3.恩人との別れ
俺がエイシュと出会い、2年が過ぎた。
長いかと思われたが、案外あっという間だった。
エイシュには色々と教えてもらった。この恩は絶対いつか返そうと思う。
「レイ、この道を真っ直ぐ行けばヴァンテント公国に着く。中に入るには身分証がいるが、この受験票を見せれば入れてもらえるだろう。それじゃあ、私は北へ向かうから、しばしお別れだ。」
「エイシュ、本当にありがとう。あんたがいなかったら、俺はもうこの世にはいなかっただろう。この礼はいつか絶対返させてもらう。」
エイシュは少し笑って、
「ああ、期待して待ってるよ。」
「じゃあな。」
俺はエイシュと別れ、ヴァンテント公国へ向かった。
ヴァンテント公国はヴァンテント公爵家を中心とする貴族が政治を執り行う国だ。基本貴族中心の国家ではあるが、実力があればそれなりの地位につける。
俺は貴族の子供たちも通うハイエント学院の試験を受けることになっている。この学院の試験内容は簡単で、魔力量を量るだけだ。元々の魔力量の多い俺なら大丈夫だろうとエイシュも言っていた。
試験は今日の午後から、合格発表は明日という風になっている。
俺は公国の入口の門で門番に受験票を見せて、無事入国が完了した。
試験開始まで少しあるので、場所を確認しつつ街中をふらついてみる。
街はなかなかに活気に溢れていた。自分と同じくらいの子どもは試験を受けるために来ている人が多そうだった。
街には商業施設が多く、武器屋や本屋など色々な店があった。試験が終わったら、入ってみるのもいいかもしれない。
そうこうしていると、丁度いい時間になったので学院へ向かう。
俺が到着した時には、既に大勢の人で溢れかえっていた。
人の波をかいくぐり、受験番号に応じた試験会場へ向かう。会場には50人ほどの人がおり、中央には大きな水晶が置いてあった。
俺はエイシュに言われたことを思い出しながら試験開始を待った。
少しすると、男の教師が入ってきた。
「全員揃ってるな。それでは試験を始める。」
入学試験の始まりだ。