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小さな悪魔と小さな天使

作者: REN

かつてこの地には、天極と地極があった。

天極は地極の上にあり光に満ち神々と天使が住んでいた。

地極は天極の下にあり闇に覆われ悪魔と魔物が棲んでいた。

ある時、突如として天界は崩れ去り全てのモノが地極へと降り注ぎ地極は壊滅した。

これは、天極が失われ地極が崩壊した混沌としたセカイの話。


『光差す庭』そこは天極の名残のような場所。

天極が失われた今なお、暗雲立ちこめるこの地において、数少ない光が差す場所、そんな場所をこの地に棲むモノ達は光差す庭と呼んだ。

そこに今、小さな悪魔が来ていた。

かつての古い悪魔は天の光を忌み嫌い、光の元に出る事すら叶わない存在だったが、天極が失われ地極も崩壊した後に生まれた今の悪魔達は天の光を畏れる事はなかった。

小さな悪魔は、光差す庭に足を踏み入れ様子を伺うように、ある一点を見つめながらゆっくりと足を進めていた。

小さな悪魔が見つめるその先には、やはり小さなヒトの様な影があった。

それは、天極が失われてからは久しく姿を見る事がなくなった天使だった。

小さな天使は、ただぼんやりとその場に座り込んでいた。

何をするでもなく見るでもなく、その場にあるだけだった。

小さな悪魔は物陰に隠れながら、少しずつ息を潜めながら小さな天使の背後へと近づき…

わっ!!!!!!!

と勢い良く立ち上がり脅かしてみせた。

…だが、小さな天使はそれには一切反応せず、最初のときと同じように、そこにあるだけだった。

小さな悪魔は脅かしてみたものの何の反応も返さないちいさな天使に困惑しつつ前に回り込み身振り手振りで天使の様子を伺うが、やはり何の反応も返ってはこなかった。

目は虚ろで、身体には力殆ど入っておらず、へたり込むかの様に地面に座り込んでいるだけだった。

ただ、微かに息をして手を引けば立ち上がりすらするので、まるで生気がない訳ではないようだった。

困った小さな悪魔は、小さな天使を手近な岩に座らせみた。

声をかけ、名を問うても、やはり何の返答もなく、仕方なく小さな天使の横に自分も座り同じようにぼんやりと空を眺めてみた。

暫くそのままでいると、ぱらぱらと音がしたと思った瞬間、雨が降り出した。

それに慌てふためいたのは小さな悪魔だった。

光差す庭で振る雨は、天気雨なのだが、悪魔にとってそれは身を灼く聖水なのだ。

いくら天の光に耐性がある悪魔であっても、それは同じで灼かれこそしないが、酷い痛みを伴うものだった。

慌てて光差す庭からでた小さな悪魔は雨水を振り払いやっと一心地がついて、ふと振り返ると小さな天使は雨の中変わる事なく同じ場所に座り続けている事に気付いた。

遠くに見える、小さな天使のそんな姿を目にした、小さな悪魔は突如、暗い森の中、生い茂った薮をかき分け何かを探し駆けて行くのだった。


暫くすると、大きな葉を広げた、まるで傘のような植物を手に小さな悪魔は、小さな天使の元へと向かっていた。

雨に濡れぬよう葉を差し出し、そのまま雨のなか二人でたたずんでいた。

どれほど、そうしていただろう、雨音が遠のき、再び静けさが光差す庭に戻って来た。

小さな悪魔が空をみると、陽が傾きはじめてそらの色が少しずつ赤く変わり始めていた。

そのまま、見あげていると光の中に見た事もない七色の弧を描く筋が現れた。

初めてみるその光景に小さな悪魔は立ち上がり驚きの声を漏らした。

「あれは、虹と言うのよ」

食い入るように見つめていた小さな悪魔に突如としてかけられた声。

驚き、その声の主を顧みると、先ほどまで虚ろでまったく反応のなかった小さな天使がしっかりと小さな悪魔を見つめていた。

言葉なく立ち尽くし見つめていると、小さな天使はそれは奇麗な微笑みを返してきたのだった。

小さな悪魔が声を返そうとしたその時、ふっと周りが暗くなりそれに合わせた様に小さな天使の身体はさらりと崩れさってしまったのだ。

何が起きたのか、わからず立ち尽くすし、小さな天使がいた場所には白い塵だけになっていた。


その日初めて小さな悪魔は涙を流し泣いた。


小さな天使の微笑みは奇跡。

小さな悪魔の涙もまた奇跡。





少しでも、楽しんで頂けたらな幸いです。

もし、おかしな所などありましたら知らせて頂けるとありがたいです。

あ、「天極」「地極」表記は間違いじゃないですわざとです(笑)宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 発想が面白いのと、わざと言い方をかえているのがいいですね。独自性を出そうと頑張っている証拠です。あと悲しい、温かい、どれに含まれてもいいような余韻がすてきでした。
2012/10/20 21:44 退会済み
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