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現実と夢の間  作者: 山水
2/2

沙織サイド

「美味しいですねー。」



後輩の安祐美は箸を止めずにそう言った。


結局絢は帰ってしまい、2人で食べる事になったのだ。




「さっきの方は、昔からのお友達なんですか?」



「うん。高校からなんだけど、私の一番の親友なの。」



「いいなー、そういう人。」



そう、絢は親友。

大好きな親友。


それを保たなければならない。


私がそれ以上に好きなんて知られてはいけない。




だけど、私本当にいつ合鍵渡したんだろう。

前一緒に飲んだ時かな。

いつも絢と飲むと記憶がとぶのよね。




「女子高だったら相当もててますね。」



「安祐美は確か女子高だっけ。」



「はい。沙織さん、今度紹介してください。」



「え?な、なんで?」



この流れからして、普通に友達紹介の感じがせず、少し動揺してしまった。




「だってタイプなんですもん。」



「た、タイプって言っても、絢は女よ?」



「わかってますよ?」



さらりと返す安祐美。


しかし、私の動揺を見て悪戯っぽく頬をあげた。



「じゃあ、沙織さんが飽きたら私に譲ってください。」



「絢は物じゃないのよ?」



「沙織さん、好きなんですねーその人のこと。」



クスクスと笑いだす安祐美。

冗談なのか、本気なのか分からなかった。










「え?沙織?」



「遅い。」



相当驚いたのか、絢はあたふたして今にも手に持っているスーパーの袋を落としそうだった。



「連絡くれれば、早く帰ってきたのに。」



「驚かそうと思ったのよ。」



「十分驚いた。」



がちゃっとドアをあけ、中に入れてくれた。


相変わらず物が少ない絢の部屋。

でもどこかほっとしてしまう?


まだ恋人がいないのだと思えるから。




「冷えたでしょ?今珈琲いれるよ。」



「ありがとう。」



キッチンに立つ絢を見つめた。

背が高くて細身の彼女は、後ろから見ても中性的で。



思わず胸がくるしくなる。



「ねぇ、最近忙しかったの?」



「んー、ちょっとね。」



「一ヶ月も連絡なしなの、初めてなんだけど。」



少し拗ねた声になってしまう。

そう、ここに来たのはそれが理由だった。



あの料理を作りに来た日から絢の連絡が途切れたのだ。



いつもなら週に一回は2人で飲んだりするのに。




「ごめんごめん。」



子供の駄々をあやすように謝る絢。


いつも絢はそうだ。



「ほら、出来たよ。」



差し出された珈琲は、苦いのが苦手な私の為のカフェオレ。

いつも絢は私の好みに合わしてくれる。



「ねえ、絢は相変わらず付き合ってる人いないの?」



「いないよ。けど、告白はされたかな・・。」



「ええ!?」



「なんだよ、沙織ほどじゃないけど、私だってされる時はあるよ。」




実際そういう話をされるは初めてだった。

私がすることはあっても。



「で、どうしたの?それ。」



「前向きに考えるって事で保留中。」



がつんと鈍器で頭を殴られた衝撃だった。

絢が誰かと付き合う。

知らない相手と手を繋ぎ、キスし、抱かれる。



狂いそうなくらいの嫉妬心が湧き上がった。



「その人の事・・・好きなの?」



「・・・・・。」



「私よりも好き?」



「沙織?」




カップを置いた絢の手を握り、テーブル越しに唇を重ねた。

目を見開く絢。




「好きじゃないなら、私にして。」



「ほ、本気で言ってる?てか、沙織、酔ってるの?」



「酔っていうわけないでしょ。」




なんでそこで酔ってるって聞くのよ。

もう勢いにまかせて言いたい事、言っておこう。



「私、絢のこと好きなの。」



「・・・やっぱり、酔ってる?」



「もう!はぐらかさないでよ!」



「だ、だって、素面の時に告白されるの初めてだから・・。」



素面の時に?


首を傾げると、絢は頬を赤くしながら目を逸らした。



「私・・酔った時に何か言ってた?」



「さっきみたいな・・事をね。」



「私の気持ち、知ってたの?」




すると絢は顔を真っ赤にして首をふった。

なんだか、その姿はとても可愛らしい。




「だって沙織、翌日には毎回覚えてないし!あんなにキスして好きだって迫ってこられても、覚えてないなら意味ないじゃん。合鍵も覚えてなかったし。」




キス・・してたんだ

迫ってたんだ



普段抑えていたものが、一気に発散されてたんだろうな



もったいない


覚えておきたかった




「私も好きだったから・・凄く、傷付いたんだよ・・?」



知らなかった

もうとっくに両想いだったなんて。


そんなに傷付けていたなんて。




「ごめんなさい。」



「本当に、酔ってない?」



「一滴も飲んでません。」



「じゃあ・・・もう我慢しなくていいんだね?」



「え?」



後ろにまわりこんで来た絢に抱きしめられた。

そして耳元で囁かれると、ゾクゾクと全身に走る。



「やっと、沙織を抱ける。」



その言葉だけで下半身がきゅんとしまった。



「愛してる、沙織。」



「私も・・愛してる・・。」




今度こそ現実になる。

夢じゃなくなる。



目が覚めても、私を好きな彼女でいてくれる。



「ねえ、沙織・・。」



「なに?」



「本当に酔ってない?」



「朝まで・・確かめる?」



「そうだね。そうしよう。」



酔ってるときはとてもふわふわして気持ちよかった。

絢と飲む時だけ得られる感覚。


それは絢がいてくれてたからなんだね。




「目が覚めて、絢がいた時、夢かと思うぐらい幸せだった・・。」



「これからは、ずっとそうだよ。」



「うん。」



やっと重なった2人の夢。

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