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敗者達とネロ  作者:
終章
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60話 古い時代

 堀の中で手紙を受け取るとは想像もしていなかった。記憶を辿ってみれば、リドが刑に服して一月が過ぎていた。夢に拳銃やナイフが出てくる回数もかなり減った。

 当然というべきか、刑務所にも抗争の影響が及んだ。受刑者の増加で収容人数の限界が近いという噂が流れ、実際に刑期を短縮された長期受刑者が次々と現れた。あまつさえ、抗争の当事者達が刑務所内で肩を並べる光景は珍しくなく、先日、リドはボンド・ルーレの煙草を盗んだ犯人探しに付き合った。また、司法に携わる者達は裁判や調査に時間をかけず、なおざりな量刑を下して自分達を過労から守った。ギャングに妥協する社会は今後も劣化し続けるに違いない。

 ラドラーは手紙で虎目石の会や抗争については触れず、リドへの励ましや自身の近況を書き綴っていた。

 彼女自身も執行猶予中の身だ。経営していた喫茶店フクロウは犯罪者の交流の場という側面があったし、時には人目をはばかる客に空き部屋を提供していた。

 ラドラーはフクロウを閉めるらしい。理由は足腰の衰えと後継者の不在。リドは別の理由を想像する。フクロウは、虎目石の会を引退した男が始めた店で、彼の妻だったラドラーが後を継いだ。ゆえに客は虎目石の会と縁がある者が多かった。客足が遠退き、悪徳刑事のお墨付きを失った以上、昔のような経営は望めまい。

 リドは、ラドラーの決意と、酷薄に流れていく時間を感傷的に受け止めた。抗争で変わらずに残ったものは一つもない。リドは古い時代で老い過ぎた。

 しかし、虎目石の会はリドのしがらみも道連れにした。矜持も義理もありはしなかった。あったのは、やはりしがらみだ。

 もし時期が来れば、またグロード・ゼラの墓前に立とう。虎目石の会の耳なしとしてではなく、かつて手を差し伸べられた元甥として。

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