表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/110

15話  花音・再度の事情聴取


 所轄取調室


 三森と五十嵐は、所轄取調室で銀座クラブ「嬪」のホステス花音かのんから事情

を聞いていた。

 花音は、ホワイトジーンズにイエロー・ピンク・グリーンなどの花柄をあし

らったシャツ姿で化粧は薄めだが口紅だけは濃赤を点していた。

「今日はわざわざ警察まで有難うございます」

「いいえ、まだ何か?」

 明らかに不機嫌だ。

 しかも怪訝な顔で三森を睨んだ。

 かなり強気の性格のようである。

「先日、店で事情をお訊きした時はママが一緒でしたので話しにくい事が

有った様に見えましたので、再度事情を訊く事になりました」

 説明すると、納得した様子だ。

「クラブ嬪はいつからお勤めですか?」

「三ヶ月ほど前からですが?」

「クラブ嬪に、どなたか知り合いの人がいたんですか?」

「いいえ、辞めた黒服にスカウトされたんです」

「松尾さんですね。声をかけられて直ぐに決めたんですか?」

「いいえ、前の店に借金が有るから難しいと断ったんですが、店で肩代わり

するから、是非移って欲しいと云われて、そのときは名刺をもらって帰ったん

ですが、正直クラブ「嬪」の方がランク的には上なので、自尊心もちょっと

擽られた感じだったし、新しい店で出直すのも良いのかなって……」

「それで店を移られた。なるほど」

「嬪での仕事は前の店とどうですか?」

「前の店よりも客筋が上で移ってよかったと思っています。ママも優しく

してくれます」

「借金というのは、ママに借金している事になりますか?」

「そうです。もうだいぶ返しましたけどね」

「それでママに気を遣っていた?」

「それもありますが、ママの客かと思いましたから、刑事さんの質問には

言葉を選んで答えていました」

「それで、時々ママの顔色を伺った……?」

「ええ……」

 三森を上目使いで覗き頷いた。

「それで、テーブルの上に置かれていた二之宮部長のハンカチを覚えて

いますか?」

「鼻汁を拭いたハンカチをテーブルに置く非常識な客だと思いました。

良く覚えています」

「テーブルを移るときは、ハンカチはテーブルに有りましたか?」

「有りましたよ。テーブルのお酒とグラス・おつまみなどは黒服の松尾さんが

次のテーブルに移していました。

私は松尾さんに指示された次のお客さんのテーブルに移りました」

「その松尾さんは今どちらの店に移ったからご存じないですか?」

「いいえ、噂では田舎に帰ったと訊いていますが……」

躊躇無く答えた。

 二之宮の席についたのはママの指示でそれ以上の役割は担っていない。

 三森はこれ以上の重要な事を花音は知らされていないと思った。

「今日は以上です。わざわざ来て頂いて有難うございます」



 花音はピンヒールの音を軽やかに響かせて帰って行った。

「彼女は関係なさそうだな」三森が呟いた。

「松尾の行方捜しましょうか?」

 五十嵐は次の展開を読んでいた。


「確か経歴書に現住所が載っていたな。経歴書は主任のデスクだ」

「ちょっと持ってきます」

 経歴書を片手に住宅地図と照合しながら戻ってきた五十嵐が

「現住所・江戸川区北小岩九丁目二の二と云う番地は有りませんよ。

三森さん、見てください。この地図……」

 五十嵐が地図のその場所を指しながら云った。

「北小岩は八丁目までしかない」

 三森は五十嵐の指を静かに払いのけると、自分の指で地図を辿った。

「これも嘘か……」三森がボソッと呟いた。



 翌日(五月十五日)、銀座クラブ嬪で再度全員の事情聴取を行った。

すると中野在住のホステスが黒服・松尾と同棲中で現在は六本木のクラブで

働いていると証言した。

三森と五十嵐はパトカーで六本木のクラブに駆けつけ松尾に事情を聞くと、

二之宮のハンカチはゴミ箱に捨てたと証言。

二之宮の記憶が正しければ、ゴミ箱からハンカチを拾って犯人に渡した

人間がいる事になる。

 または、犯人自身がそのゴミ箱から拾ったのか?

 そのどちらかで間違いない。

 再度捜査は厚い壁に阻まれた。

 三森はこれ以上ハンカチの線を追っても犯人に辿りつけないと焦燥感に

苛まれた。


 主任と相談してママの莉音に尾行を付けることにした。

 必ず星と接触する筈と読んだ。

 そう推理すると、ほたる橋の上にハンカチが存在する必然が生まれる。

 主任の推理は少し違ったが、クラブ嬪が今回の事件の元凶と読んでいた。

 尾行は無制限に出来ない。

 期限を二之宮の勾留期限までと主任から釘を刺された。

 やらないよりはましと消極策では事件解決は無い。

 この尾行で解決の糸口が必ず見つかると確信に似た思いが三森には有った。

  



 特殊犯捜査第七係・弓削倭ゆげ・やまと 青海沙月せいかい・さつきの二人が

尾行・張込み捜査に割り当てられた。

男女のコンビは、尾行していても怪しまれることが少ない。

この二人は七係の中でもトップクラスの評価を得ていた。


三森と五十嵐は莉音の尾行・張込みが始まった次の日に再度「いせや」に

向った。

長身でグレーの背広を着たサラリーマン風の男について店員から直接話を

聞いておきたかった。

所轄の車を借りて問題のコインパーキングに入れ、現場を確認したかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ