4話 ポリアモリー
同夜・五十八階(最上階)優瑠瑠の超高層マンション
こぬか雨が上がり、半月に雲が懸かっていた。
四月にしては肌寒さを感じない。
香坂はシャワーを浴び素肌の上にバスローブを羽織った。
ベランダに出て手摺に身を預け、瓶ビールに口を付けた。
眼下に墨田川・レインボーブリッジ、少し遠めに銀座の夜景・ライトアップ
された東京タワーが霧に霞んでいた。
この夜景は、いつまで見ていても飽きが来ない。
このマンションを、社長と共同購入したのが二〇〇八年であった。
購入してまもなく優瑠瑠が代官山の賃貸マンションから越してきた。
和服を畳む為の畳の部屋が欲しいと優瑠瑠が我が儘を言った。
引っ越しまでに改修工事を終わらせた。
引越しの祝いに駆けつけた社長と香坂を含めた三人で優瑠瑠が築地で
仕入れた刺身を肴に、酒宴が始まった。
三人に、酔いが廻り始めると、二人が交代で優瑠瑠を相手にチークを踊り
始めた。
怪しげな雰囲気を醸しだしてきたのが、耳朶と襟首が敏感な優瑠瑠であった。
最後は誰と踊っているのか判らなくなり、三人がキングサイズのウオーター
ベットに倒れ込んだ。
三人の関係はこんな具合で始まった。
誰が嫉妬する訳でなく、誰が独占欲を示す訳でもない。
優瑠瑠と楽しみたい時はいつでも誰でも良い。
たまたま三人でも構わない。
そんな大人の感じで七年続いてきた。
全ては金の為せる技だ。
いつの間にか、優瑠瑠が和服を脱ぎ長襦袢ひとつで香坂の隣にぴったりと
体を合わせ、ワイングラスを傾けながら、夜景を見ている。
優瑠瑠の左手は香坂の腰に廻っていた。
香坂も瓶ビールを左手に持ち替え、右手を優瑠瑠の肩に廻し、そっと引き寄せた。
二人はそうして暫らく夜景を眺めていた。
香坂はこの上ない至福の時に浸っていた。
優瑠瑠とこうして居られる事が、今まで社長と一緒に事業を拡大してきた
褒美のような気がしている。
香坂には表の仕事もあるが、それよりも裏の仕事のほうが数は多い。
会社の業績に影響を及ぼしかねない、そんなトラブルを解決してきた事で
今の会社があると思っている。
「社長さん、今日どうして一緒しなかったの?」
「ちょっと社内で問題があってね」
「あら…… 深刻なの?」
「そんなことは無いけれど…… 気が向かなかった…… のかな?」
「そう」
「今日は三人の気分だった? のかな?」
「もーいやだ……! そんなんじゃ無いってばー……」
香坂が優瑠瑠を引き寄せた。
二人のシルエットが重なり、そのまま縺れ合う様にベッドルームに消えた。




