6話 捜査会議
村上刑事と三森刑事が捜査本部に戻り、暫くすると捜査会議が始まった。
「被害者の当日の足取りの捜査はどこまで確認できたか報告してくれ」
村上主任(警部補)が担当刑事に訊いた。
地取り担当の橋本刑事(所轄・巡査部長)が手帳を取り出し報告した。
「四月二十二日被害者は、定時・九時に出社し午前中は社内で通常勤務を
行っております。午後一時に三鷹駅北口店の定例店舗指導に向かいました。
三鷹北口店で二時から三時半まで店長と打ち合わせを行い。
その後四時半から吉祥寺南町店で定例店舗指導。
これは六時半まで掛かり六時四十五分に本社に連絡を入れております。
内容は連絡事項の有無の確認と直接帰宅する旨の連絡です。
これは、電話を受けた事務担当者からの話です。
六時半に吉祥寺南町店の防犯カメラで被害者が店を出て行く所を
確認できました。
その後、殺害推定時刻四月二十三日の午前一時から二時半までの足取りを
現在確認中であります」
「六時半吉祥寺南町店を最後に殺害されるまで足取りが消えた……か?
ところで定例の打合せで店舗を移動するのは車だな……?」
「各担当が社有車を使っていますが?」
「殺害現場近くに、その車は……?」
「そうですね…… 無かったですね? 至急確認します」
橋本刑事が応えた。
「目撃者の情報は……?」
「被害者発見現場周辺の死亡推定時間帯前後の目撃者は今のところ
有りません。何しろ深夜の時間帯はあの現場周辺は人が
殆ど通りませんので?」
橋本は一息入れると続けた。
「又、民家も現場からは、かなり離れた場所に位置しますので、
不審な音・話し声などを聞いた人はいませんでした」
「目撃情報は今のところ、ないのか?」
村上は次の質問を続けた。
「被害者の携帯電話の通話記録はどうなっている……?」
「被害者の上着内ポケットに有った携帯電話の履歴から十六時二十分に
担当店舗の調布仙川店から入っていましたので……
内容を確認しましたら、仙川店店長が来週の店舗指導打合せ時間確認の
電話を入れたとのことでした。
それ以外は本社からの連絡が二件それぞれ十五時と十七時十分に有りました。
当日の履歴は以上でありますが……一件ちょっと気になることがあります」
「その気になること……とは……?」
村上は上体を乗りだした。
「はい 本人からの発信ですが二十二日の零時二十六分に
090-78××-××××に発信しています。
通話時間は二分二十秒ですが…… 現在着信電話のナンバーから所有者を
確認中です」
「二十二日の午前零時二十六分か……? 真夜中に電話か? その携帯の
所有者確認できたら報告頼むよ!」
「わかりました」
「交友関係当たってくれたのは、
ああ…… 五十嵐君(本庁捜査一課・巡査部長)のところか
…… 何かわかったかね?」
「被害者の交友関係は大学の友人のほか特別な付合いは今のところ
出てきていません」
「仲の悪い友人又は、金銭関連で問題の友人はどうなっているかな?」
「友人関係で悪い評判は一切出ませんでした。金の面も貸し借りの
関係はないようです。友人関係は問題なさそうです。
後は親戚関係を少し洗ってみたいと思っています」
「そう…… それじゃ、その線頼むよ! ああ、もう一ついいかな……?
その親戚関係終わったら、被害者の担当店の関係者あたってくれるかな。
ここに担当店の名前と住所が書いてあるリストが有るから……」
「わかりました」
五十嵐刑事は渡されたリストを見ながら
「結構な店舗数だな……」呟いた。
この時、三森刑事あてメルクス本社より電話が入り捜査会議もお開きとなった。
「メルクスの二之宮です」
「先ほどは…… 三森です」
「私の掌握部門事情聴取の件ですが…… 明後日にお願いできればと、
思いまして……」
「明後日ですか…… かまいませんよ。時間は?」
「こちらで予定を組ましていただいたんですが、その――、
一人三十分くらいのペースで進めていただけると助かります」
「かまいませんよ」
「そうしていただけると午後一時からおおよそ午後六時くらいまでの
予定でいかがでしょうか」
「大体の人のお話が聞ければいいんです、かまいませんよ」
「わかりました。それでは明後日午後一時から六時頃までの予定で
お願いします」
「こちらこそ、忙しいところ時間を頂きまして恐縮です。それでは
明後日にお伺いします」
脇で訊いていた村上主任がOKのサインを出していた。
「主任、明後日メルクスの事情聴取予定よろしいでしょうか」
「大丈夫だよ。一緒に指紋とDNAを採らして貰おうか」
「わかりました。科捜研、連れて行きますか」
「そうだな、手配しておいてくれ」
「主任、指紋・DNAですか? 何か匂いますか」
「捜査会議の話を聞いただろう」
「はい」
「友人知人の線はほぼ消えたか、となると、残りは社内か、
担当店関係者といったところが浮上してくるが?」
「そうですね。行きずりの犯行は考えられないし」
「行きずりは、無理だな!」
「それにしても、なぜ太宰治が山崎富栄と入水心中した、とされる
玉川上水に仏を投げ込んだか? 何か意味があるんですかね」
「皆目見当がつかないね。今のところは」
「ですよね」
村上主任は捜査会議の内容を西尾係長に報告した。
「容疑者は……」
「はい、まだ容疑者は上がってきません」
「目撃者なし・凶器なしか。少し時間掛かりそうだね」
「はい」
「まだ、始まったばかりだからな……」
いつもながら辛辣な云い回しである。
「小松管理官には、僕から云っておくから」
「お願いします」




