脱走
スピーカーから捕獲部隊を投入したという放送が流れたころ、真っ白の長い廊下を上下真っ白な病院服のような服を着た四人の子供が走っていた。
「まずいな」
先頭を走る少し長めの黒髪の少年がつぶやいた。
「とにかく早くこの廊下を抜けて裏口に出ないと!」
眼鏡をかけたショートカットの少女がほか三人に向けて言う。
「操電で身体能力強化してさっさと行くか」
ぼさぼさな天然パーマの少年が提案するが、
「今電力を無駄遣いするべきじゃない、ここを出たら全電力使ってこの施設から離れないと」
伸びた黒髪で完全に片目が隠れてしまっている男の子が言った。四人はひたすらに長い廊下を走り抜けた。
「いたぞ!撃て!」
突き当りを右に曲がろうとした瞬間、野太い男の大きな声がした。同時に武装した三人の男たちに銃撃された。しかし、実弾ではなく捕獲用の麻酔銃のようだった。それを間一髪のところで元来た道の壁に張り付くことで回避した。
「くっそ、どうするんだ01号」
天然パーマの少年が先頭を走っていた少年に聞く。銃撃がいまだやまぬ中01号と呼ばれた少年は冷静に答えた。
「遭遇した以上、戦闘するしかない、現状お前たちはまだ能力の制御ができてない」
ここまで言うと他の三人を見回して続けた。
「人を殺すことになる。02号、03号、04号、覚悟はいいか?」
三人の覚悟を確かめるように三人の目を見る。02号と呼ばれた眼鏡をかけた少女は俯き、03号と呼ばれた天然パーマの少年も何か考え込むような顔をしたが、04号と呼ばれた少年は目を見返しながら告げた。
「俺は殺せる」
淡々とした口調ではあったが、まっすぐと見つめてくる目には確かな覚悟があった。
「俺も殺せる。」
そう言った03号の顔は考えこんでいた顔から迷いを吹っ切ったような目で01号を見つめていた。02号は頬を自分の両手で思いっきりたたき、真っすぐなまなざしで決意した。
「私も人を殺します。」
三人の覚悟を聞いた01号は満足そうに頷き、04号と03号に指示を出した。
「お前らは奥の二人に向けて放電しろ。手前の奴は俺がどうにかする。」
01号の指示が終わったころ武装した男たちの声が聞こえてきた。
「おとなしく出てこい!電池人間!」
「今出てくればいたい目みなくてすむぜ!」
01号達を威圧しようと大きく粗野な言葉使いをしている。男たちが叫び終わった瞬間、壁から飛び出した03号と04号が奥にいる二人に向かって放電する。バチバチと大きな音を立てきれいな蒼い稲妻が、先頭の男の両脇を抜け奥にいる二人に当たった。バチィと音を立て接触した稲妻は二人を広報10メートルほど吹き飛ばし焦げ臭いを漂わせた。先頭にいた男は反撃されることは想定していたため、突然の放電に驚いたもののこれで出てくるだろう実験体達を捕獲すべくすぐさま銃を正面に構えるが、放電に驚いていた一瞬の隙に放電と共に飛び出した01号が間合いを詰めていた。男は驚いて引き金を筆耕とするが、01号が向けられた銃口をしたから右手ではじき、左手を相手の胸に滑り込ませパチっと小さく放電した。01号が放った放電は的確に相手の心臓を貫き相手を絶命させた。三人の男が絶命していることを視認した01号は三人に向けて言った。
「急ぐぞ!」
隠れていた三人が出てきて、四人で走り出した。人間が焦げるという初めて嗅ぐ特殊な臭いとこれを自分たちがやったのだという実感が吐き気を催すが今は吐いてる場合じゃないと言い聞かせ口を手で覆いながら03号は走っていた。02号も自分は殺していないが死体を見るのがはじめてなため嘔吐しそうになりながらも必死に前を向いて走っていた。
迷路のような施設内を迷いなく走り続け、遭遇する捕獲部隊を次々に03号と04号の放電で殺していき、殺しきれなかった隊員を02号と01号が直接電流を流して止めを刺していった。息を切らしながらもつれる足をひたすら前へ出し走っていた。ここまで直線距離で3キロ近くある距離を休みなく走りぬけていたのだから無理もない。疲労限界に近い中一人だけ息も切らしていない01号が三人を叱咤激励する。
「あと少しで滝崎博士が待つ裏口に着くぞ!足を止めるな!」
「見えたぞ!裏口だ!」
03号が笑いながら叫ぶ。
簡素な裏口にたどりついた。しかし鍵は電子ロックになっており、職員のカードキーがないと開かない仕様になっていた。
「02号開けられるか?」
息を切らして体全体で息をしている02号に01号が尋ねた。
「やってみます。十秒ください」
そういった02号は大きく深呼吸をしてから右手をカードキーリーダーに手をかざして呟いた。
『ハック開始』
呟きと同時にカードキーリーダーに向かって美しい蒼い放電が始まった。放電をして五秒ほど経ったときに『ピー』という電子音が響き、ドアから開錠音がした。
「02号よくやっ・・・02号!」
01号が02号に向けて労いを送ろうと02号の方を見ると02号はへたり込んでいた。
「02号大丈夫?」
04号が心配そうに声をかけた。
「私はここまでが限界見たいです。もう一アンペアも発電できそうにありません。ここに置いていってください。」
02号は真っ青な顔をしながら、三人に言った。
「04号、02号を背負って走れ!」
01号は04号に強い口調で言った。
「01号!全員ギリギリなんです。ここで私を置いていった方が・・・ちょっと04号!」
自分をおいてけと主張する02号を問答無用で04号が背負った。
「みんなで脱出する。そう決めたはず。」
04号は02号を背負いながら淡々としゃべる。
「それに02号いないと、03号と01号の喧嘩を止められない。」
そう言いながら背中に背負われている02号に笑顔を向けた。
「・・・・///」
02号は頬を赤く染めながらなにも言わず04号にしがみついた。それを確認した01号は裏口を開けた。外にはたくさんの星が広がりまばゆいばかりの月明りに照らされていた。四人は初めて出た外に感動しながら辺りを見回した。
「こっちだ!」
声がした方に目を向けると、車に乗った四十代後半くらいの男性が現れた。男性の運転する車が01号達の前に止まる。
「乗りなさい!」
男性は01号達に言う。
「滝崎博士、02号達をお願いします。」
01号は、02号を乗せ03号達が乗り込んだのを確かめた後、運転席の男性に声をかけた。
「君はどうするんだ!?」
滝崎博士は動揺しながら01号に尋ねる。
「まだ一人いるんで。」
そう言いながら01号は車のカーナビに手をかざし放電した。蒼くきれいな光がカーナビと01号の間に流れる。三秒くらいで放電は止まり、01号は滝崎博士を見あげる。
「目的地とそこまでの道のり、この周辺の地理も記憶しました。行ってください。あとで必ず合流します。」
そう言い施設に戻ろうとする01号に滝崎博士は呼び止めようとするが、それは03号によって阻止された。
「親父頼む行かせてやってくれ、01号は最初からこうするつもりだったんだ。」
その言葉を聞いた滝崎博士は01号に向けていた手でハンドルを握り、目の前に広がる森に向けてアクセルを踏んだ。