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遂に目覚めた弱き者

 サク、サク、サク、サク、サク。

 いつも掘る音よりは幾分軽い音が『ゴミ捨て場』に鳴り響く。

 サク、サク、サク、サク、サク。

 それもそのはず。今掘っているものはいつもの土ではなく、軽く降り積もった雪だ。さらに言うならば、先ほど墓守が埋めたばかりの薄高い雪山だ。

 気づいたら目覚めていた少女。せっかく目覚めたのだから、木の実や山菜以外にも何か食べさせたほうがよかろう。何より、与えた食料を片っ端から食い尽くしていくので、さっき隠したばかりの食料にも手を出さざるを得なくなった。

 目覚めたばかりの病人はもう少し食欲が減退していてもいいとは思うものの、ひたすらに食べる彼女の姿は、その期待をものの見事なまでに裏切っていた。

 いつもの墓穴よりははるかに浅いため、目的のものはすぐに見つかった。雪山の穴に手を突っ込むと、兎の死体を引きずり出す。丸ごと残しているため、毛皮を剥ぐなどの処理が必要だ。

 兎の死体を担いで、墓守は洞穴へ戻る。

 そこには、墓守が採った食料を全て平らげ、それでもまだどこか物足りなさそうにしている少女が座っていた。

 確かに多いとは言い難い量だったが、こんなにすぐに食べつくしてしまうとは。

 太陽はいまだてっぺんに昇りきったあたりであり、一日はまだまだ長い。

 持ってきた兎の死体を降ろすと、火の傍に腰を下ろし、シャベルは近くに突き立て、墓守はその加工処理を始めた。遠く彼方の記憶を掘り出しながら、少しぎこちない手つきで、誰かのナイフで以ってそれを始める。

 続けていくうちに、だんだんと要領を思い出していき、いつしか手際よく手を動かしていた。

「ねえねえ、名前は?なんていうの?」

 少女が声をかけてくる。

「……墓守」

 ぼそりと呟いたその言葉は聞こえなかったのか、

「うーん、まあいいや。シャベルさんでいっか!」

 少女は自己完結する。

 多少むっとしたものの、取り立てて否定することではないと、落ち着いてそれを是とした。

 いつもシャベル担いでいるのは決して間違いではないし、それでもいいかと思ったからである。

「あ、それと!シャベルさんがわたしを介抱してくれたんだよね?ここのドングリとかクルミとか!ありがとね!」

 快復したばかりの少女とは思えないほどの元気さで話しかけてくる。

「それでねそれでね!わたしの名前は、サクラっていうの!よろしくねっ!」

「ふーん」

 わかってはいたものの、それを聞いて墓守に安堵とほんの少しの哀しみが浮かぶ。彼女が誰であろうとまったく、どうでもいいことではあるが。

「シャベルさんはこんなところにいつも、一人?なの?」

 墓守はその問いには答えず、いつの間にか処理が終わり、いい感じに香ばしく臭いをまき散らしていた兎の脚を焼いたものを、サクラという少女の目の前に差し出す。正直全部食べそうな気がしたので、実は丸焼きにしたのだが、流石に起き抜けの病人に丸ごと素手でそれを食べろというのは酷であろうと判断し、小分けにしておいたのだ。

「え、これ、もしかしてシャベルさんが!?」

 キラキラと目を輝かせながら、サクラがそれに飛びつく。

 案の定、がつがつとすぐに食べ終わり、満面の笑顔を浮かべる。そんな彼女に対し、再び小分けにした兎の丸焼きを差し出す。すると、それにもすぐに飛びついて、すぐに食べ終わる。

 墓守は、まるで小動物にエサをやっているかのような感覚を覚え、次々と食事を与えていった。

 気が付くと兎は骨を残してほとんど食べ終わって、そこそこに満足したような顔をして、サクラは床に寝転がった。

「ごちそうさまーっ!」

 至福の笑みをその顔に浮かべながら、サクラは食事の終わりを告げた。尤も、仮にサクラが物足りなかったとしてももう与える食事がないのだが。

「おいしかったー!」

「それはよかった」

 彼女の様子を見る限り、差し迫った命の危険は感じない。この調子であればすぐさま体力を失って力尽きる、という事はしばらくなさそうである。

 墓守は彼女の容姿を観察してみる。

 サクラは、齢10くらいだろうか。墓守からしてみれば十分に幼いとはいえ、ある程度の独り立ちも可能なくらいの年齢だ。栗色の髪はあちこちが跳ねていて、恐らくそれを手入れする暇もあまりなかったのだろうということが窺える。服装は寒い冬に備えてか、厚めのコートを着てはいるものの、ところどころ破れていて、その防寒機能は本来のものよりもかなり落ちているのだろう。靴もボロボロで、足の保護機能も同様に落ちているようだ。実際、落ちた時にはその空いた穴から霜焼けした真っ赤な足の指も垣間見えた。

 そのような傷も、火にあたっていたことで回復したものの、彼女の身体がボロボロなのは間違いない。いかに彼女自身が元気にふるまっているとはいえ、そこは肝に銘じておく必要がある。

 そんなことを墓守が己に言い聞かせたあたりで、サクラががばっと起き上がった。

「ねぇねぇシャベルさんっ!シャベルさんはここで何をしてるのっ!?」

 起き上がる勢いのまま、サクラは食いつくようにそれを訊く。

「うーん……」

 どうしたものか。墓守は少しだけ頭をひねる。

 墓を造っていると答えてしまうのは簡単だ。しかし、その場合、好奇心の高そうな彼女に彼女自身が墓を造っているところを見せる羽目になるかもしれない。あくまで想像でしかないけれども、そうなった場合、サクラの身体に無理をさせてしまうことにならないだろうか。せめて今日一日くらいは暖かいところで寝かせておくべきではないか。

 少し考えこんだ後、墓守は無言のまま、転がっている石をいくつか適当に拾い上げた。

 カチャリ、カチャリ、カチャリ。

 その場でそれを積み上げ始める。墓標のように。その下には何も埋まってはいないけれども。

「??えーっと?石積み上げてるの?」

 流石にこれだけでは伝わらないか。

「……墓を、造ってる」

 シャベルを持ち上げ、外の方を指す。その先にあるのは、洞穴の中からでも見えるいくつもの死体。それといくつもの墓標。

「そっか……墓を、掘ってあげてるんだね……」

 どこか遠くを見つめながら、サクラは呟く。

 そんな「あげている」等と言うほど大それたことではない。いうなればこの墓造りはただの自己満足だ。誰のためでもない。己のためだけの行動だ。

 そんなことを思いこそしたものの、呟くサクラの姿に彼女の本心がにじみ出ているような気がして、墓守は何も言えなくなった。

 なにか口にすれば、それは彼女の心を汚してしまうような気がした。

 シャベルを降ろし、押し黙る。

 洞穴に沈黙が下りる。

 パチパチという火が爆ぜる音だけが聞こえる。一人分の呼吸音だけが洞穴に木霊する。

 しばらく経ち、サクラは起こした体をもう一度寝かすと、散らばっていた布を被る。そして目を瞑ると、すぐに寝息を立て始めた。

「……おやすみ」

 墓守のその声はサクラの耳には届かなかっただろうが、安心して眠るサクラの顔を見ていると、彼女の世話には多少苦労したものの、なんとなくこれでよかったと墓守は安心することができた。


     * * *


 ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。

 カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ。

 いつもの音が『ゴミ捨て場』に鳴り響く。いつも通りの静かな音だ。

 ところどころに雪が積もっているものの、死体の多くはそれに埋まりもしないでその姿を晒している。昨日は一日中サクラの看病につきっきりで、墓造りを一日二日空けていたが、やはり雪が降ったらその活動はおとなしくなるのか、死体の数は特別増えているようには見えなかった。もちろん、減ってもいないのではあるが。

 ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。

 穴を掘る。それはいつもと同じ。今背負っている遺体も、どこの誰とも知れぬ、若い女性のものだ。きっと相当前に殺されたのであろう、きっと綺麗だった皮膚は腐れ、ただれ落ち、一部は骨まで露出している。かろうじて残っている服も半袖で、今のこの気温ではほとんどあり得ない様なものである。

 墓守は、散らばる死体から適当に取り出して埋めていくので、もしかしたらこの『ゴミ捨て場』にずっと前からあったけれども、見ていなかっただけのものかもしれない。もしくは大穴の外に放置されていたものが最近になって落ちてきたのかもしれない。

 その真偽は分からないが、彼女の遺体もついに土の下に埋まる。

 ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。

 カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ。

 墓標の石を積む。

 手を合わせる。

 それでおしまい。

 いつも通り。

 けれど、今日はいつも通りじゃないものもあった。

「シャベルさーん!どおー?捗ってるー?」

 そこまで離れているわけでもないが、この大穴の中では離れている方の洞穴の中から、元気な声が聞こえてくる。そちらを見ると、洞穴の入口の方で、たくさんの衣類を羽織ったサクラがにぱーっと笑いながら手を振っている。

「はぁ」

 小さくため息をついて、墓守はシャベルを振って彼女の声に応えた。

「お、捗ってそうだねー?」

 サクラは墓守の反応をどう取ったか、さらに笑顔を浮かべながら洞穴の中から這い出ようとしてくる。

「あー、だめだよ、出たら」

 墓守はその様子を見て急いで洞穴の方に駆けると、目の前にシャベルを刺してその進行を妨げる。

「えー。なんでー?シャベルさん、邪魔しないでよー」

 出ていくのを邪魔されたサクラは、頬を膨らませながら不満を口にする。

「病み上がりにこの気温は……」

「わたしはこんなに元気だもんっ!大丈夫大丈夫!」

 墓守が言い終わる前にサクラはそんなことを言って勢いよく立ち上がった。その際に羽織っていた衣類がずり落ちる。

「うぅ……やっぱ寒い……」

 さっきまでの元気な表情はどこへやら、冬の寒気にあてられたとたんにがくがくと震えだす。

「言わんこっちゃない」

 墓守にとってはそこまで寒いわけでもないが、サクラが病み上がりというのもあるのかもしれない。あとは慣れの問題だろう。

 寒がるサクラの姿を見た墓守はすぐさま落ちた衣類を持ち上げると、サクラの体にかけてやる。そんなにうまくかけれはしないが、寒さを幾分軽減するには十分だろう。

「……ありがとう!」

 しばらくそのままぶるぶると震えていたサクラだったが、少し温まってきたのか、また先ほどのような満面の笑みに戻ると、元気よく感謝を述べてきた。

「ど、どういたしまして……」

 あまり慣れていない様子で、墓守は答える。

「うぅ、なにかお礼に手伝えたらと思ったんだけど……」

 と思うと次の瞬間にはしゅんとした顔になる。表情の転々とする少女である。

「そんなのはいいから、眠ってて」

 シャベルで洞穴の奥の方を指す。そこには先程までサクラの寝ていた簡易的な布団と火の勢いは弱まったものの未だ燃える焚火。

 それを見た後にサクラは視線を戻すと、

「えー?でもシャベルさんの作業みてたいなー」

 などと言う不平を口に出す。

「別に面白いものでもないよ」

 サクラはむぅ、とした顔でそこに居座り続ける。少女の意志は固いようだ。これ以上何をしても無駄であろう。

 そんな風に墓守は判断すると、小さくため息をつき、

「わかった、勝手にして」

 それだけ言うとシャベルをもって再び洞穴の外へ出ていった。その後ろには、また笑顔に戻ったサクラが、体育座りでこの決して綺麗ではない『ゴミ捨て場』を眺めていた。


 ふと墓守が気が付くと、太陽は随分西の方に傾いていた。

 できるだけいつもと同じようにふるまったものの、やはり誰かに見られているという状況はいつもといくらか違うからか、いつもの昼休憩を忘れて墓造りに勤しんでしまっていた。

 とはいえ、途中からはその視線もあまり意識しなくなっていたこともあり、洞穴の方へ久方ぶりに目を遣ってみる。

「あれ」

 そこにいたのは、こちらに元気よく手を振るサクラの姿、ではなく、

「寝てる」

 体育座りのまま、洞穴の壁にもたれかかって目を閉じている少女の姿だった。その顔は昨日までの苦しそうなものではなく、どこまでも安らかな寝顔だ。もちろん多少の寒さもあるが、あの調子ではよっぽど長い間晒されていない限り死ぬことはあるまい。こちらまで音は聞こえないが、なんとなくすぅすぅという寝息が聞こえてくるような気さえする。

 そんな彼女の姿を見ると、墓守はここらで今日の作業を終えることにした。昼休憩を挟まなかったこともあり、進捗としてはいつもとそんなに変わらない。むしろ落ちてくる死体が少なかったので、見た目的にはいつもよりも進んだとさえ言えるだろう。

「さてと」

 シャベルを肩に担ぐと、洞穴の方へ向かう。入口に辿り着くと、少女の前にしゃがみ込んだ。

「おーい、起きてる?」

 声をかけてみる。しかし、サクラは安らかな顔のまま、微動だにしない。耳を澄ますと予想通りすぅすぅという寝息が墓守の耳をくすぐる。

 外気にさらされている顔は白いが、すぐに死にそうな様子はない。そのうち目覚めるだろうと判断すると、墓守はもう一枚布を全身に掛けると、洞穴の奥へ歩いていった。

 そこにあった焚火は、火の勢いはかなり弱くなっているものの、未だ燃え続けている。こんなに長く燃え続けるわけが普通ないので、恐らくサクラが洞穴に残っている木の枝などを定期的に入れていたのだろう。眠ってしまってから放置したと思われるので、意外とそんなに長くは寝ていないようだ。

「そういえば」

 この火を絶やさないように、常に見張っているわけにもいかない。けれどもサクラにはこの火のような暖かさが必要だ。つまり定期的に火を起こす必要がある、という事をふと思う。

 少なくともサクラがすっかり元気に戻るくらいまでの間は、確実に火の暖かさが必要である。

 そのように判断した墓守は、太めの枝を一本手に取る。その先に布を適当に巻き付け、焚火に近づけて、それに火をつけた。

 即席の松明の完成だ。

 それを手に、墓守はさらに洞穴の奥へ向かう。その先にあるのはいくつもの遺品が転がっているゴミ捨て場。

 ここに来た目的は前と同じだ。

「ライターは、ないかな」

 もしくはそれに近しい、とりあえず火をつけられる何か。前回ここを訪れた時には光源もなく、真っ暗闇の中で記憶を頼りに手探りで探さざるを得なかったため、手間も時間も食ったが、今は手に松明が握られている。

 松明の火がゴミ捨て場を明るく照らす。

「~~♪~~~~♪」

 墓守が口ずさむ曲に意味は無い。なんとなくどこかで聞いた誰かの曲が口を突いて出ただけだ。しかし、そんな彼女の様子は傍目にはとても上機嫌に見えた。

「あ、あった」

 目的のものはすぐに見つかった。記憶に鮮明に特に残っているわけでもない。けれども、松明の明かりに照らされて探索するゴミ捨て場と、己の記憶を照らし合わせると、なんとなくどこに何があるのかがわかった。

 ライターは一つだけではない。使い捨ての簡易的なライターも、上等なライターも、たくさんのいろんなライターがあった。ほかにもマッチなど。その物たちに直接の共通点はないが、持ち主がいないという点では共通している。

 その中からまだ使える物をかき集めると、墓守は布に包む。

 一度、それだけ手を合わして。

「使わせてもらうね」

 包んだ布を持つと、墓守は寝床の方へと歩いていった。


 入口の方へ戻ると、サクラは目を覚ましていた。

「あ、シャベルさん、火の棒持ってるー!」

 松明を手に持って帰ってきた墓守を見て、サクラは声を上げた。

「危ないから触ったちゃダメ」

 簡潔にそれだけ言うと、墓守は松明を焚火に投げ入れる。それを見たサクラは、伝説の炎の剣がぁ、などと宣っている。

 その様子を淡々と眺めた後、墓守はライターを詰め込んだ布を降ろした。

「コレ、火を起こすときに使ってね」

 布が開き、中には古ぼけてはいるものの、ところどころ光が反射して輝くそれらを見て、サクラの目は輝き始める。

「綺麗だねぇ……」

 感嘆とした様子で呟く。

「そう?」

 墓守にとってはそれが綺麗という心はあまり理解できなかったが、炎の明かりを反射して輝くそれらに、何かしらの美しさを感じたのであろう。

 試しに墓守は、その中から一つを手に取り、着火してみる。

 カチ、と音がして小さな火が灯る。

「あ!これ火がつくんだ!すごいすごいっ!」

 火がついたライターを見て無邪気にはしゃぐサクラ。どうやらこれらのものが火をつけるものであることという事自体知らなかったようだ。

 サクラもライターを手に取ると、着火しようと試みる。

「えーっと?こうすればいいのかな……?」

 適当にライターを弄っているが、たまに着火口を危なげに触っていて墓守は内心ハラハラする。

「あ!」

 短い声とともに、ライターが着火した。

「火だよ、火!着いた着いたーっ!」

 自分で火をつけてみてさらにはしゃぐサクラ。それはいいものの、少女が新しく覚えた火遊びに夢中になって、とんでもないことを起こすんじゃないかという別の心配が墓守の頭には浮かんでくる。

「危ないから……」

 ほどほどに、と墓守が注意しようとしたとき、サクラは自分からライターの火を消してその場にそっと置いた。

 そこにいたのは、先ほどまでいた無邪気な少女ではなく、儚げに笑う独りの少女だった。

「ね、不思議だね。火って、こんなに暖かいのに……」

 その言葉も尻すぼみに消えたけれども、墓守は続く言葉をなんとなく想像する。

 それは、きっと――。

 墓守は己の心配が杞憂であったと察して、

「……そうだね」

 それだけ応えた。


「あ、そういえば、お腹すいたねー?」

 というかシャベルさんは何か食べてるの?などと言いながら、サクラはにへへとはにかんでこちらの方へ視線を向ける。正確には、昨日まで山菜などの食料が入っていた布袋を。

 当然、今はそこには何もない。

「あー……」

 墓守はどうしたものか逡巡する。洞穴の外を見ると、もう外は真っ暗になっている。顎に手を当ててしばし考えこんだものの、

「行くか……」

 多少悩んだものの、答えは最初から決まっていた。

 シャベルを担ぎ、洞穴の外へ向かう。

「ん?シャベルさんどこ行くの?」

「えっと、食料集めに」

 サクラの言葉を待たずに、墓守はさっさと外へ出る。背後からは、待ってよー、などぶうぶう不満を言う少女の声が聞こえてきたが、それは無視して墓守は歩みを進めていった。


 しばらくして帰ってきた墓守を出迎えたのは、待ちくたびれたのか安らかな寝息をたてながら横になっている小さな少女と、消えかけて燻った焚火の後だった。

 特に冷える夜を乗り切るために、拾ってきた落ち葉や枝を焚火に入れる。しばらくすると落ち葉に火が付き、その勢いを増してきた。

 ちなみに採取した食料は、次の日の朝ご飯となって無事、消費された。


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