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タンタタン譚(2017~2020)  作者: pai-poi
第肆章31~40 よんしょ、こらしょ
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自転車盗の危機的火急

この自転車は、この私に盗まれるべくして盗まれた自転車なのです。

つまり必然的に起こった出来事なのです。

先程から再三申し上げていますが、要約して今一度お話ししましょう。


まず私が極めて危機的状況に陥りました。そして火急の状況でもありました。

ここで「どのような危機的状況か」ということは必要な情報ではありません。

そんな情報は、この話を混乱させるだけです。

むしろ純粋に「危機的状況」というだけであって、理由などは存在しません。

そうです、「私が危機的状況になった」という事実だけが存在しました。

その上、火急の状況なのです。


ここで私は早急に行動、つまり移動する必要がありました。

「どこかに行く」ということや、「ここから去る」という問題ではありません。

「移動する」ことが目的なのです。

「危機的かつ火急の状況」が存在し「移動する」ことが私に課せられたのです。


その時、私は思い出しました。昨夜の夢を。

この現実は、昨夜の夢の中ですでに体験していることでした。

そして自転車がある場所も、鍵がかかっていないことも知っていました。

そして私が、その自転車を盗まねばならないことも知っていました。

当然、私は昨夜の夢の通りに行動しました。

その後のことは夢にはありません。それで終わりなのです。


そして私は一つ確信していることがあります。

「危機的かつ火急の状況」「早急に移動せねばならないこと」と同様、

「盗まれなければならない自転車」もまた、そこにある理由などないのです。

その証拠に、この自転車には持ち主は存在しないでしょう。

「持ち主」など必要はないからです。


所詮、この世のことは「状況」「目的」「手段」が純粋に存在しているに過ぎないのです。

今回の私の事のように。

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