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敗者達とネロ  作者:
10章 血
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55話 報いと不運

「そいつは誤解だぜ! おまえらを狙ったんじゃない!」

「味方の背中を撃ったろうが!」

 弁解が受け入れられる状況ではない。ロットロンは味方を切り捨てる決断を下した。

 ドアを締め切る直前、”ガキ”という表現を勘違いした兵隊がネロに向けるべき銃口をバッツに突き付けた。この馬鹿を心底嫌悪している。そういう顔のバッツに呼びかけた。

「来い!」

 バッツが全力疾走で応える。ロットロンは誤射を避けるように照準を上に逸らして援護射撃した。反撃もせずに、顔をそらして狼狽する兵隊達。西階段を守る兵隊達は攻撃してこない。状況を図りかねているのか。

 駆け込むバッツをドアを大きく開いて迎え入れた。鍵をかける。

「運が悪かったよなぁ、お互い」

「あんた、裏切ったのか」

「俺は違う。先に手榴弾を投げてきたネロが裏切者だ。もうカートライトはやられたんだろうよ。残った連中はヤケクソ。エルボー軍はお終いさ」

「違いねえな」

 最悪の現状に対してバッツは冷淡だった。若いが、肝が据わっている。

「おまえには二つの選択肢がある。死なないために俺と組んで戦うか? それとも人生を諦めて自殺するか?」

「今は死にたくない」

 拳銃を渡されたバッツが安全装置を確認する。

「ここにこもるか?」

「外にいる間抜けと虎目石が潰しあうのを期待しながらな」

 虎目石の会との交戦を経た二人は情報交換した。ロットロンは東階段で二階にいる敵と交戦し、味方の指示で三階まで引き上げた。階段を塞ぐ家具の運搬で客室に向かった際に、味方に手榴弾を投げたネロを目撃。あとはバッツも知っての通りだ。

 聞けば、バッツは武器をすべて失うほど消耗しながらも無傷で二二号室から撤退したのだという。二階が攻撃された際、同室者が不在だったため、一人で抵抗を試みたものの、一旦籠城した。しかし、敵は二二号室に攻め入ってきた。バッツは命を捨てる覚悟で浴室から奇襲をしかけた。バッツの拳銃は映画さながらの被弾で動作不良を起こし、ナイフは折れた。それでも二人の兵隊を返り討ちにした。敵の隙を見て、二階の戦況を知らせるべく西階段を上って撤退した。

 二人は、虎目石の会の攻撃や抵抗の苛烈さについて、共通して強い印象を持っていた。特に先頭を務めるテイザーの進撃は狂気染みていた。ロットロンは、捨て身で階段を攻め上がろうとしていた兵隊達を思い出す。理性ある人間をしぶとく粘って死ねれば上出来の捨て駒に変えた熱狂はテイザーに由来するものだ。

「俺としては、テイザーにここまでたどり着いてもらいたもんだ」

 望みは薄いだろうが。

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