19話 遠隔地異動?
四月二十二日 メルクス本社社長室・十一時
香坂は「調査報告書 二之宮 仁」と記された報告書を見ながら
「二之宮部長、女を囲っていますね」
香坂の口角に嗤いが滲んだ。
「ほおー…… あの顔で! 名前は?」
社長は、戯けた表情になった。
「櫛笥佳代子三十一歳となっていますね。職業・翻訳家、上智大学文学部
英文学科卒か?」
「才女だね。変な虫はついてないの?」
社長の口元に薄笑いが浮かんだ。
「それは無いですね。毎月かなり浪費していますね。カードの記録は一月に
七十万・二月は九十万・三月六十万と……」
香坂は読み上げると、目線を上げた。
「それ……二之宮君が払っている訳?」
社長が、口を尖らせた。
「口座は二之宮になっていますね」
「二之宮君、毎月大変だね」
口元に皮肉な笑いが浮かんだ
「ちょっときついですね。最も例の裏金で払っていれば別ですが」
「それしかないでしょう」社長は嘯いた。
「やっぱり! 社長もそう思いますか?」
「香坂君……それしかないでしょう」
コーヒーのカップを口元に、頷くと一口啜った。
「二之宮君の異動は遠隔地が適当かと」
「まあ、それしかないでしょう」
「九州支店のポストは営業以外が良いかと」
「そうだね……空いているポストなかったかな?
支店長とちょっと話しておくよ」
さりげなく、呟くような口ぶりだ。
「ああ、話、違うけど……今日銀座で久々にどうかね?」
「私は明日から例の件で東南アジアへ出張ですので、遠慮させてもらいます」
「ああそう、気が向いたら来てよ」
「はい、わかりました」




