17話 命の綱が届く
五月七日、加盟店掌握営業本部
二之宮は、ゴールデンウィーク明けの初日、いつもよりかなり早く出勤した。
その訳は、薬師寺から約束の物が届いているはずだからである。
総務課に行き加盟店掌握営業本部の郵便物ボックスを見ると、郵便物が
折り重なっている。
少しずつ捲るように確かめて行くと二之宮宛のメール便が届いていた。
その場で封を切り中身を見た。
約束の裏帳簿と関連伝票が確認出来た。
薬師寺との約束の金は、五月一日指定の口座に振り込んだ。
経理の担当から訊いていた。
その足で近くのUFX銀行に行き、予め予約しておいた貸金庫に、
薬師寺から送られてきたメール便をそのまま入れた。
貸金庫の鍵はズボンのポケットに入れたが、なんと無く頼りない気がして、
ズボンの上から何度も確認する始末で落ち着かない。
結局、貸金庫の鍵は小銭入れのガマ口に放り込んだ。
二之宮は、榊が殺されたと知った時、何故か次は自分の番かもしれないと
危惧した。
背中に悪寒が貼り付いた。
今の今までその悪寒を剥がせずにいる。
榊の前は小早川だった。
思い起こすだけで生きた心地がしなかった。
そう思えば、この裏帳簿こそが自分が死なずに済む唯一の命の綱と
信じたかった。
そして、貸金庫の、この鍵を死守出来れば、命を落とさずに済むはずと……。
二之宮は、脂汗のにじむ掌で、ガマ口を握りしめた。
香坂役員からの指示である、念書差し入れの件は、二之宮の頭から消えていた。




