タケミカヅチ
フタバとシキは管理本部のメインコンピューターに近寄り、フタバがUSBを接続するとパソコンにに手をかざしハッキングを開始する。頭の中に流れ込んでくるメインコンピューターのすべての情報のうち必要そうな情報を取捨選択してUSBに放り込んでいく。
ハジメたちは気絶させた警備員と研究者を拘束する。すると、研究者の中でもいかにも偉そうな中年の男が話しかけてくる。
「お前たちはなんだ!エレクトロ社にたてついてどうなるかわかってるのか!」
それを聞いたサンペイは手足を縛られ、床に転がる男に視線を合わせる。
「どうなるんだ?お前たちは俺達に手を出せないだろ?俺たちの存在が公表されて困るのはお前たちだろ?」
男はいやらしい笑みを浮かべる。
「ハハハハハ!もうお前たちの存在など問題にならんよ。」
男の態度を不審に思いサンペイが追及しようとしたとき、フタバが驚きに声を上げる。
「ハジメ!来てください!」
呼ばれたハジメはもちろん、焦ったようなフタバの雰囲気が気になったサンペイも男の追求をやめ、フタバのもとに向かう。
「どうした?」
「これを見てください!」
フタバがハッキングを辞め、パソコンを操作する。パソコンのディスプレイに大きな筒状の物が映し出される。
「タケミカヅチ?なんだこれ?」
サンペイは何なのかわからないと声を出すが、隣のハジメが絶句していた。そして、ハジメはさっきサンペイと話していた男のもとに行き胸倉をつかみ乱暴に立たせ引き寄せる。
「軍事転用したのか!俺たちの力を!」
男は嘲りの表情を浮かべ答える。
「お前たちの力?違う我々の力だ君たちは我々人間の資源なのだから。」
答えを聞いた瞬間ハジメは男の右ほおに拳を叩きつけた。
「そのタケミカヅチ?というのは何なんですか?」
普段冷静なハジメとフタバが焦っているのを見て不安になった滝崎が尋ねる。
「簡単に言えば、いつでもどこでも好きな場所に高電圧の雷を落とせる兵器です。この装置さえあれば、この国に居ながらにして、どの国の重要施設も破壊できます。」
滝崎は絶句した。戦争を放棄したはずのこの国がまるで戦争を起こすような兵器を開発していたという事実に。
「それよりも、ハジメここを見てください。」
フタバは動力炉の部分を示しハジメを呼ぶ。ハジメは戻ってきて、フタバの示された場所に視線を落とす。すると、電撃が体中に走った。そして呟くように口にする。
「レイ・・・」
ハジメは驚きに目を見開きながら、感情的にフタバを問いつめる。
「タケミカヅチはどこにある!」
フタバはここまで感情的になるハジメを見るのは初めてだったので驚きつつも、場所伝える。
「この本社の最下層です。専用のエレベーターが一階のメインホールを抜けたところにあります」
それを聞くや否や、ハジメは管理本部の扉に向かう。それをサンペイが引き止める。
「どこ行くんだ」
「レイを迎えに行く」
サンペイの制止を振りほどきハジメが出て行こうとしたとき、シキが声を上げた。
「誰か来た。」
その声に管理本部のモニターを見ると全身真っ黒な武装集団8人が正面玄関から侵入してくるところだった。顔もフルフェイスで覆っているため分からない。
「なんだアレ?」
「味方ではないと思います。」
「さすがにそれは分かるよ!」
サンペイの疑問にユウスケが真面目に答える。ハジメは関係ないと行こうとする。それを見たサンペイがハジメの手を掴みとめる。振り向くハジメの目には敵意が芽生え始めていた。寒気を感じながらサンペイはハジメを見据える。
「武装した奴らがいる。ハジメ一人じゃ無理だ。俺も行く。」
そう言いながらフタバたちに指示を出す。
「フタバは俺達が出たら管理本部の扉をロックしろ。シキとユウスケ、滝崎さんはここで待機。」
指示を受けた四人が強く頷く。サンペイはシキとユウスケを見て言う。
「フタバと滝崎さんを必ず守れよ!」
「もちろん」
「お任せください」
シキとユウスケがそれぞれ返事する。そして、伸びている警備員から通信機をはぎ取り全員に渡す。
「これで連絡を取る。何かあったら連絡しろ。フタバはここから最下層への道のりを指示してくれ。」
「わかったわ。」
フタバは通信機を耳につけながら答える。ハジメは先ほど殴り飛ばした男のもとに行くと男の首から下げているIDカードをはぎ取る。そして、サンペイと共に扉から出る。ハジメとサンペイが扉から出るその背中を見送るとフタバはすぐにロックをかける。
管理本部から一階までの階段を一段飛ばしどころじゃない速さで駆け降りる二人に、聞きなれた声が聞こえてくる。
『まず一階まで降りてください。一回に降りたらメインホールを通り抜けなければなりませんが、おそらくそこで謎の武装勢力ともそこで接触すると思います。』
フタバはルートと共に謎の武装集団と接触すると教えてくれた。そのメインホールがもう目の前まで迫っている。メインホールに出ると、円形に広がり柱が丸を描くように規則的に配置さえていた。黒ずくめ集団が8人いた。黒づくめの一人がこちらに気づくといきなり発砲してきた。ハジメとサンペイは素早く近くに柱に身を隠す。すると黒づくめの中でも一番体格が良い、男が発砲を辞めるように指示を出す。そしてその男はおもむろにフルフェイスに手を
かけると脱いだ。そこに現れたのは義堂だった。
管理本部内では滝崎が心配そうにサンペイ達の映像を見ていた。そして黒づくめの一人がフルフェイス脱いで顔が見えた。その顔は今まで憧れだった人の顔だった。義堂の顔を見た瞬間滝崎は体が勝手に動いていた。気づいたら管理本部の扉を開けようとしていた。
「なにしてるの!」
フタバの怒鳴り声が聞こえる。それでも滝崎は義堂に確認したかった。なぜ自分をだましたのかを。
「お願い行かせて!どうしても直接確認したい!」
滝崎は真剣にフタバの目を見て告げる。フタバはため息を吐き、シキに目を向ける。シキは滝崎に肯定するように頷く。
「わかったわ、ユウスケついていきなさい絶対死なすんじゃないわよ。」
フタバは滝崎に言うとユウスケに視線を移していった。
「はいわかりました。」
ユウスケは堅苦しく返事をすると、転がっている警備兵からハンドガンをはぎ取ると滝崎に渡した。
「一応持っていてください。警察官なら打てますよね?」
滝崎はユウスケからハンドガンを受け取りながら力強く頷いた。一時的にロックを解除し空いた扉から滝崎とユウスケが出て行った。
「二人になっちゃったわね。」
おどけるように言うフタバにシキが真顔で答える。
「大丈夫、フタバはオレが守るから」
シキの言葉に顔を赤らめながら視線をそらすようにパソコンに向き直り、ハッキングを続ける。