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最強二人の王都生活  作者: 御手洗団子
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第四話朝から喧嘩

「起きなさい」


 …誰だよ。俺の安眠を妨害する奴は。


「起きなさいと言ってるでしょう?」


 もう、うるさいな。昨日は疲れる事が多かったんだから、今日ぐらいぐっすり寝させてくれよ。


「しょうがないわね。凍りなさい」

「何してんだお前」


 え?こんな起こし方ありますか?普通揺さぶったり、叩いたりして起こすもんじゃないの?ねぇ?しょうがないで幼馴染を凍らそうとすんじゃねーよ。


「あら、おはよう」

「おう、おはよう。ってそうじゃねーよ」

「何かしら。こんな美少女を朝から拝む事ができるなんて。あんた今日の運、今ので使い尽くしたわよ」

「返却を要求する」

「残念ながらその権利はあんたにはないわ」


 俺にはあらゆる権利が備わってねーな。


「…今何時?」

「十時よ」

「あと一時間は寝れるじゃねーか」

「一時間と言わず今からずっと寝ててもいいのよ」

「あと一分で支度するから待ってろ」


 幼馴染を殺そうとする事は日課か何かか?村にいた頃から毎日のように殺されかけてたけど。


「…おい、聞いてたか?支度するから待ってろって言ったんだ」

「ええ。だからあんたの部屋で待ってるじゃない」

「今すぐに俺の部屋から出ろ」

「どうして?私は別にサハギンに欲情するような特殊な性癖は持ち合わせてないから、何も心配する事はないわ」


 …あー、朝は頭が働かないから何もツッコミが出てこない。俺は基本的に夜型なんだよなー。


「分かった」


 あー、今日は朝から暖かいから半袖でいいか。


「…ちょっと私の部屋に忘れ物してきたわ」

「そーか。支度できたら言うわー」

「……」


 今日は寮に荷物置きに行くんだっけか。


「支度できたぞー」

「分かったわ」

「ほれ」

「何かしらその手は?お金を恵んで欲しいの?」

「そこまで貧乏じゃねーって言ったろ」

「そうだったわね。あなたの顔から貧乏感が滲み出てたから。ごめんなさいね」


 ここまで謝る気が見られねー謝罪もなかなかないな。


「ちげーよ。荷物持ってやるって事」

「…あら?ようやく私の下僕としての意識が出てきたのかしら?」

「ちげーよ。その荷物重いだろ?」


 昨日持ってたけどめちゃめちゃ重かったからな。女のこいつにはきついだろ。


「あんたに荷物を預けるのは物凄い不安なんだけど」

「え?なんで俺に対する信用度そんなに低いの?ねぇ?なんで?」

「自分の胸に手を当てて考えなさい」


 心当たり一つもないんですけど?


「……」

「おっと。…相変わらず重いな」

「何か物がなくなってたら殺すわよ」


 俺への信用度が地に落ちてるな。えー?別に村にいた頃から紳士的な態度で接してきたと思うんだけどな?


「ほら。行くわよ」

「あいよ」


 今日は何事もなく終わるといいけどなー。


「今日は寮にまず行くんだよな」

「そうね。そこから学校の施設の下見をした後、時間が余ってるなら冒険者ギルドに行こうと思ってるんだけどどうかしら」

「まぁ、何も異論はねーよ。んで明日からは冒険者として活動するのか?」

「そうなるわね。路銀もそろそろ底をつきそうだから」


 世知辛いなー。村から出るとこういう弊害があるのか。


「昨日の自称王子に出会わないようにしたいな」

「そうね。まぁ出会ったら下僕が何とかするでしょ」

「いやまぁ何とかするけど」


 俺=下僕と言う方程式がもうこいつの脳内で成り立っているみたいだな。


「あ、あいつらです!ボス!」

「…もう一つの方だったみたいね」


 あらー。昨日の夜のチンピラの方か。


「おい、そこの女!」

「呼んでるぞー」

「私を呼んでるとは限らないんじゃないの?」

「止まれ!そこの赤髪の女!」


 あー、完全にこいつだな。


「…何かしら?」

「おお、すげー美人じゃねーか」

「気を付けて下さいよ親分。凄い魔法使いなんですから」

「魔法使いって言ったってまだ十そこそこじゃねーか。そんな小娘に何ビビってんだよ」


 おいおい、見事なまでに三下のセリフだな。


「もういいわ」

「あん?」

「やってしまいなさい、下僕」

「えー俺がか?」


 昨日みたいにお前が全部凍らせちまえばいいじゃねーか。


「そんなガキに何ができるってんだ?!」

「そんな地味なやろー、一発で伸しちまうぜ!」


 おいおい、俺が地味だからって好き勝手言いやがって。あんま調子乗ってっと殺しちゃうよ?


「はぁ、仰せのままに」

「ん?」


 まぁこんな奴ら相手にスキルを使うまでもないか。


「なんだお前無造作に近づきやがって。ぶん殴られに来たのか?!おらぁ!」

「ほい」


 そんなテレフォンパンチ当たるかよ。


「やっちゃいなさい」

「りょーかい」


 少しだけ手に力を籠める。


「があああああ!!!」

「親分?!」


 村にいた頃から握力だけは異常に高かったんだよなー。しかもスキルも何も使ってないのに。

 五歳の頃から石ぐらいなら赤子の手を捻るように握りつぶせたなー。…いや、赤子の手を捻るってよく考えたら引くほど外道だな。


「えい」

「ぐあああああああ!!!」


 あら、チンピラの手がグロ指定入るような見た目になっちゃった。


「てめー!親分を離しやがれ!」

「おっけー」

「ああああああ!!」


 治るまでは物に触れただけで激痛が走るだろうなー。


「てめー、俺達が誰なのか分かってんのか?!」

「知ってる?」

「知らないわね」

「知らなかったわー」

「ふざけてんじゃねー!!」


 いや、ふざけてる訳じゃないんですけどね?


「俺達は泣く子も黙る、ブラックファングだぞ?!」

「聞いた事ある?」

「ないわね」

「なかったわー」

「いい加減にしろ!!」


 いや、昨日王都に来たばっかだからなー。そりゃ知らないわ。


「そのー、ブラックパンツ?だっけ」

「ブラックファングよ。どこのバカが下着をパーティー名にするのよ」

「あ、そうそう。ブラックファングだか何だか知らねーけどさ。やるってんならかかって来いよ。いつでも相手になってやるぜ?」

「…てめー。後悔することになっても知らねーぞ」


 そんなもんこっちも知らねーよ。


「ま、こっちには未来の英雄候補様がいるからな」

「何で私が戦う事になってんのよ。下僕なんだからあんたが袖を払いなさいよ」

「なんで俺が裾を直さなきゃなんねーんだよ」

「誰が短足よ。私は袖を払いなさいと言ったのよ」

「はぁ?俺は服屋じゃねーぞ」

「…はぁ」


 なんでこいつそんな疲れた顔してんだ。てかさっきのチンピラ共、目を離した隙にどっか行ったな。


「とりあえず行くか」

「そうね。ったくくだらない事で結構な時間を削られてしまったわね」

「そーな」

「それもこれも私が女神過ぎるが故に起こってしまった事なのよね。…まったく。我ながら罪づくりな女だわ」


 初めて聞いたぞ。女神過ぎるって言う形容詞。


「あんたも女神の下僕としてもっと精進しなさい」

「結局その結論になるのかよ」

「当り前じゃない。あんたを王都まで連れて来たのは私なのよ?」


 無理やり連れてこられたんですけどそれは?


「むしろ光栄に思いなさい。私の下僕として生きられることを」

「下僕じゃねーって何回言えばいいんだよ」

「え?女神の下僕で光栄ですって?嬉しい事言ってくれるじゃない」


 人の話を聞けよ。


「あんたに足りないのは私への信仰心ね」

「持ってたとしたらそれはそれで問題あるだろ」

「大丈夫よ。生まれた時から問題まみれじゃないの」


 それは俺の母と父も貶してる事になるんですが。


「それから後は顔ね」

「整形しろと?」


 いや、こいつの隣にいるからダメに見えるけど、中の中はあるからな?


「その目が全てを台無しにしてるわね」

「まぁ、しょうがない」

「そうね。しょうがないわね。少し高いけど義眼と言う手もあるわね」

「一切の妥協を許さないな」

「当り前でしょう?下僕の格は女神の格にも影響があるもの」


 自分の価値を上げるために幼馴染の目を抉ろうとするとは。…これは、こいつと同じ村に生まれた自分の不運を恨むしかないな。


「こっち向いて目を開けなさい」

「てか冗談だよね?本当に幼馴染の目を抉る訳ないよね?ね?」

「大丈夫、痛いのは初めだけよ」

「本気なんですけど。この人本気なんですけど」


 え?こんな人の往来がある所で?


「成功確率は…。まぁ、頑張りなさい」

「え?え?不穏なんですけど、その間は何?ねぇ?」

「強く生きなさい」

「やーめーろー!はーなーせー!」

「…ふふ、冗談よ」


 いや、割と本気のトーンだったんですけど?


「流石に、道の真ん中でそんな事はしないわよ。二割冗談よ」

「八割本気じゃねーか」

「ほら、行くわよ」

「はぁ…、あいよ」


 ったくこいつの相手をしてたら身がいくつあっても足りないわ。

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