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15話  閉店承諾書

 

同日・四月二十日 

薬師寺は、地区のオーナー仲間とゴルフに出掛けた。 

深夜帰宅し、店を覗いた。

事務所にメルクスの社名入り封筒が届いていた。

バイトの渡辺に「この封筒は何時頃持ってきたか?」聴いた。

「午後八時頃に本部の人が持ってきた。オーナーに渡してくれって」


昨日SV榊に頼んだ書類だ。

書類の中に頼みもしない「念書」が入っていた。

その場でPCを立ち上げ、SV榊にメールを入れた。


「例の物は閉店後、約束の金の振込みを確認したら郵送で返却する。念書の話は

金の振込み確認後の話としてくれ」

挨拶も礼の言葉も全て省いた。

送信をクリックしPCの電源を落とした。



店をオープンして六年が過ぎていた。

当初は順調と思っていた。

昼の弁当などは店の中の在庫だけでは足りず、店の外でも販売しそれも

午後一時になる前に売り切れていた。

日販八十万円から九十万円売り上げていた。

だが月の収支バランス(PL)は、利益がほんの少ししか出ていなかった。

これは何かの絡繰からくりか? と、思う程利益が少なくバイトの

給料を払い終わると赤字になった。

当時は、棚卸しロス金額が非常に多く、不思議に思い、SVに尋ねたところ、

「万引きなど店の管理を徹底するよう」注意を受けた。

思えば、この頃から不正伝票による搾取が始まっていたのだ。

今迄、店の売り上げと月末本部から送られてくる財務諸表に違和感があった。


裏帳簿記載の不正を会社組織で行なっていたという事なら、その違和感も

腑に落ちる。

裏帳簿と不正伝票の買い取の金額を三千万円と値踏みしたが、その金額に

対する値下げの交渉が一切無かった事を考えると、値踏みは安すぎたのだ。


「糞! 値段が安すぎた!」

薬師寺は独り言ちて舌打ちした。

薬師寺は、買い取り金額への少しの後悔と本部が閉店承諾書に、すんなり

応じた事への安堵感が胸の中で綯い交ぜになった。





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