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最強二人の王都生活  作者: 御手洗団子
16/18

第十六話精霊王から頼み事

「それでは、特に予定もなくここに来たと言う事でいいですね?」

「なぁ、今更取り繕っても無駄だと思うんだけど?」

「そうっすね。俺達はさっきの痴態を見てる訳っすから」

「…ねぇ、鈍器の様な物ってなかった?」


 こいつヤベーぞ。俺達を殺して口封じしようとしてやがる。そこまで世間体が大事かね。


「…はぁ。どうやってここに来れたの?」

「こいつのスキルだ」

「自分は【感知】って言うスキルを持ってるんすよ。それで、魔物の位置を探ってる時に、この位置に何か変な反応があるって分かったんすよ」

「それで?」

「兄貴が「とりあえず調べに行くか―」って言ったんでここに来たんすよ」


 おい、さり気なく兄貴に責任を押し付けんなよ。…いやまぁ、別に構わんけど。


「…なるほどね」

「って事で。する事もないし帰るわ」

「…え?」


 ゴブリンの討伐とバーニングバードの討伐があるからなー。

 昼飯休憩もあるから、今のうちにバーニングバードを倒しておかないといけないんだよなー。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!何帰ろうとしてるの?!」

「え?だってここに俺達用ないから」

「もともと魔物討伐のためにこの森に入った訳っすからね。時間が勿体ないっす」

「この空間内は時間の流れが遅くなるのよ!!」


 …へー。なるほど。ここにいる間は時の流れが遅くなってるから、長期滞在してもそれほど時間が経ってないって事なのか。


「それってどれぐらいなんだ?あっちの何時間がこっちの何分みたいな」

「あっちでの一日がこっちでの一分ね」


 って事はこっちの時の流れはあっちの、一/一四四〇って事だな。


「それって凄い事じゃないっすか?」

「まーな。…あ、ちなみにだが年をとる速度はどうなんだ?」

「それも遅くなってるわよ」


 年も取り辛いって事か。最高じゃん。俺ここに住むわ。…tって訳にもいかないんだよな。


「んじゃ」

「ちょっと待って!!ほんとに待って!!」

「なんだよ」


 帰りたいって言ってるのになんで邪魔すんだよ。「外に用事があるからこの空間から出たい」って言ってるじゃん


「ここは精霊の園なのよ?!!二人とも冒険者なのよね?!!」

「まぁ、そうだな」

「そう…っすね」

「だったらなんで出ようとするのよ?!!おかしいでしょ!!」


 …おかしいって言われてもな。

 俺、まだ冒険者になって日が浅いし、何なら足首までしか浸かってないからな。って事は俺はまだ足首しか冒険者じゃないって事だな。


「精霊の園って言うのは、冒険者だったら一度は見つける事を夢見る、言わば冒険者の夢みたいなものなのよ!それなのに何の感動もなく、「用事があるから」ってここから出ようとするなんて。…他の冒険者に申し訳ないとは思わないの?!!」

「思わないなー」「思わないっすねー」

「冒険者の鑑にもおけないわね!!」


 そもそも、手っ取り早く就職できて、欲しい時に金が手に入って、楽な仕事って言うのに当てはまるのが冒険者しかなかったから冒険者を選んだだけであって、これ等に当てはまる他の職業があったらそれを選んでるんだよなー。

 …だって冒険者って、危険じゃない?


「よし、んじゃ帰るぞー」

「分かったっす」

「ちょっと待って!待ちなさい!待ちなさいって!ちょっと!ほんとに!ほんとに待って下さいー!!」

「ちょっ、分かった!分かったから!」


 分かったからそんなに必死になって俺の服を掴んでこないで!伸びちゃうから!!


「…で、何?」

「あのー。お二方にお願いがありまして」

「お願い?」

「はい」

「…別にそんなに畏まんなくていいぞ」

「むしろ畏まられると困るっす」

「あ、そう。ならこの話し方でいくわね?」


 …もうちょっとだけ畏まった話し方の方が良かったかな。いきなりそんな砕けた話し方に変えられると、「ん?なんか演技してたのかな?」って疑っちゃうから。


「で、お願いってのは、具体的にどんな物なんだ?」

「…この国が神獣様を討伐しようとしてるのは知ってるかしら?」

「ああ、さっき聞いたが」

「近々討伐隊を派遣するって言う奴っすよね?」

「そう、それ。それについてなんだけど私達に味方してくれないかしら?」


 ん?どう言う事だ?仮にも神獣って言われてるんだったら、討伐隊なんて鎧袖一触できるもんだと思ってたんだが。


「…もしかして神獣様に何かあったんすか?」

「…実は今、神獣様が重たい病気にかかってしまってるの」

「なんで?神獣だったら病気とかかかんねーんじゃねーの?」

「そうっすよね?仮にも神って入ってるっすからねー?」

「私もそう思ってたんだけど、…違うみたい」


 うわー。まじかよ。このままじゃ、ほんとに討伐されちまってなんか王様が調子乗るじゃん。 

 …なんか腹立つわー。


「で、どんな病気なんだよ」

「風邪…なのよね」

「は?」「へ?」


 は?風邪?重度の魔力中毒とか、体内魔力汚染とかじゃなく、風邪?

 え?それぐらいでヤバいって言ってんの?

 てかさ。風邪だったら三日ぐらいで治んだろ?


「…神獣様。今まで病気とかかかった事なくて、今も布団で寝込んでて。…私、心配で心配で」

「病気になってから、今日で何日目だ?」

「…二日目なの」


 おい!いやおい!二日ってなんだよ。後、一日我慢したら治るだろ。

 何?お前らバカなのか?それとも何?ほんとに神獣がヤバい状況なのか?

 俺の知ってる風邪とは、明らかに心配度が段違いなんだが?


「神獣様のあんな姿。私、とても見てられない……!」

「…ちょっと神獣の所まで案内しろ」

「へ?」

「俺が治してやるよ」

「ちょっと、何言ってるの?!神獣様でも治せなかったのよ?!あなたが治せる訳ないじゃない!!」


 神獣でも治せなかったのか。んじゃ、やっぱりただの風邪じゃねー可能性があんな?

 でもまーなんとかなるでしょ。


「いいから。俺を信じろ」

「そうっすよ!!兄貴は人類最強なんすから!!何も心配する事はないっす!!!!」


 人類最強と病気治せるのって関係なくね?


「…分かったわ。そこまで言うのなら、神獣様に合わせてあげる」

「ありが」

「ただし!!」


 …なんだよ。声でけーだろ。さっきのしおらしい雰囲気どこに行ったんだよ。


「神獣様に何かしたらただじゃおかないからね?!!いい?!!」

「分かった分かった。分かったから早く連れていけ」

「そもそも何かできるような相手じゃないっすよ」

「それじゃ、行くわよ」


 …あれ?テレポートで行くんじゃねーのかよ。


「どこに行くんだ?」

「あんたが神獣様の所に案内しろって言ったんでしょ?!!神獣様の所よ!!!」

「でも神獣様のいる所って、反対側じゃないのか?」

「…なんであんたが神獣様のいる所を知ってるのよ?」


 おっと?なんですか、この状況は?逆鱗に触れたって言うか一触即発って言うか。


「向こうの方から視線を感じるんだよなー。だから向こうかな?って思ったんだよ」

「視線を感じる…なるほどね。分かったわ。今向かってるのは、ワープホールよ」

「ワープホール?」

「それで神獣様の所に行くんすか?」

「そう。ただ、私が認めた者しか入れないようになってるから、今入れるのはあなた達だけよ」


 …そんな重要そうな情報教えてもいいのかよ?

 もし、俺が王国の工作員だったら、神獣の所まで体力を温存して行ける方法を知ってしまった事になるぞ。

 まぁこの国の工作員なんぞ、、土下座されても断るがな。


「それって大丈夫なんすか?結構重要な情報なんじゃ?」

「大丈夫よ。連れて行った後に、あなた達の記憶を消させてもらうから」


 …あー。多分それ俺効かないタイプの奴だわ。

 まぁ、口は堅い方だから安心してくれ。


「ここが転送の祠よ」

「あんまり祠って感じはしないっすけど」

「祠過ぎると人間たちにバレちゃうかも知れないでしょ?」


 祠過ぎるってなんだよ?どう言う状態を表してる形容詞なんだよ?


「それじゃ、行くわよ?」

「ちょっと待って下さいっす!!まだ心の準備が!!」

「これに乗んのか?」

「そうよ。行くわね?」

「待って下さいっす!!俺、全然心の準備ができてないんすよ!!」

「よっと」

「ちょっと待っ!!」


 うわー。すげー光だな。眩し過ぎて直視できねーな。辺りの状況が全然分かんなくてちょっと不安なんだけど。

 これって、人気のない所に連れてかれて置いてけぼりにされる可能性ってないか?…まぁ、気にしたら負けか。連れてかれてもあいつがなんとかするだろ。


「っと着いたわよ」

「おお、やっと光が収まったか」

「兄貴ー!今どう言う状況っすかー!」俺、あの精霊に目をやられちまって、何も見えない状況なんすよー!」

「りょーかい。で、神獣ってのはどこにいんだよ?全然見えねーんだけど?」

「上よ」

「…上?」

『よくここまで来たな?人間。よろしく頼むぞ?』

「…よろしくな」


 神獣って鳥なのかよ。


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