告げられる真実
滝崎が目を開けるとぼやけた視界に白いベットが映り、周りを見渡すと部屋の中に四つの人影が映った。次第に視界がはっきりしてくるとそこにはハジメとサンペイと髪で片目が隠れた青年と眼鏡をかけた大学生くらいの女性だと分かった。ここで自分が椅子に手足を縛られていることに気づく。
「起きたみたいだな、大丈夫か?手加減するようには言ったんだけど。」
ハジメが目を覚ました滝崎に問いかける。
「あなたたち!解放軍ね!これをほどきなさい!」
滝崎は四人に怒鳴りつける。
「この状況で元気なお姉さんだね。」
片目が隠れてる青年が感想を述べる。
「シキ、のんきな事言ってる場合じゃないから。」
眼鏡をかけた女性があきれたように青年に言う。
「サンペイ、あなたが連れて来たんだから、あなたがどうにかしなさい。」
眼鏡の女性はサンペイに鋭い視線を送る。
「そんなに怒らなくていいじゃんか、フタバ」
サンペイが眼鏡の女性にこたえる。
「あんた名前は?」
ハジメがほか三人のやり取りを無視して滝崎に尋ねる。
「あなたたちみたいなテロリストにおしえるか!」
滝崎が怒りを表に出しながら怒鳴る。
「何でそんなにキレてるんだあんた」
サンペイが素直に疑問を口にするとさらに滝崎が声をあげて怒鳴る。
「五年前のあの事件で、あなた達に父は・・ころされた!」
このセリフを聞いた瞬間、場が凍り付いた。四人はゴミを見るかのような目で滝崎を睨む。滝崎は四人からたたきつけられる殺気に声を失った。そして、ハジメがさっきよりも低い声で口を開く。
「お前の父親の名前はなんだ」」
殺意の雨の中、滝崎は精一杯の勇気を振り絞り、怒りと憎しみを込めて答える。
「滝崎 誠」
驚愕に四人の目が見開かれ、殺気が消えた。サンペイが驚きながら滝崎に向かって口を開く。
「本当にあんたが親父の娘・・・」
サンペイの口から親父という単語が飛び出し、滝崎はさらに憎しみの炎を燃やす。
「何が親父だ!」
サンペイは我に返り、ハジメに視線を送る。視線を受けたハジメは頷きほかの二人を見やる、ほかの二人も頷きはサンペイが口を開く。
「俺たちは親父を・・・・滝崎博士を殺してない」
「ウソだ!」
滝崎はすぐに感情的に否定する。その様子を見たハジメが視線で、他三人に退出するように促す。部屋を出ていくサンペイは心配そうに滝崎を見た後はじめを見る。視線に気づいたハジメは心配するなと首を横に振る。
「お互い、冷静になろう。滝崎博士の娘に手荒な真似はしたくない。」
ハジメはたしなめるように滝崎に語り掛けた。
「どの口が言うんだ!」
滝崎は時間がたって少し冷静になってきていたが親の仇の言葉に耳を貸す気はなかった。しかし、次のハジメの言葉で固まった。
「五年前の計画を立てたのは滝崎博士だ。」
ハジメは滝崎が固まっているのにお構いなしに、言葉を続ける。
「勘違いしないでほしいのは、滝崎博士が立てた計画は俺たちを脱走させることで人を大量に殺す計画じゃない。」
この言葉で固まっていた滝崎は再起動し、『どういうこと?』とハジメの目を見る。ハジメは滝崎の様子を見て話を続ける。
「滝崎博士は、泣いてる子供は放っておけない質の人じゃなかったか?」
滝崎は昔、父につれられデパートに行ったのを思い出した。泣いていた子供を見つけて、一緒に親を探していた。自分そっちのけで親を探すものだから自分も泣きだし父がオロオロしていたのを思い出し自然と笑みこぼれる。
「そうね、そういう人だった。」
それからハジメは一から自分の知るすべてを語った。語られた内容はとても酷いものだった。
「まだ世界がエネルギー資源枯渇問題が本格化していたころ、ある科学者が人間に流れる生体電流に目を付けた。人間の生体電流をより強いものにし、エネルギー資源にすることを提唱したんだ。もちろん倫理に欠くと他の科学者から大批判だった。でも当時エネルギー問題は深刻化しすぎていた。国はその科学者に秘密裏に研究を進めるように言った。その計画はHu電池生産計画と言われていた。」
滝崎は絶句した。ハジメの言うことが本当なら、自分たちが普段使ってる電気は。今の文明を支えているHuは自分たちと同じ人間だということになる。滝崎は胃の中のものを吐き出しそうになりながら、ハジメの話を聴く。
「その計画の実験体第一世代がオレそして、第二世代がサンペイ達だ。研究は進み実用化一歩手前まで来た頃、君のお父さんも研究に参加した。滝崎博士は、電気供給を職業にして俺たちに人権を与えるつもりだった。だけど、国や研究所の所長室長はそれを認めなかった。資源に人権などいらないと。滝崎博士はこの件で追い出されることになった。だから、滝崎博士はせめて俺たちを救おうとしてくれた。そして、五年前のあの事件が起きた。」
滝崎から言葉は無かった。というよりも話が壮絶すぎて脳の処理が及ばず言葉が出なかった。最後に付け足すようにハジメは語った。
「滝崎博士はとてもいい人だった。他の研究者はみんな俺たちを物としか見てなかった、でも滝崎博士は人として扱ってくれた。あいつらの名前を付けたのは滝崎博士だったしな。」
「あなたは違うの?」
やっと頭が回ってきた滝崎が素直に疑問を口にする。
ハジメの頭の中に過去の様子が呼び起された。二人の少年少女が向かい合わせですわり会話していた。すると急に女の子の方が男の子に言う。
「これから、あなたの名前はハジメね!」
「何で?」
男の子は急に言い出した女の子に聴く。
「1って一番最初の数だから」
安直な発想に思わず吹き出す。それからお返しもかねて男の子も名前を付ける。
「じゃあ、お前は0だからレイだな。」
「読み方変えただけじゃない!」
そう言って二人は笑う。
昔の光景から我に返ったハジメは、微笑みながら言った。
「俺は別のヤツにつけられたから。」
そう答えたハジメを見て、滝崎は本命の質問をする。
「なぜ父は死んだの?」
「わからない。俺はその時サンペイ達とは別行動だったからな。」
言葉を切り一息つく、滝崎はハジメの言葉を待つ。
「サンペイに聞けば分かる。ただしこれだけは知っていてほしい。滝崎博士が死んだ時、一番悲しんでいたのはサンペイだ。あいつにとって滝崎博士は父親代わりみたいなものだった。だから、滝崎博士の死についてあいつはウソをつくことはない。まぁ、信じるかはあんたに任せるよ。」
ここまで言い切るとハジメは「サンペイを呼んでくる」と言って部屋の出て行った。