第一話
思いつきで書いた処女作です。
文才は無いですが、楽しく書けていけたら良いなと思っています。
夕陽が草原を照らす、草原は障害物がなく360度見渡せるほどの広大な草原だった。
その草原を1人の男が歩いていた。男は武装しており、背中には銅で作られた槍が背負われており腰につけられた革袋には採取された薬草サーン草が袋いっぱいに詰められていた。
しばらく歩くと、男の視界には城壁が映り込みはじめ男の口元が安堵からか緩んでくるが、即座に真剣な顔つきになり気を引き締める。
「今日は充実した一日にすることができたな。あの場所はサーン草の性質に適した場所だったから目をつけておいて正解だった…途中でゴブリンの小隊に遭遇したけれどシミュレーション通りに戦闘することができたことだし、これなら一週間分の生活費が稼げたことだろうし今日は食堂で高い料理でも食べようかな」
しばらく歩くと、男の視界には城壁が映り込みはじめ口元が安堵からか緩んでくるが、即座に真剣な顔つきになり気を引き締める。
「良いことがある時は最後まで気を引き締めるのが重要なのを忘れていました。浮かれて集中力を欠くなんて愚行はしてはならないことは冒険の書に書かれていることなのに…寝る前に再読したほうが良いみたいですね」
気を引き締め始めて数分後、目の前の地面に黒色の魔法陣が形成され、突如青色の液体が溢れ出してきた。それは次第に形を作り始め、青色魔物スライムとなった。
「スライムか…やはり冒険は家に帰るまでが冒険と言うことみたいだね…っっつと!」
スライムは男に向かって突撃してくるが男はそれを身体を右半身にして躱す。そして左腕を銅の槍まで伸ばし槍を背中から抜き取って槍を構える。最下級魔物スライムだが、これは命の賭けたやり取り。相手を舐めてかかるようなことは当然のごとくしない。男はスライムの動作一挙一動を視ることに集中し攻撃する作戦を練り上げる。
(スライムは魔物の性質上、切っても切っても再生する。これだけ聞けば無敵のような魔物だが弱点は存在は必ず存在する。それは中心にある核だ、これを壊せば生命活動が停止し再生することはなくなる。普通の冒険者なら剣や槍、槌などの自分の得物で繰り出す物理攻撃で倒すことになるのだろうけどそれは悪手だ。スライムの体液は酸性、つまり自分の得物である武器の寿命が少しだが縮まってしまう。武器は僕達冒険者の生命線だ。これは初心者冒険者が鍛冶屋やギルドの関係者にアドバイスなどを聞けば最初に教えてくれることだが、大半の冒険者は聞くことが無い。つまり倒すための最善手は…)
最初にスライムから距離を取るために後ろに跳躍する。跳躍中に槍を左手で持ち、右手を前に出す。
そして、己の中にある魔力を練り上げ、青色の魔法陣を形成する。
「…冒険者の初心を思い出させてくれてありがとう。…第二位階 水属性魔法:水刃」
冒険者として大切な事を思い出させてくれたスライムに感謝を述べてから、水で作られた刃を飛ばす。水の刃は魔法陣から出現しスライムを上から下まで真っ二つにする。勿論、中心の核も綺麗に割れる。するとスライムの残骸は黒い砂となって消え去り、ドロップ品であるスライムの魔石が地面に転がっていた。
(…なんど見てもこれの理屈がわからない。気にするだけ無駄になるんだろうけど)
無理難題な疑問を心にしまい、ドロップ品のスライムの魔石を革袋に詰め込む。
「そういえばゴブリンを倒してからステータスの確認をしてなかったな…ステータスオープン」
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名前 ユート=ウチダ(30)
種族 人間
職業 童貞Lv30
H P:31/33
M P:11/21
攻撃力:18
防御力:13
素早さ:14
《ユニークスキル》
《ウルトラスキル》
《戦闘スキル》
剣術Lv1 槍術Lv3 盾術Lv1 水属性魔法Lv2 光属性魔法Lv1 気配察知Lv1
《非戦闘スキル》
料理Lv3 清掃Lv3 採取Lv4
《称号》
転移者 異世界人 童貞
《装備》
銅の槍 革の胸当て 革の脛当て 革の腕当て
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…職業はもう触れない、触れたくもないからね。称号でわかるとは思うけど、僕は異世界人だ。五年前道を歩いていて気が付いたらこの世界の森にきていた。最初は色々あって大変だったけれど今は普通の生活している。冒険とか旅をしてみたいけど、このステータスではすぐに死んでしまうのはわかりきったことだからしない。いや、できない。
「おっ、Lvが1あがってLv15になってるよ。…でも喜んでいる暇はないみたいだね。暗くなる前に城壁内に入らないとまずい」
西の空を見上げると夕陽が沈み始めている。おそらく残り一時間もしないうちに太陽は空から消え、月の輝く夜になるだろう。
(魔物は夜になると月の光を浴びて凶暴化する。月の光には微量だけれど魔力が含まれていて、それが一時的にだけれど魔物を強化するらしい。まぁ、夜中にクエストを受注しない僕には関係のないことなのだろうけれど…)
その後は特に何かが起こるというわけでも無く、無事に城壁までたどり着き門をくぐるための列に並ぶ。
門では一日中衛兵が複数人滞在していて門の通過者及び壁外を監視している。今は夕暮れ時なので日中ほど混雑しているわけではなく、すんなりと順番が回ってきた。
「よし、通っていいぞ。 次の者!身元が確認でき…ってユートかよ。ってなんだよ!その量のサーン草は…いくらなんでも多すぎるだろ!」
衛兵は僕の腰にぶら下げられた太った革袋を見て目を見開いて驚く。…たしかにこの量は自分でも取りすぎた気がする。今後のために少しは残しておいたから日をあらためて取りに行こうかな。
「こんばんは、ロイさん。今日は運良くサーン草の群生地を見つけることができたので、この収穫量なんですよ。どうです?この後に一緒に酒でも飲みますか?」
ジョッキを片手に持ち酒を飲むポーズを取る。ロイさんは目を輝かせるが、何かを思い出したのか落胆した表情になる。
「すまねぇ…誘ってくれたのに悪いが、今日は夜勤なんだ。また今度誘ってくれないか?…ってか、そもそもユートは酒が飲めないだろ。いつも俺だけビーアでユートさんはリングジュースじゃないか」
ビーアは元の世界で言うビールだ。そしてリングジュースとは名前が似ているがリンゴジュースと同じ味がする。
「仕方ないんですよ。僕は酒に弱いんですから」
酒と煙草、この2点だけは元の世界から無理だった。こっちに来て平気になったかと思ったのだけれど体質は変わることはなかった。
「酒が飲めない男冒険者って見たことねぇよ……おおっと、話がそれちまったな。確認が済んだから通っていいぜ」
「まだ身分証の提示はしてないですよ?」
「いいんだよ、第一にこの街の冒険者で敬語で話すひとなんてあんたぐらいだからな…そうだろ?“冒険者のお手本”さん」
「それは僕がつけたわけではありませんからね。それにそんな二つ名は必要ないですよ」
「ガハハッ!いいじゃねぇか。二つ名なんて全冒険者の憧れだぞ?おめでとさんよ。次が待っているから、ほら行った行った!」
半ば強引に話を終わらせられ門をくぐると夜の城下町が現れる。中央には国王のいる城があるはずだが遠すぎて夜中は見えない。城下町の道は綺麗に整備されていて多くの店が均一に並んでいて道幅も馬車が通ることが多いので広くなっている。上から見たらきれいなんだろうな。
歩いていくと飲食店の前では売り子だろうか、客引きが大声を出してお客さんを店に呼び込もうとしている。あいにく僕はいつもの食堂で食べるつもりなので、優しく断っていく。…なぜ無視しないのかって?いくら接客業だからといって無視されるのは心に来るものがあるからね。
その後は明日の予定を考えながら目的地、冒険者ギルドへと向かった。