逃走
01号が長い非常階段を登り切り出口の扉を開けると犬を連れた兵士達が現われた。
『まずい発電できないのにこの兵士数、それとあの犬おかしい・・・・』
01号は心の中で絶望的な戦力さを理解していく。発電できない現状ただの一人でも厄介なのに、この人数とそしてなぜか体中から放電している犬がいた。どうしようかと考えていると犬が
こちらに向かって口を大きく開けた。バチバチという音が持続的に響き、一気に放電された。01号は咄嗟に両腕を前にクロスさせその放電を受け止めたが、後ろにはじけ飛ぶ。兵士たちが首をかしげている。なぜなら本来この放電を受ければ、放電の威力で体を焼き尽くしてしまうしかし、01号ははじけ飛ぶだけで済んだからだ。そして、よく見てみると弾き飛ばされた01号の体が若干放電しているのが見えた。立ち上がった01号は、この場をどう切り抜けるかを考えていた。廊下の監視カメラを一瞥し、『あの犬は放電できるのか、いまの一撃は何とかなったが、ここでこの力を何回も使うのはまずい』と01号が考えていると犬はまた口を開け充電し始めた。まずいと思いつつこの場を切り抜ける手が思い浮かばない。ここまでかとお思ったときに外がら轟音と地響きが鳴り響いた。なんだと思った瞬間停電が起こった。ここしかないと思った01号は暗闇に紛れこの場を突破する。そのまま走り抜け02号達と別れたところに戻って来た。目の前の森が燃えているのを見た01号は一瞬あっけにとられたがすぐに燃えている森の中心地へ向かう。01号が森の中心地に着くとそこには、えぐれた地面と放射上に倒れる木々あり倒れた木に02号が寄りかかっているのが見えた。
「02号どうした?何があった?」
02号を抱き起しながら尋ねた。
「01号・・無事だったのですね・・・義堂が現われました。そして・・・」
02号が視線を別の倒木に向けるそこには、腹部から血を流す滝崎博士がいた。滝崎博士の周りにはたくさんの血が流れており、明らかに致死量を超えていた。
「義堂がやったのか?」
02号は力なくうなずく。
「04号はどこだ?」
01号が02号に問いかけると燃え盛る森の向こうを指さした。
「03号を止めるためにあっちに」
それを聞いた01号は02号を背負うと森へ歩き出した。炎をよけて森を抜けると04号が横たわり、03号が一人の筋肉質な男と対峙していた。対峙している二人ともボロボロで03号はやっとの思いで息をしていた。すると、こちらに男が気付き顔をしかめる。
「義堂退け、さすがにその状態で俺とやりあえないだろう」
01号は男に精一杯の声を出して呼びかける。もちろんこれは01号のはったりだまだ発電することができない01号にはボロボロとはいえ義堂には勝てなかった。男は01号の様子をじっと見つめいやらしい笑みを浮かべた。
「さすがに01号まで相手にしてられないな、ここらで退かせてもらうかな」
飄々と喋る口ぶりは妙にイラつかせる物があった。
「ふざけんな!お前だけは絶対に殺す!」
突如03号から激昂した声が響く。03号の体が蒼い稲妻を纏う今までとは一線を画す放電だ。それを見た01号は、02号を04号の近くに下ろし03号のもとへ向かう。03号は義堂にむけて放電するが義堂は軽々とかわす。01号は03号の隣まで来ると義堂に向き直る。それを見た義堂はこの状態で2対1になると不利だと思ったのか簡単に撤退しようとした。
「待て!」
03号が声を張り上げ、追いかけようとするが、それを01号がたしなめる。
「追うな!義堂は撤退した。追跡隊が来る前に俺たちも逃げるぞ!」
「ふざけんな!あいつは親父を殺したんだ必ず殺す!」
いまだ追う気でいる03号の頬に01号の拳が飛んだ。
「なにすんだ!」
「今大事なことを考えろ!02号と04号が動けない!俺とお前で背負って逃げる!またあそこに戻りたいのか!」
01号の言葉で03号は我に返る。辺りを見渡し02号と04号が倒れているのを見つけた。01号に目を向けてから04号の元まで行き04号を背負った。01号も02号を背負った。01号と03号は目に涙を浮かべながら確かな決意を抱き、暗い夜の闇に消えていった。