐刑事は閉店した薬師寺の店の前を通り過ぎ自宅に向った。

「閉店は簡単にできるんですかね?」

 五十嵐が唐突に訊いた。

「どうなんだろうね。契約の期限とか約束事がいろいろありそうだがね。

それにしても突然の閉店のように我々には映るな」

 三森は首を傾げた。

「店にあった在庫品は本部が引き取ったんですかね?」

「まあ、本人に会うんだし、訊いてみたら良いじゃないか?」

 

 薬師寺の自宅は五階建の賃貸マンションの五階にあった。

 インターホンを押すと女の声で

「どちら様ですか?」応答があった。

「警察です、ご主人はいますか? ちょっとお聞きしたいことがあるん

ですが……」

 そこまで言ったとたんにドアがいきなり開いた。

「ああ── どうも? 五十嵐さんじゃないですか?」

 五十嵐の顔を見て薬師寺の眼の棘が消えた。

 薬師寺は、そのままドアの外に出てきた。

 外廊下で立ち話となった。

「今日はなんですか?」

 薬師寺が、五十嵐を見ながら話すので三森は五十嵐に聞き役を譲ることに

なった。

「ちょっと伺いたい事がありまして自宅まで押しかけました」

「で…… なんですか?」

「事件の三日ほど前に『いせや』で榊さんとお会いになっていましたか?」

「ああ、そのことですか?会っていましたよ」

「どのようなお話をされました?」

「あの日は、確か夜の七時頃にお会いしたんですが、それは店の前の工場が閉鎖に

なってから一日の売り上げが半分ほどになってしまいまして、店を経営出来ないと

事情を説明しました。榊さんは店の売り上げについても事情は知っていました

のでなんとか出来ないかいろいろ考えてくれたんですが、最終的に他の場所に

移って貰うか、傷が広がらないうちに店を閉めるかの、どちらかしかないので

選択を私に任せると……」

「それで、閉店を選択された」

「そうです、その相談というか選択を迫られたというか? そんな話で会い

ましたが」


「今、何をして暮らしていますか?」

「職探しています。貯金崩してなんとかやっていますが、大変です」

「早く次の仕事見つかると良いですね」

「有難うございます。刑事さんに励まされるとは思いませんでした」

 五十嵐が三森を見ると軽く頷いた。

「どうも、忙しいところ有難うございました」



 五十嵐は事件の三日前に被害者と店のことで会っていたというのは嘘では

無いと思った。

「三森さん、薬師寺は事件に関係があるんですかね?」

「うーん、疑えば切りが無いし、無いとは云い切れない……そんなとこか?」

「微妙な言い回しですね?」

「一つ気になっているんだが、店の事をわざわざ居酒屋で話をするという

のもな―― きな臭くないか?」

 三森は眉間に皺を寄せた。

「店のことは店で話すのが筋でしょうね。そう勘ぐると店では話せないことを

居酒屋で話した。もっとも話した相手は、もういない訳だから本当のところは

闇ですね」

「うーん、闇か……?」

 三森は腑に落ちない何かを腹の底に押し込めようとしたが無駄だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ