第十四話一日の始まりから冒険出発
「起きるっすよ!!兄貴!!」
…誰だよ。俺の安眠を妨害する奴は。
疲れてるから今日はもう少し寝させてくれよー。
「もう十時っすよ?ほら、早く起きるっす!!!」
うるさいなー。そもそも俺をこんなに疲れさせた原因はお前でもあるんだからね?
「しょうがないっすねー。…後五秒で殴りますよー」
「ちょっと待てよ」
「あ、おはようございます!!兄貴!!」
いや、おはようございますとかじゃなくて、寝てる人を殴って起こす奴がいますかね?何もしょうがない事ないからね?
凍らせて起こす人ならいましたけど、あれは例外中の例外ですから除外です。
「おはよー。んで、こんな朝っぱらから俺に何の用だ?」
「あの貧乳女に聞きました!!今日、お金を確保しないとまずいらしいっすね!!!」
…今は、あいつがいないからいいけどあいつの目の前で「貧乳女」って言ったら、問答無用で「こんがり焼けました!!」だぞ?
てかそう言えばそうだったなー。流石にそろそろ起きないとまずいか。
「って言うかあいつは?」
「もう学校に出発しましたよ」
「あ、そーなん?じゃ、俺達もさっさと行くか」
「それにしても兄貴ってアウゼリア国立魔道学校に合格してたんすね」
「あー。あいつから聞いた?」
「そうっすね」
あー。って事は結構この学校って有名だったんだなー。村にいた時、一ミリも知らなかったわ。
「これってすげーの?」
「すごいっすよ!!」
「有名なの?」
「そりゃもう有名っすよ!!」
「へー」
「全然興味ない反応っすね」
まぁなー。入学する側からすりゃ、めっちゃどうでもいいわ。
「そんな事より行こうぜ」
「…そんな事よりって、…自分はもう準備できてるんで、後は兄貴だけっすね」
「りょーかい。準備するから、部屋から出ててくれ」
「分かったっす」
金策のために依頼をこなすって言っても、俺ができる事って言ったら、まぁ魔物退治位だからなー。
「…あのー、話聞いてました?部屋の外に出ててくれって言ったんだが?」
「はい。ですからちゃんと兄貴の部屋から出てますよ?」
いや、出てるけどね?出てるは出てるんだけど、ドア開いてたら意味ないでしょ。
なんのために外に出させたんだよ。
「ドアも閉めろ」
「…りょーかいっす」
なんで苦渋の選択みたいな顔してんだよ。
こんな地味顔野郎の裸なんて誰一人として興味ある奴いないと思うんだがな?
「準備できたぞー」
「りょーかいっす。それじゃ、行きましょうかー」
冒険者ギルドかー。今日は絡まれなければいいけどなー。
「ちなみに兄貴は何級なんすか?」
「俺?まだ最下位だけど」
「え?その強さでFなんすか?」
「昨日入ったばっかだからな」
「あー。なるほど」
て言っても、あんまり等級を上げる事に意味がないと思ってるんだよなー。
C級からは指名依頼もされるようになるし、そう言うのめんどくさいって感じるタイプだからなー。俺もあいつも。
「ちなみに俺はA級っすよ」
「へー」
「…全然興味ない感じっすね?」
まーな。A級冒険者って言っても、B級冒険者から成りたての奴から、なんでS級に行かないの?って言う実力の奴までいるからなー。
「で、お前はどうすんの?」
「何がっすか?」
「何がって。冒険者ギルドにいったらどうすんだよ」
「うぇ?何言ってんすか?」
何言ってんすか?って、普通の事言ってるだけだろ。なんでそんな「マジで何言ってんだこいつ」みたいな顔されなきゃいけないんだよ。
「何言ってんすかってお前さー。俺が依頼に行ってる間中、何するつもりだよ」
「何するつもりって、兄貴の依頼に付いて行くに決まってるじゃないっすか?」
決まってねーよ。お前はどこの世界の住人なんだ?
「何?付いて来るつもりなの?」
「なんで逆に付いて来ないと思ったんすか?」
「常識的に考えた結果だけど?むしろ常識的に考えて欲しいレベルなんだけど?」
「常識的に考えて付いて行くっすけど?」
だからそれはどこの世界の常識なの?
「逆になんで付いて行ったらダメなんすか?」
「うーん。王都に来てからほとんど一人になれてないからなー」
「でも俺が付いて行くともれなく【感知】が付いて来るっすよ?」
「確かに」
でも確かこいつの【感知】の範囲って半径十メートルじゃなかったっけ?
「あのさ、確か」
「兄貴が言わんとしてる事は分かるっすよ。要は範囲が少し小さくないって事っすよね?」
「あー。まぁ失礼な言い方だけど意味は合ってるよ」
「大丈夫っす。最大で半径一キロまでならいけるっす」
「…マジ?」
「マジっす」
半径一キロって相当だぞ?
「それって大丈夫なのか?」
「大丈夫って何がっすか?嘘ついてるとかっすか?」
「ちげーわ。無理してねーか?って事」
思っとくけど、半径十メートルから半径一キロって百倍違うからね?
「あー。そう言う事っすか」
「ああ。百倍にしてるって事は負担もでかいんじゃねーの?知らんけど」
「軽く説明するっすけど」
「ああ」
「半径十メートルって言うのは、常時展開できる範囲っす」
「あー。なるほど」
つまり常時展開はできなくなる代わりに範囲を伸ばす事ができるのか。
「んじゃ、頼むわ」
「りょーかいっす。…あ、なんか今のは俺の舎弟精神が満たされました!」
「なんだ舎弟精神って」
そんなの備わってるの絶対お前だけだろ。
「そう言う感じもっと出して欲しいっすねー」
「おう」
「それっす!!あ、着いたっすよ」
くだらない話をしてたらいつの間にかギルドに着いてたな。
「この時間はあんまり人がいないっすね」
「そーな。ま、とりあえず依頼見に行こうぜ」
「そーっすね!」
あー。結構依頼が無くなってるなー。まぁ昼頃だからな。冒険者がどう言う生活リズムを送ってるのかは知らんけど、流石にこの時間までには起きて依頼を受けるかー。
それにしてもいい依頼ねーかなー。ゴブリン討伐は昨日やったしなー。…まぁ、俺は妨害されてできなかったんだけどね?
「これどうっすか?」
「どれ?」
「これっす。ヒュドラ討伐」
「推奨ランクは?」
「Sっすね」
「Sっすねじゃねーよ
俺のランクFだって言ったろ?お前もAランクだし、どっちも受けられないじゃん。
後それ残念ながら昨日やったんだよ。
「じゃあこれどうっすかね」
「だからこれってどれ?」
「このゴブリン討伐っす」
「昨日やったわ」
「でも常設依頼なんで受けておいて損はないと思うっすよ」
「あー、併用して受けるのは確かにありだな」
目的の魔物も狩りつつ、ゴブリンも見かけたら討伐しておくって感じか。
いいな。ただあいつみたいに狩り過ぎて今日は換金できませんってなるのだけは勘弁だなー。
俺は同じ轍を踏まないからな。…別にこの轍は俺が踏んだ訳じゃないけどな。
「あ!これどうっすか?」
「だからー。どれの事言ってんの?」
「このバーニングバード討伐って奴っすね」
「ランクは?」
「Bっす」
微妙だなー。Bかー。まぁ、こいつAだしこいつに受けさせたらいいか。
「まぁやるかー。じゃ、受けてきてくれ」
「へ?」
「いや、俺F級だからこの依頼受けられないだろ?代わりに受けてきて欲しいって事」
「えー?お願いするんだったらもうちょっと兄貴っぽい言い方で言って欲しいっすねー」
兄貴っぽい言い方って何だよ?と言うか舎弟のお前がなんで兄貴である俺に指定してんの?
…いや、まぁ俺はイエスマンだからやるけどね?一応ね?思っとく分には思っとくよ?
「んじゃ、アッシュ頼むわ」
「わっかりましたー!」
言い方変えただけでそんなにテンション上がるかね?俺には分からんなー。
「依頼。受けてきました!」
「んじゃ行くか」
「はい!」
あ、そうか。今日はあいつがいないからテレポートが使えないのか。
うわー。めんどくせー。
「どうしたんすか?さっさと森に行くっすよ?」
「…俺より絶対あいつの方が適任だったろ」
…まじでめんどくさい。




