心の隙間を埋めるように俺は今日もぬいぐるみを抱きしめる
「……寒い」
あいつと別れてから早一ヶ月、同棲してたから家賃や水光熱費は倍になって懐が痛い。
二人で住めるほどの広さはなかったこの部屋で、ルームシェアしてたものだからやたらと広く感じて、心はすきま風が吹き荒んでいる。
部屋は広さだけではなくて、それなりの傷や染みが二人の時間を思い出させるから、感傷にも浸るといったものだ。
寒さに耐えられなくなる。
エアコンの暖房を入れる。
でも、いつも抱き締めてたあいつがいない。
なんだか、前が寂しい気がする。
……はぁ、冬になんか別れるものじゃないな。
馴染みのいつものスーパー、スーパーまいらべる。
料理を作って家で待つ人は居ないというのに、いつもの習慣で曜日特売を買いに来てしまう。
そんなずらっと並んだ中に、不釣り合いなテディベアが陳列されていた。
クリスマスプレゼントに彼女やお子さんにどうだい!お値段たったの○,○○○円!本場イギリスからの直輸入!
そうか、そういえばそんな季節でもあるのか。
どこが本場とかは知らなかったが……もしあいつと別れていなければ買っていたかもしれない……そんな感傷に流され……
「お買い上げありがとうございましたー」
これ、独り身の男が持って帰るのは、気恥ずかしいものがあるな。
特にテディベアを置くためのスペース……などというものがあるはずもなく、なにともなくあいつの定位置に置く。
あまり美味くもない飯を作る
適当に溜まっていた洗濯物も回しておく
その間に風呂に入る
飯の炊けた音がして風呂から上がる
……っ!
風呂から上がって居間のいつもあいつが座ってたところに人影が……もちろん先ほど置いたテディベアだった。
ああ、あいつが居なくなって、俺、寂しいんだな。
テディベアの隣に座り、少しの間ぼーっとする。
……飯、食うか。
自分で作ったあんまり美味くもない飯は、やっぱりあんまり美味くもなくて、なんだか米と米の隙間が、まるで俺の心の隙間みたいで、なんだか余計に少し寒い気がした。
粗方食い終わり、食器の片付けもそこそこに、いつものように少し、横になろうとする。
食べてすぐ横になんな!マナー悪いぞ!なんて怒るやつは、もうこの部屋には戻って来はしない。
ぽふっ
横になると、そこにあったのはテディベアの足。
人形の場合も同じように言っていいのかは疑問だったが、テディベアの膝枕は、なんだかじんわりと心にしみた。
抱き寄せたら……どうなるのだろう。
そんな瑣末なことが頭によぎり、思わず抱き寄せる。
あいつより少し小さいが、あいつより少し冷たいが、ここ最近で一番素直に眠れそうだ。
-心の隙間を埋めるように俺は今日もぬいぐるみを抱きしめて眠る-
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