12話 カラオケスナック捜索
捜査本部に戻ると主任に、吉祥寺東町店・薬師寺の聞き込みの
報告をした。
主任は相槌を打ちながら報告を最後まで聞くと
「間違い電話の可能性をどう思う?」
五十嵐刑事に聞き返した。
「五分五分かと」
「――そうか、カラオケスナックからの電話と薬師寺が言っていたのか」
「電話の向こうでカラオケの音が喧しかったと、言っていました」
「捜査会議の資料によると榊が二十二日帰宅したのは……ああ ここにある。
奥さんの証言で午前二時頃とある。
榊が電話したのが、零時半で帰宅が一時頃だから電話した場所は、
勤め先の周辺ではないな。
この日はゴールデン街で痛飲と二之宮部長が言っていたな。
するとゴールデン街で二之宮部長と飲んだ後、地元に帰ってきて、
その店に寄った事になる」
「そのカラオケ店、探し出して洗ってくれるか? カラオケスナックは、
榊の地元だろう。自宅まで歩ける距離かもしれんな……
ああ……これは私の当てずっぽうだがな……明日で良いよ」
主任は五十嵐に向かい一つ頷いた。
「わかりました……主任の当てずっぽうから洗います」
「おいおい……? まあ良いか……頼むよ!」
その夜の捜査会議には、目新しい事実の報告は無く、引き続き担当の
捜査を続行する様にとの指示が有り、後は短い連絡事項が伝えられ
会議は終わった。
五十嵐刑事、三森刑事は今日も所轄の柔道場で泊まりだ。
「五十嵐さん、今日薬師寺の所行きましたよね?」
三森は訊いた。
「ええ、所轄の玉野刑事と一緒に行きました」
「で……どうでした?」
「それがですね。薬師寺曰く、榊さんは荒れていた。飲み過ぎで
酩酊状態の上、大きな声で怒鳴り散らすように話し、その上カラオケの
音が喧しく内容が断片的にしか解らず、筋の通った話を聞取れなかったと、
ただ最後に『これで全部おわりだ!』と云ったのだけは、はっきり
聴き取れたと云っています」
「荒れていた。怒鳴り散らすような話…… これで全部おわりだ!」
三森は、途切れ途切れのフレーズを繰り返し呟いた。
五十嵐は、三森の呟きを無視して先を急いだ。
「その上、電話した相手を間違えていた様な気がすると……」
「間違い電話と……薬師寺が云ったの?」
「ええ、そう言っていましたが」
「でも最初に私は誰、そして貴方は薬師寺さん、
と確認したんじゃないの?」
溜飲が下がらないと三森の眼が訴えている。
「それがまったくなく、いきなり大きな声で怒鳴り散らしたと、
その上勝手に切ったと憤慨していましたよ」
「あ―そう。憤慨ね」
三森は表情を変えずに五十嵐の言葉をオオム返した。
三森が何を考えているのか皆目見当が付かない様子の五十嵐刑事は
続けた。
「明日、そのカラオケスナックを探してくれと主任から……」
「主任がそう云ったの?」
「はい、私の当てずっぽうと……小さな声が聞こえましたが」
「当てずっぽうか? でも経験則は案外と的を射ているかも知れんな!
それにしてもカラオケスナックは結構な数が有りそうだな」




