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敗者達とネロ  作者:
3章 夜
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14話 若気の至り

 運転席のギミィがリドに尋ねた。

「あれ、バッツの仲間ですか?」

「もう仲間じゃないかもな」

 後部席に座っているリドからも確認できた。歩道を十代半ばの少年が四人、横に連なって歩いている。リドは彼らの表情を注視したが、近眼なのでほとんどわからなかった。ただ、背筋をたるませて顔を突き出して黙々と歩く姿は陰気に見える。

「一触即発の状態らしいですね」

「警察が睨みを利かせてるはずだ」

 バッツという若者が顔役を務める不良集団は現在、二つの派閥に分裂しており、険悪な状態が続いていた。三十名ほどの反社会的な若者で構成されているそうだが、実際の人数はリドも知らない。彼らは共通して頭が悪く、貧しく、信用できない。虎目石の会にとっては、利用価値の低い烏合の衆だ。

 ネロが通り魔的に暴行した被害者の内、二人がバッツの集団に所属する少年だった。だが、被害者の仲間が安易に通り魔が敵対派閥の仕業であると決め付けたがために、派閥間での緊張が高まった。リドから見れば、部下が図らずとも火に油を注いでしまったといわざるを得ない状況だった。

 暴発しかねない不良少年を目障りに思ったリドは、仕方なくジャルを通じて警察に忠告した。今、バッツ達は数十人規模の抗争を起こしかなねないほど緊張した状態にある。虎目石と商会の戦争の時と同じように警察の威厳に傷をつけたくなければ、何としても抗争を防ぐべきだ。

 ジャルは、自分は担当ではないと前置きしたが、抜かりはないとリドに伝えた。

 リドはとりあえずネロの尻拭いを終えた気になった。公になると面倒なので、ネロに落とし前をつけさせるつもりはない。完膚なきまでに叩きのめしたので、個人的にはもう満足していた。

「医者に診てもらった方がいいのでは?」

 煙草に触れる際、常に左手を使っていたからだろう。ギミィはリドが右手を痛めたことを知っていた。

「こんなものは勝手に治る。とはいえ、それも若い頃の話か」

 リドは四十歳になった辺りで心身の変化をまた一段と自覚するようになった。どれだけ休んでも壮快ということはない。精神的に老成したとは思わないが、気を荒げるような些事も少なくなった。神経が擦り切れるよう体験をしたエルボー商会との抗争が、現在と断絶された過去であるかのように感じる。

 だが、矜持を賭した重大な選択もした。そして、ネロという責任を負うようになった。

「ギミィはネロをどう思う。あれは若気の至りか」

「いいえ、ネロは死ぬまで患います」

「なんだ、それは」

 ギミィとは話が通じなくなることがある。そういう時は独り言を聞かされている気分になり、少し不愉快だ。

「彼は絶望してます。それが許せなくて暴力を振るうんです」

「なんの話をしてる」

「一度死んで新たに生き直さない限り、ネロは破滅を手繰り寄せ続ける。そういう話です」

 リドは、よく理解できないなりにギミィの予言に共感した。リドも、ネロが発する破滅の臭いを嗅ぎ取っていた。だからこそ、喧嘩の補償をさせ、間接的にたしなめたはずだったが、次の暴走に繋がってしまった。確かにネロは破滅を手繰り寄せ続ける。それは、周囲の人間にも火の粉を振りまく。

 リドは、ネロにどう接すれば良いのかがわからない。部下としての自律と成果を求めるだけでは何も変わらないのだろう。だが、それら二つ以外にリドがネロに望むことはない。

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