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片思い片手間ヒーロー  作者: Joker
ヒーローは年中無休
13/16

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「なんで神の癖に、人の飯食ってんだよ!!」


「神へ供物(くもつ)を捧げるのは、人間の使命だろ? 良いからその肉を僕に捧げなさい!!」


「やかましい! 俺知ってるんだからな! 飯食うときだけ、お前は実体があるって事を!」


「イテテ!! 頬を引っ張らないでよ! 良いじゃ無いか、一枚くらい!」


「やかましい! お前の分も用意してやってるだけ、ありがたいと思え!!」


 純とエレスは、二人で机を囲み、食事をしていた。

 エレスの皿は既に空になっており、食い足りない様子のエレスは純のおかずを狙って来たのだった。

 

「ったくよぉ……ただ飯食ってるくせに、文句言いやがって……」


「いやぁ……人間界の食事は美味しいからね、それに僕は君に力を上げてるんだよ? それに対するお礼ぐらいあっても良いじゃ無いか」


「お前がやれって言うからだろ! しかも、俺の命を人質にしやがって!」


「その表現は間違いだね、正確に言うと、人質は君本人だ」


「どや顔で言うな! 大体お前は……」


「あ、まって……近くに出たよ、さぁ行こう!」


「あぁぁ! こんな時に!!」


 近くにIDが出たらしく、エレスが何かを感じ、純に伝える。

 まだまだ言いたい事があったが、IDが出たのであれば、そっちを優先する必要がある。

 純は急いで準備をし、現場に向かった。


「んで、今回はどこだ?」


「えっと、そこの角を曲がって真っ直ぐの突き当たりだね」


「かなりの近場じゃねーか……被害が大きくなる前になんとか……」


 角を曲がった瞬間、純は思わず言葉を失った。

 角を曲がった先に居たのは、大きな恐竜……では無く、恐竜のような見た目のIDだった。

 全長は約四メートルほど、そこまで巨大と言うわけでは無いが、暴れられたら、ここら辺一体は相当な被害を受けそうだった。


「おい……なんで恐竜が居るんだよ……」


「君何を言ってるんだい? どう見てもIDじゃないか」


「始めて見たぞあんなタイプのID! しかも肉食っぽい外見の癖に草食ってんぞ!」


 恐竜のような姿のIDは、真っ黒い体に黄色い瞳をしており、公園の葉をムシャムシャ食べていた。

 恐ろしい外見とは裏腹に、そんな穏やかな姿がなんだか可愛いとさえ思えてしまった純。


「何にしても倒さないと、破壊行動を始めるかも知れないから、今のうちに倒しちゃおうよ」


「毎回簡単に言いやがって……やるのは俺なんだぞ……」


 ぶつぶつ文句を言いつつ、純は人目が無いことを確認し、装展する。

 夜と言う事もあり、人通りが少なかったので、周りをそこまで気にする必要が無く、すぐに装展が出来た。

 しかし、恐竜の姿のIDはと言うと、純に気がつく様子も無く、草を食べ続けていた。


「腹減ってんのかな?」


「恐らく、力を付けてから暴れる算段なんじゃない? 今のうちに一発で決めちゃってよ」


「だから簡単に言うなっての!」


 恐竜の姿のIDが居る場所は、大きめの公園で、戦闘には向いていた。

 広い公園内ならば、いくら暴れても被害は少なくて済む。

 純は、エレスの言う通り、食事に気が向いている間に倒してしまおうと、一気にIDに向かって行った。


「おりゃぁぁ!!」


 かけ声と共に、IDの脇腹に拳を打ち込む。

 しかし、IDは何事も無かったかのように食事を続ける。

 

「な、なんだこいつ? 効いて! 無い! のか!」


 その後も力いっぱい殴り続ける純だったが、全くダメージを与えられない。

 殴り続けられ、ようやく純に気がついたのか、IDは草を食べるのを止め、純にちらりと視線を向ける。

 そして__。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 IDはしっぽを高く振り上げ、純をなぎ払い遠くに飛ばす。

 なぎ払っただけだと言うのに、その力は装展した純の力を遙かに超えていた。

 純は吹き飛ばされ、公園内木に体を打ちつけられた。


「いってぇぇ……何なんだよあいつ!」


「パワーと防御が桁違いだね~……この前のIDもそうだけど、最近のIDは格段に強く鳴ってるみたいだね」


「みたいだね。じゃねーんだよ! 何か良い作戦とか無いのか?! このままだとヤバいぞ!」


「そう言われても……この前保留にしたパワーアップでも試す?」


「それで良いよ! 十分だよ! やってくれ!!」


「じゃあ、はいこれ」


 エレスは純に、装展に使う赤い宝石と似た、別な緑色の石を取り出し、純に渡した。

 大きさは装展に使う宝石とさほど変わらないが、少し小さい。

 形も、赤い宝石は四角いキューブ状なのに、緑の宝石は多角形のクリスタルのような形だった。


「なんだこれ?」


「決まってるでしょ! 特撮番組でおなじみのパワーアップアイテムさ! それを使えば君のソルバレスは、パワーアップが可能さ!」


「おい、色々聞きたい事があるが、その前にそのソルなんちゃらってなんだ?」」


「君が今まさに身につけている武装の事だよ、言わなかったけ?」


「初耳だわ! ……まぁいい、それでパワーアップするには、どうしたら良い?」


「お馴染みの音声認識を採用したよ! さぁ、羞恥心を捨てて叫ぼう! へんし……」


「その手に乗るか! どうせ、またありきたりだからって変えたんだろ……」


「……っち……」


「舌打ちすんな!」


 そうこうしている間も、恐竜型のIDは食事を止めない。

 ムシャムシャと草を食べ続けていた。


「さっさと教えろよ! 今がチャンスなんだ!」


「はいはい……まぁ、音声認識も採用してないんだけどね……そもそも音声認識は変身するときに叫ぶから格好いいのであって、パワーアップは……」


「良いからさっさと教えろ!」


「あぁ、はいはい、わかったよ……人の話も最後まで聞けないなんて……将来が心配だね」


「その前にTPOくらい考えろ! 目の前に恐竜みたいな敵がいんだぞ!」


 純達がギャーギャーと騒いで居ると、恐竜の姿のIDは食事を終えたらしく、草を食べるのを止めた。

 そして、ゆっくりと純達の方を向き口を開ける。


「「え??」」


 そんなIDに気がついた純とエレス。

 前にもこんな事があったようなと考えながら、IDに視線を向けていると、IDが炎の玉を飛ばしてきた。


「ぎゃぁぁぁ! またか!! こんなん前にもあったぞ!」


「君がさっさとパワー-アップしないからだろ! 馬鹿なの!」


「お前がやり方を教えないからだ!」


 間一髪のところで、攻撃を避けた純だったが、IDは再びゆっくりと純に狙いを定め炎の玉を吐く。

 

「また来た! やべっ!」


 気がついた時には遅かった、避けるには時間が足りないと直感的に悟り、純は防御の構えを取り、攻撃を受ける覚悟を決め、目を瞑る。

 ……が、しかし、純に攻撃が当たる事は無かった。

 

「あ、あれ?」


 攻撃が当たってこない事に、不信感を覚えた純は恐る恐る目を開けた。

 すると純の目の前には、この前見たサイボーグ人間が、IDの攻撃を防いでいた。

 近くで、そして炎の光で純はサイボーグ人間の姿を詳しく見る事が出来た。

 そして純は思った。


(サイボーグなんかじゃ無い……こいつは……人間だ!)


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