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最強二人の王都生活  作者: 御手洗団子
1/18

第一話村から王都へ

「ふぅ、…やっと着いたか」

「結構かかったわね」

「ああ。って言っても四時間馬車で揺られてただけだけどな」

「でも、そもそも村から出る事自体初めてじゃないの」

「そーな。んじゃま、さっさと行こうぜ」


 しっかし、無駄に賑やかなこって。お祭りでもやってんのか?うちの村とは大違いだな。


「お、あっちに空飛んでる奴がいるな。俺初めて見たわ」

「あそこにはエルフがいるわね。絵本で見た通りだわ」


 本当だー。いやー、王都ってすっげぇな。っと、あぶねー。本来の目的を忘れる所だったぜ。


「都に来て浮かれんのもいいけどさ。ここに来た目的ちゃんと覚えてるか?」

「当たり前でしょ?って言うかあんたも浮かれてたじゃないの」

「思い出したんならさっさと行くぞ」

「あ、ちょっと、待ちなさいよ」


 わざわざ俺達が村から出て王都に来たのは訳がある。と言っても別に村に仕事が無いからとか冒険者として一発当てるためとかそんなのじゃない。

 て言うか早く目的地に行きたいんだよね。両手のくそ重たい荷物を早くどうにかしたい。って言うか何でこいつの荷物まで俺が持つことになってんだよ。


「あー。ここ右だったか?」

「左よ」

「さっすがー。四つ持ち様は一味違いますわー。よっ天才」

「その棒読み、不愉快だから今すぐに止めなさい」

「へいへい」


 俺達がここに来たのは、ある学校に推薦入学するためだ。俺は面倒だから嫌だったんだが。村にいて魔物狩ってた方が楽でいいしな。ってか重いなこの荷物。何入ってんだよ。


「地図通りならそろそろ着くはずなんだが」

「あ、あれじゃないの」

「ん?」


 お、あったあった。いやー、しかし噂には聞いてたけど無駄にでかい校舎だな。


「ここがアウゼリア国立魔導学校ね」

「ああ、お前の言う通りここがアウなんちゃらで間違いない」

「アウゼリア国立魔導学校よ。ったく。これから通う学校の名前位覚えときなさいよ」


 ここが俺達が通う事になるアウ、アウ、……学校か。こんなに大きいとは思わなかったぜ。これじゃあ内部の構造(と名前)を卒業するまでに覚える事は無理そうだ。


「さて、それじゃ入りますか。まずは荷物整理のために寮に行かないとだな」

「そうね」

「ちょっと待ってくれたまえそこの綺麗なお嬢さん!」

「…何かしら」


 おいおい、何だか面倒な奴が声かけてきたな。まぁ、俺に話しかけたんじゃなくて隣のこいつに話しかけたんだけどな。…荷物重いしめんどそうだし、先寮に行ってたいんだが。


「一足先に、寮に行ってていいか?」

「ダメに決まってるでしょ。殺されたいの?」

「僕としては全然構わないよ。君と二人きりになれるからね」

「……用って何かしら?」


 おおう。物凄く嫌がった顔をしてんな。歴代嫌がりランキング(俺調べ)で言うとまぁ四位かな。ちなみにだが一位はと言うと、村の近くの森で魔物狩りをしてた時に、黒光りする油ギッシュなジャイアントゴキゴキングって言う魔物が現れた時だ。その嫌がりようが半端じゃなかったから、その魔物は俺が倒したんだけど。


「こんなにも美しいレディがいるのに声をかけないのは、むしろ失礼だろう?」

「…ロウ行くわよ」

「りょーかい」

「待ちたまえ!」


 こっちは忙しいんだよ。俺は早く寮に行ってこのくそ重い荷物を降ろしたいんだよ。

 ってか今初めて振り返ったけど、こいつ思ってたよりかっこよくないな。自信満々に話しかけるもんだからどんな奴かと思ってたけど、まぁ中の上、甘く採点しても上の下だな。


「君みたいな綺麗なレディにはこのような男は似合わない」


 いや、まぁお前も似合わないと思うが。客観的に見て。


「………はぁ?いやまぁ否定はしないけど」

「いやしろよ。そこはしろよ。幼馴染だろうが」

「幼馴染って言うか顔が地味って感じよね」

「よし、その喧嘩買ったわ」


 いや、顔が地味なのは俺も分かってるけど。分かってるけど人(特にこいつ)に言われるとやっぱ腹立つわ。


「この男が私に釣り合わないのは百も承知、…いや億も承知なんだけど」

「いいんだな?お前の枕が、例え様のないべちょべちょした物体になっててもいいんだな?」

「ったく、しょうがないわねぇ。この男が私に釣り合ってないのは千も承知なんだけど」


 …まぁ、百歩譲ってよしとしよう。俺の寛容な心に感謝するんだな!お前はもう二度と俺に足を向けて寝られないぜ。


「私の下僕は私が決めるわ。あんたに指図される覚えはないわね」

「おい、誰が下僕だ。誰が」


 さり気なく人を下僕扱いするんじゃない。


「…ふん生意気な女だ。が、まぁいいだろう。おいそこの地味な男」


 あれ、君さっき会ったばっかりだよね。え?そんなに殺されたいの?もー、先言ってよー。


「貴様にはその女性は釣り合わない。そこを退きたまえ」

「はぁ…、俺にこいつが釣り合ってねぇのは分かり切ったことだがな」

「そうね。十人中十二人が釣り合ってないって答えるでしょうね」

「二回答えてる奴が二人いんじゃねーか」

「あら、これでも随分譲歩した方なんだけど」


 …何で俺はこいつの荷物を持っているのだろうか。今から川に流しても遅くはないんじゃないか。


「…ふぅー。今ここで、てめーに言われなくても分かってるっつーの。余計なお世話だぜ。ボケが」

「村中の男に二回ずつ言われたものね」

「うるせーよさっきから」

「あらこんな綺麗な少女の近くに無料でいられるのよ?この位我慢しなさい」

「自分で言うもんじゃねーだろ」


 いや、まぁ美少女である事は否定しないが。それに、自(不本意だが)他共に認める地味な俺が、正攻法でこのレベルの美人と話すには、結構な額のお金を支払わないといけなくなるのは分かっている。だが、それでもムカつくもんはムカつく。


「僕を無視するな!」

「あ、まだいたんだ。完全に忘れてた」

「な、ふざけるのも大概にしろ!」


 おっとあぶねーな。人様に向かって物を投げるんじゃないよったく。どんな教育を受けてきたのやら。親の顔が見てみたいね。ん?なんだこれ?


「白い手袋?」

「そうだ!貴様!その女をかけて僕と勝負しろ!」

「お断りだバカ」

「なっ!?」


 受けるわけねーだろ。俺に何のメリットもねーじゃねーか。


「こいつは物じゃねーよ」

「そうよ。と言うか何勝手に景品扱いしてるのかしら?」

「分かったか?ほれ返すぜこの汚れた手袋」

「なっ、貴様ぁ!」


 うお!あぶねー野郎だな。いきなり切りかかって来るとは。


「てめー何のつもりだ?」

「僕はこの国の王子だぞ?!僕に楯突いた事を公開させてやる!」

「あら、あんた王子だったの。王子ってもっとキラキラしてるもんだとばかり思ってたわ。ごめんなさいね」

「貴様等ぁ!今ここでまとめて殺してくれるわ!」

「この地味な男と一緒にしないでくれる?不愉快だわ」「おいおい、こんな性格の悪い女と一緒にすんじゃねーよ。虫唾が走るぜ」


 止めてくれよ。性格の悪さが感染しちまうだろ?


「で、どーする?逃げるか?」

「何とかしなさい。私の下僕でしょ?」

「てめーが何もする気がねーって事はよーく分かったよ」


 ふぅ。王都初日から面倒だ。こんな事は今日限りにしてほしいもんだぜ。しかもこいつなかなか太刀筋が鋭くて避けるのがきついんだけど。てか荷物じゃまだわ!

 こんな所でスキルを使いたくはなかったんだが。………しょうがない。


「死ねぇ!」

「よっと」

「なっ、私の剣を腕で受け止めた!?」


 【不変】、俺の二つあるスキルのうちの一つだ。効果は対象を不変の存在にする。単純で明快な能力で実に俺好みだ。


「よっと」

「ごっ」


 曲がりなりにも王子様が出してはいけない声を上げて吹っ飛んでったな。いや、しっかしこの荷物重すぎ。邪魔だし疲れるしでもう今日は寝たいな。


「あー疲れた」

「寮に荷物置くのは明日にする?」

「…そうするわー」

「ほら、私が片方を持ってあげるわよ。感謝しなさい」

「はいはい感謝感謝って軽い方じゃねーか。自分の奴持てよ」

「いやよ。重いもの」

「重くしたのはお前だろうが」

「もう、さっきの自称王子のせいで時間がなくなったじゃない」


 無視してんじゃねーよ。…はぁ、つっこむ気力も失せたぜ。


「疲れた…」

「ちょっと、下僕の分際で何勝手に休憩してるのかしら?急ぐわよ」

「…りょーかい」


 …さっきのバトル不戦勝って事にして勝ちを譲ればよかったな。景品がいらなさ過ぎて涙が出てくるよ。


「なんで泣いてるのかしら?ああ、あまりにも私が美し過ぎて眩しいから泣いてるのね?」


 …村に帰りたい。

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