無人の捨て場
16回くらいで最終回です!とりまやっていきましょうー!!!いぇーーーい!!!フッフーッ!!!隔日で行くぜぇッッ!!!
カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ。
石を重ねる心地の良い音が静かに響き渡る。誰もいない、大きな穴に。
ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。
しばらく後には、土を思いきり掘る音が。ただ静かに。人の気のない、大穴に。
そこには生者など誰一人としておらず、死者も、『遺体』ではなく、ただの『死骸』として、音もなく身を投げ出しているだけ。
その生に意味などなく、その死に価値などなく、生者は無慈悲に切り捨てられ、死者は無残に打ち捨てられる。
誰も見向きもしない、ただただ無為な『ゴミ捨て場』が、そこにあるだけだった。
誰も、いない。
人の影など、誰一人として。
彼女はそんな中で独り、シャベルを振るっていた。目深に真っ黒なフードを被り、隙間から真白な髪と黒い眼差しを覗かせて。
その様は死神か、もしくは守り人のような。
彼女の行為に意味などない。誰も認めてくれはしない。
それでも、打ち捨てられた死者を弔うため、その大穴の底に人間大の穴を掘り、彼らを埋める。その上に、墓標の代わりに石を積み上げる。
それが彼らにとって意味のあることとは思わない。
それが自分にとって意味を成すこととも思えない。
それでも、シャベルを振るう。穴を掘る。死者を埋める。墓石を積む。
ただただ、己の内から出でる強迫観念に駆られて、彼女はきっと明日も、墓を掘る。
そんな彼女は、正しくその『墓』の、『墓守』だった。
* * *
墓守の朝は早い。尤も、彼女が目覚めるとき、大穴の底からは日を見ることは叶わず、白んできた空からなんとなく早いのだろうなと判断しているだけの話ではあるが。
彼女が大穴の外に出ることはできなくもない。そこまで深い穴というわけでもない。よじ登ろうと思えば簡単に登ることができるだろう。ただ、彼女にその気はなかった。必要に駆られない限り大穴の外には出ない。そして、その「必要」というのも、きっと永遠にやってこない。だから、彼女の居住地はその『ゴミ捨て場』たる大穴であり、そこが彼女の生活圏のすべてだった。
むくり、と寝床から体を起こす。適当な枯草を集めて盛っただけの、お世辞にも出来栄えがいいとは言い難い寝床だ。枕元には手の平大くらいの灰色のごつごつとした石が置かれている。ガラスでも含まれているのか、表面は少しキラキラとしている。この硬い寝床に寝ることに、初めの頃は体も少しばかり痛いこともあったが、今ではもう慣れっこだ。むしろ安心できるとさえ言える。
「……ん」
上半身を起こした状態で大きく伸びをし、辺りを見回す。
暗い洞穴。頼りになる明かりは入り口から差し込む光だけで、周囲はうっすらとしか見えない程度に薄暗い。ろくに整備もされていない洞穴の壁には、時々音もなく虫が走る。
大穴の底にある、小さな横穴。上からは見えづらく、この存在を知る者はほとんどいない。そこが、墓守の就寝兼申し訳程度のプライベート空間だった。
この穴自体は最初からあった。少なくとも墓守がこの大穴にやって来た時からずっと。だから、自然にできたものなのかも、人工的に造られたものなのかもわからない。仮に人工的に造られたとしても、壁は浸食され、でこぼことしており、自然の洞窟と遜色ないものとなっていた。
ゆっくりと立ち上がり、洞穴の外へ出る。すると、目の前には積まれた平たい石が二つ横に並んで出迎えてくれる。ちなみに、これに積まれている石の数は五つと三つだ。そこに対した意味は無い。今まで暗い場所にいたおかげで、いくら朝の柔らかな日差しが、さらに大穴の周壁で遮られているとはいえ、一瞬、眩しくて目を細める。それでもすぐに縮瞳して、その明るさに慣れる。毎日のことでもあり、その順応は速いものだ。
そして、大穴を見渡した。
まずは上から。白んできた空は雲一つなく、西の空はまだ少し暗いけれども、一日の始まりが快く始まることを知らせてくれている。また、高い空はなんとなくさっぱりとした気分にさせてくれた。
少しだけ視線を下げる。大穴の壁は所々赤黒く汚れているものの、それはいつも通りだ。壁の淵の方は朝日を受け、くすんだ土の色が明るく光っている。その分根元の方に目をやると、暗い影が落ちて、その辺りになってくると苔が生し、それは地味なこの大穴にある種、彩を与えていると言っていいだろう。
そして最後。大穴の底に視線を向ける。墓守の彼女がいるところと同じ深さだ。そこには――。
「また今日も、か……」
そこに広がっていたのは、多くの死体。流石に穴底一面に広がるほどではないものの、人の死体が数多く捨てられていた。まるで生ゴミのごとく。
その光景は、やはり『ゴミ捨て場』と呼ぶのに相応しかった。
そうして、墓守の一日が今日も始まる。目の前の死体の海を目にして、シャベルを手に取る。そうして、一つ目の墓を掘り始めるのだ。
ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。
カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ――。




