作戦開始
翌朝5時、塔のようにそびえたつビルの前にハジメたちは立っていた。
「行くか。」
ハジメがコンビニに行くかのように軽く言う。ハジメとフタバが先頭に立ち、その後ろえおシキ、サンペイ、滝崎、最後尾にユウスケが続く。正面玄関の横にある守衛室は、ハジメたち
を見つけるとマイクに向かって声を出す。
『君たちそこで止まりなさい。ここから先は部外者立ち入り禁止だ。』
警備隊の制止を無視して歩き続けるハジメは少しの笑みを浮かべ、小さい声でつぶやく。
「部外者とは、悲しいこと言うじゃねえか。」
ハジメのつぶやきと同時に、最後尾にいるユウスケが守衛室に放電する。放電した電撃は守衛室に当たると包み込むように広がった。それを確認したハジメとフタバは体中に稲妻を纏いありえない速さで守衛室に駆け込む。そこからは戦闘ではなく蹂躙だった。ユウスケの放電により、戦々恐々としていた警備兵たちにありえない速さで肉薄し、つぎつぎとスタンさせていく。あとからサンペイ達も合流し、守衛室の電話線を引きちぎっていく。警備隊の数が二人足りないと気づいたハジメは全員に伝える。
「二人足りない」
「巡回中か?」
サンペイが思いついたことを口にするが、フタバとハジメが否定する。
「確かにこの部屋には5人いた。」
「逃げたのか?お前ら身体強化したお前たちから?」
信じられないといった風にサンペイが言った。
「気にしてもしょうがない、早く先に進むべき」
シキが抑揚のない声で言う。
「自分もそう思います。」
ユウスケがシキに賛同する。それもそうだなとハジメたちは先を急ぐ。早朝の誰もいないオフィスを六人が駆けていく。
地下深く巨大な装置がある部屋でモニターを見る眼鏡をかけた30代くらいの長髪の女がいた。女が見ているモニターには、ハジメたちが階段を駆け上がり管理本部のある階についていた様子が移されていた。女は口は裂けたようないやらしい笑みを浮かべ呟く。
「来た来た♪おかえり01号♪」
管理本部のある階にたどり着いたハジメは悪寒を感じ身震いする。それを見たサンペイが笑う。
「なんだよ風邪か?」
「かもな、お前と違って俺はアレじゃないから」
ハジメはからかうように言う。
「どういう意味だよ?」
本気でわからないようにキョトンとしている。
「ハジメはサンペイのこと馬鹿にしてる。」
シキは平坦な声でサンペイに言う。
「は?そうなの?・・・なるほどバカは風邪をひかないってことか・・・ハジメお前!」
「あーあーうるせぇ!シキに教えてもらわないと気づけない時点でバカだろうが!」
ハジメとシキがこの状況にも関わらず低レベルな言い合いを始める。シキはそれを面白そうに眺めている。すると三人に悪寒が走る。
「二人ともいい加減にしなさい。」
フタバは笑顔でハジメたちを見ているが目が笑っていなかった。
「「すみませんでした!」」
二人は走りながら器用に頭を下げる。そんな様子を見て後ろを走っている滝崎はクスリと笑みをこぼす。そんな滝崎にユウスケが独り言のようにつぶやく。
「あの四人はいつもあんな感じなんです。自分は普通の人間の日常が分かりませんが四人を見てると、あれが普通の人間なのかなと思います。」
滝崎は、確かにと思った。この四人にやり取りは普通の人々が交わす会話と何も変わらないように見えた。でも国は彼らを人ではなく、資源として扱っている。改めて、その異常さを再確認した。
「構造図によればこの角を右に曲がれば管理本部です!」
フタバが全員に伝える。先頭を走るハジメとサンペイが角に差し掛かった瞬間銃弾の雨が降り注いだ。ハジメとサンペイは間一髪でその場から飛びのき壁に身を隠す。
「なんだ!」
サンペイが声を上げる。壁からこっそり顔を出して覗くとそこには床からせり出したバルカン砲が2基、砲門をこちらを向けていた。
「何でバルカン砲なんてあるんだよ!ここ会社のオフィスだろ!」
サンペイが思わずツッコむ。ハジメは驚いていた。銃弾をかすめた右腕がしびれていたからだ。ただの痺れではなく、電撃を浴びたようなしびれだった。呆然とするハジメにフタバが問いかける。
「どうかしましたかハジメ?」
「あの弾電気を帯びてる」
サンペイは疑問符を浮かべる。
「武器に電気を帯びさせることなんてできたか?」
「俺達のみじゃ無理、武器が特別じゃないと」
シキが冷静に言う。
「どうする?ここで時間をかけたらほかの社員も出社してくるぞ」
「俺が行く」
サンペイの焦った声にハジメが答える。ハジメは壁から顔をだし相手に銃撃させる。そして銃撃が止まった瞬間、通路に飛び出した。『視力強化』心の中でつぶやくと世界が色あせ、全ての動きががゆっくりになった。相手がバルカン砲を放ってくる飛んでくる弾がすべてスローモーションになり初めに向かっていく、ハジメはゆっくりになった世界で観察する。『やっぱり電気を帯びてるな』飛んでくる弾一つ一つに電気が走ってるのを見た。
『さて、弾幕が薄いところは・・・・上か』
ハジメは上を見あげ、『脚部反応強化』と心の中で呟くと足に電気だ走る。ありえない速さで弾幕の雨を縫って壁を使い三角飛びをし、弾幕の雨を飛び越える。バルカン砲を使っていた警備員の近くに着地するとすぐに片方の兵士に飛びつき電気を流す。後ろでもう一人の警備員が銃を抜いてハジメに向けるが、すぐに飛来した稲妻に意識を刈り取られた。稲妻が飛来した方に目を向けるとサンペイが右手の手のひらをこちらに向けていた。サンペイはハジメの視線に気づくとサムズアップした。ハジメもサムズアップして返す。倒した警備員に目を向けると、守衛室で逃した二人だと気づいた。
ガトリング砲を突破してすぐのところに管理本部はあった。重厚な扉で固く閉ざされ、電子ロックされている。守衛室から逃げた二人が緊急事態を伝えていたのだろう。
「フタバ」
フタバは、ハジメの問いかけに頷き端末に手をかざす。蒼い稲妻が走り消える。
「だめです。アンチハックプログラムが組まれてます。このままハックすると迎撃システムが起動します。」
フタバは悔し気に全員に伝える。サンペイが撤退も視野に入れどうするか考えていると、ハジメが端末に手をかざす。
「俺が開ける、ロックの解除と同時に突入しろ。」
しばらくするとピーという開錠音が響きゆっくりと扉が開いていく。サンペイは後ろに滝崎をかばい発電する。シキも後ろにフタバをかばいながら発電する。ユウスケは発電しながら、先頭に進み出る。扉が開き切ると入口を警備員たちが包囲していた。その奥に白衣を着た研究者たちがいた。警備員たちは扉が開き切ると同時に引き金を引こうとするが、先頭にいたユウスケの放電に蹂躙されていく。ユウスケが部屋に侵入し、それに続きサンペイとシキが的確に精密機器を避け敵のみに電撃をあてる。警備隊は瞬く間に制圧された。




