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感情のままに

01号は、再び裏口から施設の中に入り、ひたすらに走っていた。かなりの数を倒したと思ったがまだ残っていたらしい武装した男たちが01号を見つけ叫ぶ。

「いたぞ!01号だ」

「チッ、どれだけの数いるんだよ」

01号は憎々し気に敵を見つめ、小さく悪態を吐く。

「手加減しねぇぞ!」

01号がさっきまでとは打って変わって感情的に男たちに叫んだ。男たちは01号の様子に少しの動揺を見せながらも発砲した。しかし、どの麻酔弾も当たるどころかかすりもしなかった。

「どうなってる!」

「弾があたらねぇ!」

男たちは明らかに異常な状況に声を上げた。01号は飛び交う麻酔弾を紙一重で躱しながら男たちに向かって距離を詰めていた。ついに男たちのそばに着いた01号は、一番最初に叫んだ男以外の男たちを次々と胸に電流を流して殺していった。最後に残った男に近寄った01号は男の胸倉をつかみ、乱暴に引き寄せた。

「00号はどこだ!」

感情的に男を問い詰める、男は震えながら口を開いた。

「し・・・知らない・・本当だ!本当に知らないんだ!殺さないでくれ!」

男の言葉を聞いた01号はさらに男を問いつめる。

「誰なら知ってる!」

「け、研究室の室長なら知ってるはずだ!」

男は死の恐怖から叫ぶように答えた。答えを聞けたからなのか、01号の先ほどまでの感情的な様子が和らいだ。

「研究室はどこだ」

先ほどよりは少し落ち着いた口調で01号が男に尋ねる。

「こ、この先の角を、ま、曲がった先だ」

男は01号が落ち着いたのを確認したためかかすかに息がつまらせながら答える。01号は男を乱暴に解放する。男は助かったと息を大きく吐き安堵するが、そこに手が伸びてくる気配を感じ目を上げると、01号が男に向かって右手を伸ばしていた男は慌てて声を上げる。

「ちゃんと喋ったじゃないか!」

「俺は喋ったら殺さないなんて一言も言ってない。それに、お前らが今までに俺たちにしたことを許せると思うか?」

01号は淡々としゃべっているがの端々に右手から迸る蒼い稲妻が抑えきれない感情を雄弁に語っていた。それは、この研究所の人間全員に対する怒りと憎しみ。そしてそこからくる純粋な殺意を表したものだった。

「俺は何もやってない!」

男は必死に叫ぶが、まるで何も聞こえてないかのように、右手が男の頭を無造作に掴むと

蒼い電流が奔った。男は白目をむき、鼻と耳から血を流し倒れた。それを見た01号が小さく呟く。

「ここにいる時点で同罪だ。くそ野郎」

確かに01号が男と会うのは初めてだった。しかし、01号にとってそれは問題じゃない。01号にとって、今この施設にいる人間は殺すべき敵であり、自分たちを酷い目に合わせた憎悪の対象でしかないのだから。01号は男に電流を流したあと、すぐさま研究室に向かって走り出す。

目的の部屋を見つけ乱暴に扉を開け放つ。中には白衣を着た男女が合計7人程いて、奥にガラス張りの部屋を見つけた。中にいた白衣の人たちは、乱暴に開けられた扉の音に思い思いの悲鳴を上げ入口に目を向ける。先ほどの放送で拘束部隊が出動していると聞いて安心していたのと、この部屋自体のガラスや壁が厚く音が入ってこないため、近くで戦闘がお起こっていると気づかなかったため、彼らは逃げることをせずここで作業を続けていたらしい。入口に目を向け、01号がいることに気づくと驚きと恐怖から椅子から転げ落ちたり、腰を抜かしたりしていた。01号はその様子を一瞥し、近くにいた白衣の男の襟をつかみ引き寄せ胸に電流を流し殺した。

「きゃあああああああああ」

近くにいた白衣を着た女性が悲鳴を上げた。その悲鳴を皮切りに阿鼻叫喚となった。出口に向かおうにも01号がいて通れない。絶望という感情が彼らの胸を支配した。01号は最初に叫んだ白衣の女の近くによると電流を流し殺した。周りを見渡し、近くにいる人から順に殺していく。全員命乞いをするが、何も聞こえてないかのように01号は次々と彼らを殺していった。最後に女性の悲鳴を聞て奥の部屋から出てきた男に近寄る。

「00号はどこだ」

人を殺したとは思えない程に恐ろしいほど静かな声だった。しかし、手から迸る稲妻が激しい怒りを表していた。

「ば、化け物が!モルモットごときが逆らうなんて許されると思っているのか!」

男は尻餅をつきながら01号に罵詈雑言を浴びせる。01号はさらに手から稲妻を迸らせ男の頭に手を添える。

「もう一度だけ聞く、00号はどこだ!」

01号は静かに問いかけた。

「さっさと檻に戻れ!俺を誰だと思ってる!この研究所の室長だぞ!」

01号はゴミを見るような目と大きな怒りを宿した目を室長に向ける。もう何も言うことはないといった様に室長の頭に手を当てる、室長はいまだに01号に罵倒の言葉を続けている。01号は室長を無視して、頭に当てた手に電流を流す。パチっという音共に、01号の中にいろいろな映像が流れ込んでくる。流れ込んできた映像の中に、腰まで髪を伸ばした少女が大きな卵のようなカプセルの中で液体に浸かって眠っている様子、少女の前に白衣を着たショートカットの女がいる様子や中央通路のエレベーターを室長のIDカードで動かし最下層に行く様子があった。映像を確認した01号は、いまだにわめき続ける室長に流している電流をより強く流す。室長は白目をむいて倒れた。01号はもう用は無いといった様にたくさん転がっている死体に一瞥することもなく研究室を出て行った。01号がいなくなった研究室には8体の死体が転がるのみとなった。

 01号は中央通路のエレベーターにたどり着き、さっき奪った室長のIDカードを使ってエレベーターを稼働させる。エレベーターが最下層に到着しドアがあいた。そこには、大きな卵型のカプセルがあり、その中に艶のある髪を腰まで伸ばした少女が眠っていた。01号はカプセルに近づき、ガラスをたたきながら叫んだ。

「レイ!起きろレイ!」

全力でカプセルを叩きながら、何度も声をかける。01号が声をかけ続けていると、少女がゆっくりと目を開けた。少女が01号の姿を認めると驚いた表情をして声を出そうと口を動かそうとするが、カプセル内は液体で満たされているため声が出ない。少女は右手をガラスに当てる。01号はその手に重ねるように手を置く、すると01号の頭に鈴が鳴るような澄んだ声が頭に響いた。

『ハジメ?なぜあなたがここに?』

「脱出するぞ!」

頭に響いたレイの声に驚きながらも、01号はレイに向かって言った。01号は辺りを見渡しカプセルのすぐ隣に制御端末を見つけそこに両手を置く。「ハック」と小さくつぶやき、両手から端末に向かって電流を流す。

『ここから出られるの?』

「ああ、滝崎博士が協力してくれた。他にも三人、第二世代の実験体がいる。」

レイは信じられないといった様に01号に話しかける。01は制御端末をハッキングしながらレイの質問に答えた。01号の答えを聞いたレイは希望に胸を弾ませる。その時、制御端末をハッキングしていた01号からバチンッと大きな炸裂音が響いた。01号の体が後ろに飛ばされ、01号が頭を抱えながら呻き声をあげた。

「うぁぁぁぁあああ」

『ハジメ!』

レイが心配そうにハジメに手を伸ばすと同時に大きな警報の音が鳴り響いた。明らかな異常事態にレイが戸惑う、そんな中落ち着いてきたハジメが憎々しげに声を上げる。

「アンチハックだ、やられた。警備兵がくる前に必ず出してやるからな。」

01号は若干体を引きずりながら制御端末に手を置き、放電しようとして異変に気付き驚きに目をむく。

「発電ができない!」

先ほどの放電を受けた時に発電機能が機能不全を起こし、発電ができなくなっていた。

「クソ!クソ!発電しろ!発電してくれよ!もう少しなんだぞ!」

焦り大きな声を上げる01号にレイが語り掛かける。

『私は置いて行って』

声を聞いた01号は驚いた表情でレイに目を向ける。そこにはレイの何かを決意したような顔があった。その瞳には決意と悲しみがあるのを01号は感じた。

「馬鹿な事言うな!」

01号が声を張り上げると同時にエレベーターが上に上がり始めた。おそらく警報を聞いた警備兵がエレベーターを動かし、降りて来ようとしているのだろう。

『私は大丈夫だからあなただけでも逃げて』

「ふざけるな!お前を置いていけるか!」

01号達が口論している間に、エレベーターは上に登り切った。それを見た01号が制御端末にハッキングしようとするがやはり発電することができない。

「クソ!」

発電できないことに歯噛みしながら01号がイラつきを言葉にする。

『私、待ってるから。』

レイの言葉の意味が分からず01号はレイに再度目を向ける。

『私は、待ってる、ハジメが迎えに来てくれるの、待ってるから。』

ようやく言葉の意味を理解した01号は自分の無力さを噛みしめ、悔しさと悲しさを混ぜたような顔でカプセルに近づく。01号はカプセルのガラスに右手の小指を着けるとレイの目を見つめる。

「約束する。必ず迎えに来る。」

その言葉を聞いてレイは微笑みながら、01号と同じように右手の小指を着ける。しばらく見つめ合ってから01号は覚悟を決めて小指を離す。そのまま振り向き、エレベータ横の非常階段を上がっていく。レイは01号の背中を悲し気に見つめ、満足したように目を閉じた。


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