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16話  土地活用依頼

    

 三月二十四日午前十一時 

 地主・草薙慶一朗は、UFX銀行駅前支店の応接室で藤掛支店長と早稲田大学

学友の西尾を前に腰まで沈む牛革のソファーに座っていた。

 所有している三千坪強の土地に付いて概略の説明をして、土地活用方法につい

ての協力を依頼した。

 

 話が一段落すると暫らくぶりに会った西尾がソファーから身を乗り出して来た。

「お前すごい土地を持っているなあ……! 写真家の慶一朗は知っていたが

土地持ちとは知らなかった」

「親父からの相続だよ、俺が稼いで買った土地じゃないよ」

「それにしても、三千坪とはすごい! 売却は考えていないんだよな。残るは

賃貸か……。道路付けも良いし条件さえ合えば、借りてくれる所は限られて

くるが、心当たりが有る」

「そうか、借りてくれる所はありそうか?」

「至急、二、三件当たってみるよ」

「そうか、ありがとう、宜しく頼むよ」

 

 二人の話しを訊いていた支店長が

「草薙さん、これを機会に当行ともお付き合い御願いします」

「私もそう願いたい所です。宜しく御願いします」

「後は西尾君頼むね」

 支店長は云い残して席を立った。

 二人はソファーから立ち上がり簡単な挨拶をして別れた。


 

 権利関係が単純で広い土地の足は速い。

 土地情報が他の銀行・不動産屋・仲介業者などに出回ってしまったら

押さえが利かない。

 直接地主と交渉を始める輩が、一番始末が悪い。

 本来であれば土地情報の取り扱いをUFX銀行駅前支店に依頼する旨の

専任媒介契約なるものを地主と結び、各方面へのアプローチを行うのが通常だが、

地主が西尾の旧知の仲という関係から今回は、それが省略された。

 今回は一企業の狙い撃ちでなく、大手商社及びその傘下の物販関連の各社に

狙いが絞られた。

 

 物件説明書を作成し極秘扱いで大手商社三社の開発部長に面談の上、資料を

渡し趣旨が説明された。

 どこの商社も傘下の企業の情報は吸い上げていて、店舗開発の状況が手に

取るようにわかる仕組みを構築していた。

 時間は、掛からなかった。

 


 ある商社の傘下にZスーパーがある。

 そのZスーパーが探していた土地にぴったりと嵌まった。

 すでに商圏の調査も済んでいた。

 事業収支も多少の修正で親会社に当たる商社から了解を得られた。

 Zスーパーの首脳陣から間髪入れずにGOサインが掛かった。

 西尾のところにW商社開発部長とZスーパーの取締役が連れ立って

見えたのは、物件を依頼してから、僅か十日と掛かっていなかった。

 異例の速さだ。

 Zスーパーは城西エリア、特に吉祥寺周辺に的を絞って物件を探していた。

 他のスーパーよりも客単価が二割ほど高い。

 必然的に出店できるエリアが絞られ客層も絞られる。

 Zスーパーにしてみれば願ったり適ったりの土地だ。

 しかも銀行の仲介となれば、間違いなど考えられない。

 足踏みのしようが無い。

 

 だが、銀行の条件はいつも一方的だ。

 出店意欲が強いほど銀行の条件もきつくなる。

 出店にかかわる費用は、全て銀行融資、利率は相場よりかなり高い。

 建築会社も銀行推薦を第一とする。

 出店後の日々の売り上げを当行に入金・不動産の契約関係は当行の

子会社が担当など全てについて銀行関連の企業を通す事を条件に地主

に合わせる。

 銀行が独自で作成した事業収支の数字が全てを支配する。

 Zスーパーが、これらすべての条件を難なく飲み込んだ。

 喉から手が出るようなプロジェクトに異論を挟む余地は無かった。

 すでに店舗オープンの日を決定した。

 その日から逆算した全体スケジュールを銀行に提示していた。

 後は、地主サイドの返事待ちとなった。


 慶一朗は、西尾から借主のZスーパーの話を聴いた。

「さすがに大手の銀行だけあるな! 賃貸借条件は問題ない」応えた。

「良かった。今回はテナント側の出店意欲が強烈だった」

 西尾は事情を説明した。

 西尾から契約関係の書類を預かって二日目には、契約内容全てに

了解の旨を連絡した。

 


 西尾に相談に行ってから三週間と経たないうちに、借主が決まり

店舗オープンの日まで決まった。

 契約の日は四月十日(大安)と決まった。

 契約日の前日には、慶一朗の口座に契約金・保証金などの

入金があった。

 Zスーパーとの契約のお礼に西尾とその上司を料亭で持てなした。



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