48話 再会
テイザーは鶏肉の燻製を適当な茶でつまみながら、映像を眺めていた。自分の息子と、義理の息子だった者が映っている。
「親父に命拾ってもらったんだろうが!」
椅子に拘束されたエバンスが叫び、ガズウィスは頬を歪めて歯を覗かせた。ガズウィスはエバンスではなく、カメラとテレビ画面を通してテイザーに笑いかけた。
映像は続く。
喉を潤すと、反射的に気だるい声が漏れた。父親を思い出す。声の調子が似ていた。もし父親が存命だったら、テイザーのような人間になっていたのだろうか。若くして死んだ者を思い出す時、テイザーは老いを実感する。
意外にもエバンスは勇敢だった。錯乱状態とはいえ、一方的な暴力に晒される恐怖に抗っていた。テイザーは、知性の欠如を埋め合わせるかのように威勢を発揮する愚息を哀れんだ。危機を自覚することで威厳を取り戻す人間がいる。エバンスもその一人に数えられるようだ。
追い詰められているのは、エバンスの口を掻き混ぜるガズウィスの方だ。握り締めている鉄棒が熱せられており、皮膚と溶融して激痛を与えているのではないかとテイザーはくだらない冗談を浮かべた。それほどまでにガズウィスの表情から苦悶が垣間見えた。だが時折、嗜虐的な本質が笑みに表れる。
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ガズウィスは先々代の会長であるグロード・ゼラの孫として産まれた。それが生後すぐにハーク家に迎えられたのは、死期が迫ったグロードの願いからだった。両親は死亡していた。
当時のエバンスは六歳下の弟ができたことを喜んでいた。もっとも、赤ん坊が泣き喚き、よだれを垂らし、糞をもらしさえするという事実に我慢できなかった。更に、母親の注目がガズウィスに移ったことが面白くなかったらしい。ガズウィスに手を出すようになった。それから十年の間、愚かないじめを、偶然の反撃で前歯を折られるまで続けた。
中等学校に入学したガズウィスは、テイザーの関心が冷め切るほどに内向的になっていた。虎目石の会で働くための豪胆さも、父親への敬虔さも育たなかった。
ある日、ガズウィスがスリに失敗し、補導された。同じ学校の女子生徒を妊娠させ、堕胎のために金が必要になったのだ。しかし、すでに胎児は育ちすぎていた。醜聞を嫌ったテイザーの決定により、女子生徒と胎児は轢死という形で始末された。その頃からガズウィスは徐々に家庭から離れていった。
その後、急性薬物中毒に陥って緊急入院したガズウィスを、テイザーは見限った。事実を歪曲し、虎目石の会の市場にエルボー商会が意図的に流した劇薬でガズウィスが死んだことになった。そのようにして抗争の大義名分は掲げられた。やがて、この行為はテイザーが墓穴を掘る布石となる。エルボー軍が送ってきた映像が証明したように。
ガズウィスを物言わぬ骸にする段階で異議を唱えたのがリドだった。グロードの孫を殺すことに強く反対した。もしグロードに絶縁されていなければ、リドはガズウィスの遠縁にあたり、テイザーに代わってガズウィスを育てたのかもしれない。そういった理由がリドを突き動かしたかは定かではないが、 リドは強硬だった。テイザーはグロードへの最後の義理を果たすつもりでガズウィスを生かし、リドは会長の意に背いたがゆえに残っていた右耳を自ら進んで切り落とした。
ガズウィス・ハークは社会的に死亡し、ハーク家から切り離された。どういった経緯を辿ってエルボー軍と共にいるのか、テイザーにとってはどうでもいいことだった。自分の爪先が破滅の淵に向いているのだと知る要因の一つにすぎなかった。




