52話 攻撃
一階と二階を同時に攻める。二班が一階の制圧に移り、一班はフロントに接した西階段を足音を殺すように上がっていく。踊り場の前で停止した。テイザーは手榴弾の安全ピンを引き抜き、手すりの陰から二階に放った。身を屈めながら、手榴弾が壁に当たる音と敵の悲鳴を聞いた。両耳を手で覆った。テイザーもろとも巻き込むような爆発音が響いた。武器は無感情で、敵味方を隔てない。
「前進!」
テイザーの号令に呼応し、兵隊達が吠えた。
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停電の発生直後に招集がかかった。ほとんどの兵隊達が警戒に当たる中、ネロはカートライトの部屋に向かった。
二丁の突撃銃を抱いた兵隊が部屋から飛び出し、ネロと入れ違いになった。人の動きは忙しないが、混乱はない。カーテンが閉められ、薄暗くとも、次々と兵隊に指示を下すカートライトを見つけるのに迷いようもなかった。
「俺にも武器をくれ」
頼りになるのは手に馴染んだ武器だという正論じみた台詞と一緒に、後で拳銃とナイフを受け取るよう指示を受けた。確かに、ネロは訓練で拳銃しか扱っていない。
「ネロは予定通り、ここを守れ」
「襲撃か?」
「ああ」
「ホテルが爆破されるかもしれないぜ」
虎目石の会が攻めてきたのだから、まっさきに自動車爆弾が思い浮ぶ。ホテルが堅気もろとも吹き飛ばされても不思議ではない。
「わざわざ停電させたのだから、可能性は低い」
何か言うべきことがあるか考えを巡らせていた。すでに戦い主導権が敵側に移っているような不気味さを言葉にしようとした。
「冷静に対応しろ。行け」
「冷めた頭で戦争ができるかよ」
控えめな表現で興奮を吐露してしまった。




