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3話  愛人の証言


 村上主任は玉野刑事と二之宮が紙片に書いた友人「櫛笥佳代子」

の自宅に向った。

 そこは多摩川を眼下に見下ろす高層マンションの一室であった。

「櫛笥佳代子さんですか?」

「はい?」

「警察ですが」玉野と主任は名刺を差し出した。

「少々、お話を伺いたいんですが?」

「どうぞ」

 佳代子は名刺を見ながら二人を交互に見た。

 居間のソファーで話を聞くことになった。

「三鷹警察の方と警視庁の方がどのようなお話でしょうか?」

「友人の二之宮さんをご存じですか?」

「はい…… 二之宮さん私のこと友人と?」

「そう言っていましたが…… 違いますか?」

「いえー、まあ良いか」


 玉野刑事が佳代子から此の返事を聞いた後、主任に目線を移すと主任は

小さく頷き主任が聞き役に替わった。

「いつ頃からのお付合いですか」

「はい…… 五年ぐらいになりますか…… 強引に口説かれちゃって……」

 主任は、二人の関係を察した。

 玉野刑事を見て次を促した。

「実は、二之宮さんは殺人事件の容疑者として本日逮捕されました。

現在三鷹警察に拘留されています」


 この時、村上主任の携帯に着信。

主任は多摩川を見渡せるベランダに出て、その連絡を受けた。

「解っているよ、十一時頃と言っているのだね。それから……そうか 

裏を取っていくよ」

 簡単なやりとりで終わった。


「二之宮さん現在取調中ですが、櫛笥さんは四月二十三日零時から

午前二時頃までどちらにいましたか?」

「二十三日零時からですか? ちょっと待ってください」

 佳代子はデスクの引き出しから持ち出した手帳の頁を繰った。

「二十三日零時は、この日は二之宮さんが来ています。一緒でした。

朝まで…… その日はお昼のご飯も一緒に食べていますよ」

 村上主任が

「二之宮さん、何時頃こちらに来ましたか?」

「確か十一時頃だったと思いますが」

「二之宮さんその後、ずーっと、この部屋にいましたか?」

「ああ、私がシャワーを浴びている間に、コンビニに行ってきたと言って

ビールを買ってきましたが……私もそのビール一緒に飲みました」

「そうですか、ところでお仕事は何を?」

「ここで翻訳の仕事をしています」

「どうですか仕事の方は?」

「最近、少しずつですが出版社から依頼が有ります」

「ああーそうですか」

「仕事をしながら多摩川を見渡せるなんて贅沢ですね」

「二之宮さんには感謝しています」

「このマンションは二之宮さんの所有ですか?」

「いえー、借りて貰っています」

「ああそうなんですか、いずれにしても羨ましいですよ。我々は毎日捜査で

…… 自分のやりたいことが出来るのが一番です」

「あのう…… それで二之宮さんどうなるんでしょうか?」

 

 佳代子は眉根を下げて訊いた。

「暫くの間は、取り調べが続きます。容疑が固まると裁判という流れですが、

心配でしたら弁護士さんにいろいろお聞きになったらいかがでしょうか? 

私の所に連絡して頂いても良いですよ」

「わかりました」



 村上主任と玉野刑事が捜査本部に戻ると、三森刑事が

「主任! どうでした」

「うん、その日二之宮は十一時頃来たと…… 近くのコンビニにビールを

買い出しに行ったと言っていた」

「証言の食い違いはありませんね。今、五十嵐刑事がコンビニの裏を取りに

行っています。これでコンビニの裏が取れたらアリバイ成立ですね」

「そういうことになるね」


「櫛笥佳代子のマンションね。どうも二之宮が借りているようだが?」

「やっぱり! 愛人ですね」

「それもそうだが……。マンションの家賃を出して囲っている? 

そんなところか?」

「―――― 何か匂いますか?」

「二之宮は部長だな……。給料はどのくらいかと思ってさ……。

小遣いの範囲は大幅に超えているような気がしてね」

「そっちですか……? 給料だけでは女は囲えないでしょう……。

何か副収入があるんじゃ無いでしょうか?」

「副収入か?」

 主任は宙を見据え、何事か考えている様子だった。




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