買い出し
天然パーマで灰色のポロシャツと黒の短パンを着ていて帽子を目深にかぶる青年は携帯電話で話をしていた。
『サンペイ買い出しはいいんだが、騒ぎをおこすな。』
電話の相手は冷静な声で、サンペイと呼ばれた青年に忠告する。
「ハジメ、その忠告聞き飽きた!お前は俺の母ちゃんか!大丈夫だよ!」
そう言いながら携帯を切り、目的の店へと向かう。その途中で公園の木に群がる子供たちを見つけた。
「どうしたんだ?」
サンペイが子供たちに尋ねると警戒しながらも答えてくれた。
「木にボールが引っかかっちゃったの」
指をさしながら答えてくれた子供に笑顔を向け指の先に目を向ける結構な高さにボールが引っかかっていた。
「とってきてやるよ」
サンペイは子供たちにっボールを取ってくると伝え、木によじ登り始めた。ボールをはじき落とすと帽子まで落ちてしまい焦る。
「やべっ」
ボールが落ちたのを確認した後、自分も木から飛び降り帽子を拾い深くかぶる。子供たちにもう引っかけないように忠告すると、目的地に行くために視線を上げた。目の前に髪をショートボブにした女性がいた。視線が合ったので会釈をするとその女性が警察の制服を着ていることに気づいた。ハジメとの電話が脳裏をよぎり『やばい・・・』と思ったサンペイはすぐにこの場を立ち去ろうとした。しかし、女性警官に腕をつかまれた。
「あなた、電流解放軍ですね?署まで来て得もらえますか?」
と言われ、本格的にまずいことになったと思ったサンペイは女性警官の手を振りほどくと全速力で目の前の通りをアジトに向かって走る。「まて!」と叫んでいる女性警官を無視して、
走りながら携帯を取り出し電話を掛ける。
『どうした?』
電話からハジメの声が聞こえた。
「警察に追われてるどうすれば良い?」
『どうしたら、アイス買いに行って、警察に追われるんだよ』
電話からあきれたようなハジメの声が聞こえる。
「俺だって意図的にやってるわけじゃない!いいから!どうすれば良い!」
サンペイは自分だってどうしてこうなったのか聞きたい気分だとハジメにこの先の対応を訊ねる。
『できるだけアジトから離れろ、そこで撒いてこい』
「了解!」
サンペイは電話を切りポケットに入れるとアジトの場所から遠ざかるように走った。サンペイはアジトとは真反対のところにあるデパートに逃げ込み、人ごみを利用して女性警官を撒こうとするが、案外しつこいと思いながら角を曲がると服屋が見えた。素早い動きで服屋に入り試着室に体を滑り込ませる。女性警官の足音が近づき遠ざかってくのを確認したサンペイは試着室から出て一難去ったと息をついて、アジトへと向かう。その後ろをついていく一つの影に気づかずに。