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敗者達とネロ  作者:
10章 血
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56話 新しい兵隊

 ネロが目視した敵の数は四人。東階段を下りれば敵とぶつかり、左右は裏切者に挟まれて身動きが取れない無様な連中だ。兵隊達は客室のソファーや椅子を引っ張り出して、周囲に壁を築いている。

 瓶の導火線に着火する。投擲兵器の利点を教えてやるつもりが、ドアを開けた直後に弾幕に阻まれた。焦りが生じる。導火線が縮んでいく。やむを得ず、手榴弾を廊下に捨てると、ドアを閉めて遠ざかった。爆発音と破片が客室を叩く音が響く。

 残り一本の手榴弾を手に取ったものの、導火線が不自然に短い失敗作だった。人数と武器の差は歴然だ。攻め込まれたら、分が悪い。

 ならば、逃げるが最善だ。窓際へと進み、警察の群れと下の客室の窓を確認した。拳銃を咥え、窓枠に足をかけた。

 失敗したら、健常な体を失うことになる。

 外側の窓台にぶら下がる。ホテルの外壁に現れた見世物は警察の目にどう映るだろうか。三秒だけ腹をくくる時間を設けた。だが、一数えると自然に手が離れた。

 二階の窓台に足を立てる。衝撃に負けた膝が曲がり、踵と腰が地上に引っ張られる。負けじと上体を起こし、手が窓台を、足が壁を捉えた。両肘と掌を窓台にかけて体を引き寄せる。指先をすり減らしながら。

 客室にいるのは二人のみ。うち一人は廊下の物音を拾おうとしているのか、壁に身を寄せて拳銃を持っている。負傷した仲間と籠城しているようだ。負傷した方は倒れたまま身じろぎせず、派手に血を吸った衣服からして生きているのかも疑わしい。二人とも窓には気が回っていない。

 窓台から右手を離し、咥えていた拳銃を手に取る。それだけでも全身への負荷と落下の恐怖とのせめぎあいだった。こんな不格好な狙撃が成功するはずがない。発砲の反動で体勢を崩して落下するかもしれない。

 しかし、ネロは愚直だった。武装した男を狙って引き金を二度引いた。弾丸がどこに飛んだのかすらも定かではない。確実なのは、窓ガラスに穴を開け、敵の気を引き付けたことだ。

 歯を食いしばりながらしがみつく。窓を開錠して突入しなければ的にされる。拳銃で窓ガラスを割り、鍵を開けるが、拳銃を落とした。すでに敵の銃口がネロを狙っていた。

 ガラス片が残る窓枠を掴んだネロは外壁を蹴った。外開きの窓に運ばれて、敵の視界から消えた。

 腰に忍ばせていた予備の拳銃を手にする。それを構える前に先手を取られた。銃声が耳をつんざき、硝煙を嗅いだ。しかし、被弾していない。敵は拳銃を持つ右腕を窓枠にぶつけて狙いをしくじり、右隣にいるネロに届かない角度で発砲した。ネロは更に身を乗り出した敵に一発反撃した。不運な右利きの男が足をすくわれたように窓枠に頭をぶつけ、室内に吸い込まれた。

 ネロは体を振り子にして勢いを作り、窓枠を元の位置に移動させた。窓を潜り、殺した敵の上に転がり落ちる。左手を床につけた時、掌の裂傷と、左の腋の下の出血に気付いた。くすぐったいようなささやかな痛みしか感じない。

 瓶と炸薬と導火線でできた不細工な手榴弾でも殺傷能力は本物らしい。もう一人の先客であった負傷者は顔が潰れ、左側の目と耳がない。服のいたるところに血が染みている。息があるとは思えなかった。

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