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「超高層ホテル52階バスルーム・謎の完全犯罪」  作者: 嘉宮 慶
序章 レインボーネイルの女
3/110

3話  身元調査


刺身の皿に最後に残ったタコを横目で見た。箸を伸ばそう思った。

俺の自制心が働いた。

「あんた、仕事何してるの? 年収ってどんくらい?」頭ごなしに聴いてきた。

何を血迷っている。この女!

レインボーネイルの指でぐい呑みを摘まんで、紅色ルージュの口先にスタンバッてる。

眼玉だけ榊に廻した。

「ノーコメントだ!」身元調査か? 絶対に答えない。

「――――だと思った!」

「思ったって? ……何故そんな事聴く??」

「女だから、――聴いた」

「答えになっていねえだろう!」

「あたし、お金に困った事ないから、やってゆけるかなって?」

「まっとうな答えからドンドン遠ざかってる?」

思い当たる事をヒョイと思い出した。

「んっ?? ……今、何ていった。やっていけるかって?? どうゆう事だよ?」

「あたしも、それ以上はノーコメント」いうと、熱燗のぐい呑みを口の上で傾げた。

熱燗が紅色の口の真ん中にしたたり落ちた。 

見事だ! 素人は、あんな風に行かない。感心して見入った。

梅美は自撮りモードで紅色ルージュを覗き、一つ頷いた。納得したようだ。

「聴きたい??」

「そりゃ! 聴きたいか、聴きたくないかって、云えば聴きたいほうに針は揺れる」

「だっしょ! ――デモ~云わない!」紅色の口が薄嗤いを浮かべた。

「たくっ!」時間の無駄だ! 呆れた!



この女の頭、かち割って中身を見てみたい。

無益な思いが頭を過ぎった 

「怒った?? 目尻がちょい釣り上がってる。渋い顔になってる」顔を覗き込まれた。

「釣り上がってない。勝手に云うな!」もう、煩わしい。

「おない年の子にはない感じ。憧れるなあ~! その渋さ加減!」云うと、

気やすく、榊の肩に手を置いた。

肩に乗せた手を見た。レインボーネイルが眼に入った。

指をピコピコさせネイルの薔薇のモチーフを見せつけてる。

催促してやがる!

手首をやんわりと掴んでテーブルの上に戻した。

「薔薇のモチーフ可愛いでしょ!」甘ったるい声を出してきた。

「だな!」つまらなそうに云った。

「ネイルサロンのおねえさんにやって貰うんだ。結構時間掛かるんだよ!」

「それで?」本当は、それがどうしたと云ってやりたかった。

「指をマッサージして貰うとき、指の股をス~~て、されると」

台詞の途中で自分の指の股をチラーと見ると、

「ゾクゾクって! ふふふ~」やけに色っぽい声だ。

「キモイな~、その……ふふふ~って、なんだよ?」

「あたし! 感じちゃった~~の! 性感帯がこんなところにあるなんて、

いやになっちゃう!」

「なんでいやになる?」

こんなにも、あけすけな女に逢ったことなかった。ある意味新鮮だ!

「日常生活に~ 支障が出るじゃん!」

「どんな支障がある?」

「たとえば~、あんたと『ラブ握り』で、散歩したら~って、思うだけで……?」

梅美はホット小さく息を吐くと

「ゾ~クゾ~クしちゃう!」

会話がまるで成立しない。梅美は脱線して自分の世界に浸っている。

「そんなんで、ゾクゾクしないだろう。普通」俺はマジ顔で聴いた。

「だって、あんたの指があたしの指の股に~絡まってくるわけじゃん!」

「駄目! 駄目だってば! 考えただけで~~駄目!」

頬がほんのりピンクになった。

梅美は、流し目を榊の横顔にスーッと這わせた。



レインボーネイルの指でぐい呑みを持つと熱燗を口に流し込んだ。

ちび飲みは皆無だ。梅美の哲学に適わない。

ぐい呑み一杯まるまる胃に流し込む。

酔っ払うのは、早いはずだ! 早くできあがって欲しい。

「熱燗に飲まれて、酔っ払ったか?」梅美の顔を覗き込んだ。

「こんなんで、酔っぱらわない! あたし結構強いんだ。お酒に」

まだ、出来あがってない。

「やけに強いんだな!あと、三本くらい飲んでも大丈夫か?」

確かめたくて聴いた。

くだらないことを聴いた。輪をかけて返事が返ってきそうだ。

「あと十本飲んでも、歩ける。ちょっとふらつくけど……」

やっぱり⁉ 輪をかけてきやがった!

この女負けん気が強すぎる。

「板さん~! 熱燗お替わり。……あんたも焼酎のロックお替わりしたら、

カラッポじゃン。グラス!」

仕方なく、お替わりを頼んだ。 どうも調子が狂う!

「後……十本って、一升酒飲むってか?」呆れた。

ハッタリだ。そんな事、あるわけない。

異次元の女だ! 榊は尻がモゾモゾしてきた。

「何で、ラブ握りの話しから~一升酒の話しに、振っちうの?」

絡んで来やがった。面倒臭いー! 女だ。

「振った、つもりないけど」榊は素っ気なく云って焼酎をチビッた。

「わかった⁉ あんた! あたしを酔わせて!」俺の横顔に向けて頬笑むと

「ナンか……やばいこと考えてない?」

「別に……?」何処からやばい話が出てくるのか見当も付かない。

「そうなの! つまんない!!」いって、

サラダからオニオンだけ箸で摘まむと、皿の端っこに寄せた。

レタスにダイコンとにんじんを載せて、マヨネーズを掛け、丸めると口に入れた。

「そうか、刺激がなくて、つまんないか?」

「そうだよ、ただの楽しいお喋りじゃん。ムキに、なんなくても……」

やっぱ! 異次元の女だ? 煩わしい! 

ついでだ! 乗りかかった船だ! ここは一つ話に乗ってやるか?

「やばいこと。考えた! 今、思い出した」

「思い出してくれた。嬉しい! で……どんだけ! いやらしい?」

「梅美の指の股をベロでペロペロしたら、どうなっちゃうのかなって?」

「そんな事……されたら~、あたし、どうにかなっちゃう~!!」

甘ったるい口調の台詞が紅色の口から漏れた。

たわいも無い事で、これだけ喜んで貰えて良かった。

「ハアッ!」俺は一息つくと

「それって、被害妄想、いや! 完全に快感妄想だ! お前! 生理前だろう、絶対!!」

いって、しまった。言い過ぎた。後の祭りだ! 拙い!ロックをチビッた。

梅美の反撃はなかった。すると

「もっと云って!! 他にもあるでしょ! もっといやらし~いの、いって!!」

梅美は震えるような声でいうと、瞳を閉じた。

3D睫毛がフルフルと震えている。

この女!? 図に乗ってきた。

そろそろ芝居は終わりにしないと、際限がなくなる。一気に酔いが醒めた。

「俺、ションベンしてくる」いって、席を立った。

「なによ~。こんなクライマックスの時にションベンだなんて?!」

「ほんもののカッペじゃん!」

つまらなそうに云って、熱燗を勢い良く紅色の口に放り込んだ。

続けて手酌で熱燗をぐい呑みに注いだ。又、一気に口に 放り込んだ

「板さん~! 熱燗お替わり。……同じの、隣の分もね」勝手に頼んだ。

梅美はスマホを出して自撮りモード。睫毛と紅色の唇をマジモードで観察。

リップブラシで入念に塗り直した。

続けて、アトマイザーで強烈な臭いの香水を胸の谷間に一吹きした。


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